今こそ先入観を捨てる時。

金曜日の深夜から土曜日の夜にかけて、相次いで女子/男子の準々決勝が行われた五輪のサッカー。

いずれも、日本代表がスコア的には快勝し、念願のメダルに向けて大きなチャンスを手繰り寄せたのだが、内容的には、かなり対照的だったように思う。

前評判の高かった“なでしこ”のブラジル戦は、スコアこそ2‐0だったが、試合展開としてはブラジルのFW陣にかなり攻め込まれて冷や冷やさせられるところが多かったし、得点も、永里選手*1の日本人離れした得点感覚と、大野選手の個人技、そして、球際でパッとしないブラジルDF陣の脆さに助けられてのもの。意図的な“2位抜け”をしてまで万全な体制で臨んだはずの試合にしては、明らかに物足りなさが残った。

去年のW杯の時も、決して強い勝ち方ばかりではなかった、とはいえ、今大会ではこれまでのようなパスコンビネーションからの美しい攻めが影を潜め、攻撃のオプションも減ってしまっているような気がしてならない。

もちろん、試合運びの巧さ*2は、これまでの対戦相手と比べると際立っているのが、我らが“なでしこ”だし、今のところ澤選手の不調(というか衰え?)も、致命的なダメージをチームに与えるには至っていないから、メダルを絶望視するのはまだ早いだろうが、次の準決勝のフランスは、大会直前のテストマッチでこっぴどくやられた相手だし、仮にそこで勝ちを拾えたとしても、決勝でアメリカと当たって勝てる気は全くしない*3

一方、準々決勝の圧勝で、44年ぶりのメダルどころか、金メダルさえ夢ではない、と思わせてくれたのが、男子U-23代表。

予選リーグから一貫して堅実な守備を見せ続け、未だ奪われたゴールは0。
しかも、攻撃は、世界を唸らせる永井選手の快足+セットプレーが、チーム練習の成果を誇示するかのように、とにかくハマり続けている。

吉田麻也鈴木大輔のCBの両選手やボランチの山口選手などの安定感ゆえ、少々相手にボールを持たれても安心して試合を見ていられるし、ひとたび清武選手や扇原選手にボールが渡った時のワクワク感は、もうたまらない。

目の肥えたイギリスのファンもそれが分かっているから、現地にいる日本人サポーターを更に数倍サポートするような大きな声援を、我らがU-23代表に送ってくれる。

そして、“なでしこ”とは対象的に、次の相手・メキシコは、大会前のテストマッチで一度下している相手だし*4、今残っている中で優勝に一番近そうなブラジルも、ホンジュラスとの試合でかなり労力を使わされるなど、決して盤石ではなさそうである*5

そう考えると、そろそろ応援する側も、「女子代表=当然、このまま勝ち上がって優勝!」、「男子U-23代表=まだ残ってるの?なら頑張れ」的な扱いをやめて、男子U-23代表チームに、より積極的なエールを送るべきだと思うのだが・・・。

一夜明けて、メディアでの報道等を見ても、状況はそんなに変わっていないし、相変わらず“なでしこ”への過剰期待ばかりが目立つ状況になっているように感じられる。

分かりやすい結果を出すまでは、過去の実績がモノを言うのがメディアでの五輪報道の常だけに、そう簡単にはいかないのかもしれないけれど、五輪が終われば消えてなくなってしまうチームなのだから、できればこれまでの先入観を捨てて、U-23にもきちんとした評価をしてあげて欲しいなぁ・・・というのが、一観戦者としての率直な思いである。

できれば、五輪自体が大詰めを迎えるその時まで、嬉しい寝不足が続いていてくれたら・・・と思うところ大なのであるが、果たしてどうなるか。男女、特に進境著しいU-23には、悪しき先入観を吹き飛ばしてくれるような、“ビッグ・サプライズ”を期待しつつ、もう少し、嬉しい寝不足を体感してみることにしたい。

*1:一応、「大儀見」で登録しているようだが、解説者は何度となく呼び間違えてるし、この日の試合後には、澤選手もインタビューで「永里」と連呼してたから、もういい加減、戸籍姓使わなくてもいいんじゃないかと(笑)。

*2:これを「日本代表」チームの利点として指摘できるようになった、ということ自体、非常に感慨深いのだけれど・・・。

*3:仮に準決勝で負けた場合、対戦が予想されるのはカナダだが、予選リーグで一矢報いられた展開に加え、グループ3位抜けからベスト4まで残ったカナダの強運さを考えると、そこでも予断を許さない展開になる可能性が高い。

*4:もちろん、あくまで調整のための試合で、日本チーム以上にメキシコU-23の方が控えめなメンバーで試合に臨んでいたようだから、テストマッチほど簡単にはいかないだろうけど。

*5:3位決定戦に回ってしまうと、相手が韓国だけに、あまり強気にはなれないが・・・。

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