それでも勝ったなでしこと、切なく散ったサムライのコントラスト。

2日連続で日本時間深夜、テレビ画面の向こう側で熱い火花を散らしていた男女サッカーの準決勝。

同じ国のチームとは思えないくらい、女子代表と男子U-23代表は対照的な試合をしたが、90分戦って示された結果も、実に対照的なもの、それも試合内容とは反比例する残酷なコントラストを描きだすものになってしまった。

結果を出したのは、大会前から評判が高かった女子代表の方で、フランスを2‐1で下した、という結果だけを見れば、前評判通り、順当に勝ち上がったように見えなくもない。

だが、準決勝の試合は、中身としては最悪に近い代物。

特に、後半が始まり、勝負をかけて早々に2選手を交代させたのを合図として、次々とゴール前に襲いかかったフランスチームの攻撃は、これまで辛うじてこの試合のバランスを保っていた日本のDF陣を完全に無力なものにしてしまっていた。

右サイドから攻め上がるトミス選手が、ドリブルと正確なクロスで、日本が誇る左サイド、鮫島選手を翻弄したかと思えば、ドゥリ、ネシブ、交替出場のルソメルといった選手たちが、ゴール前に次々と出没して、ゴールを脅かす。

いつもながらの試合運びの巧さゆえ、早々に2点を先行できたから良かったようなものの、2点目を入れてから1点を返されるまでの流れ、そして、その直後、PKを取られたあたりまでの展開は、正直、2‐3の大逆転負け、という結果を予想させるに十分だった。

一方の男子の方は、準決勝のメキシコ戦出だしは良かった。中南米のお株を奪うようなパスコンビネーションから、東→大津のラインで、目の覚めるようなスーパーゴール。

セットプレーから1点返されたものの、自慢の守備が崩されてのものではなかったし、清武選手からの発想豊かな展開等を見ていたら、勝ち越して得意パターンに持ち込むのも時間の問題だろう、と思えた。

それなのに・・・。

後半20分、魔が差した、としか思えないようなGK&DFの些細なミスからあっけなく失点。
その後は、選手交代のたびに、チームのバランスが悪くなり、最後はバタバタの状態で終了の笛を聞くことになってしまった。

速いパス回しでボールをキープして、相手に攻め口を与えず、中盤で奪われても最終ラインの手堅い守備で跳ね返す。さらに、ひとたび先制した後は、清武選手の正確なパスと永井選手の走力、そして前線の選手の巧みなキープ力を生かして、じわじわと相手を追い詰めていく・・・。

今大会、終始一貫して機能し続けてきた美しい戦術は、この日も65分間は健在だったし、先発メンバー同士で比較した時の力量も遜色なかったのに、些細なほころびから崩れ、残されたのは1‐3、という残酷な結果のみ。

おそらく、この2試合の結果だけ見た人は、

「やっぱり、なでしこは強くて、男子は肝心なところで弱かった。」

というありきたりな感想しか抱かないのだろうけど、準決勝の試合だけを見ても、グループリーグからの戦いぶりを見ても、本当に決勝に行くにふさわしかったのは、むしろ男子U-23代表の方だったのではなかろうか。


運気の流れ・・・というのは皮肉なもので、女子代表の方は、決勝戦での対戦相手・アメリカが、カナダ相手に延長戦含めた120分+α、まさかの消耗戦を強いられた状況で勝ち上がってきた、という有利な状況。

一方、男子U-23の方は、建国以来の黄金世代と称され、かつ過去の下の世代での対戦を見ても極めて相性の悪い韓国とメダルを賭けて争わなければならない。

ゆえに、最終的な結果も、対照的なものになる可能性が大なのだけれど、眠気に耐えて、U-23の雄姿に声援を送り続けた者としては、成長途上の選手たちが、「結果」以上に素晴らしい戦いをイギリスの地で見せていたことを、語り継がねばならないだろうと思っている。

女子代表の方は・・・まぁ、結果だけで十分だろうけど。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html