未明に行われた(らしい)ロンドン五輪の開会式をテレビ局の録画映像でぼんやり眺めていた。
ところどころ端折られているところもあったりするのだろうが、それでも、エンターテイメントの要を押さえた、飽きの来ない数々の演出にはなかなか感じ入るところが多く、最近の五輪の開会式の中では一、二を争う出来栄えだったのではないかと思う。
ジェームズ・ボンドと女王陛下を絡ませてみたり、Mr.ビーンに炎のランナーのパロディをやらせてみたり、ベッカムにテムズ川の上を走らせてみたり・・・と、会場内だけでなく、全世界のメディアも意識した映像とのコラボレーションもさすが、といったところ。
世界的には無名の若手選手達に最後の聖火を任せた、といったあたりも含め、新興国にありがちな“無駄な格式”とも、肩に力の入った“国威発揚”とも無縁。
比較的シンプルながら、押さえるべきところは押さえ、魅せるべきところでしっかり魅せる。
そして、最後にポール・マッカートニーと一緒に懐かしい流行歌を歌わせて、“大英帝国”が生み出した文化の素晴らしさをさりげなく全世界にアピールする・・・
全体を通じてゆとりすら感じさせる演出は、実に見事な余韻を残してくれた。
政治面でも、経済面でも、イギリスが世界の主役の場から遠ざかって久しい。
長い歴史こそあれ、年々世界の中での存在感を失っていったこの国は、未だに国内でも数々の不安の種を抱えている。
それでも・・・。
いざ、文化・芸術に目を移せば、世界を唸らせるこの実力。
翻って自分達の国に目を向けた時、目先の数字の勝った負けたに囚われて、つまらない嘆き節をつぶやくより、国として目指すべきことが、もっとたくさんあるんじゃないか・・・
今はそんな気がしている。