メダルを賭けて隣国と戦ったことの意味。

11日の早朝から、夕方にかけて、人気球技の3位決定戦が相次いで行われた。

一つは男子サッカー。そして、もうひとつは、女子バレーボール。

いずれの競技も、自分が五輪開幕前に密かなサプライズを期待していた種目で、それゆえ、ギリギリのところでメダルを取れる可能性があるところまで辿りついたことが、何よりも嬉しかったのだけど、皮肉なことにいずれの試合も、対戦相手は、今決して好ましい関係にあるとは言えない隣国・大韓民国

そして、現地で日を跨いで行われたこの2つの試合は、実に対照的に、大きく明暗を分けるものになってしまった。

当然のことながら、2つの競技の中での日本が置かれていたポジションも、相手との力関係も、大きく異なっているがゆえに、単純に結果だけでああだこうだいうべき話ではないと思うのだけど、いずれ時間の経過とともに、安直なメディアによって、結果だけが独り歩きしてしまうことも大いに予想される状況だけに、記憶が生々しいうちに、一応、思うところを書き残しておくことにしたい。

サッカーの敗戦は「屈辱」だったのか?

言わずもがなの「暗」の結果となってしまったのは、サッカーのU-23日本代表。

前の日の“なでしこ”に続く未明の時間帯でのキックオフで、何とか眠い目をこすりながらテレビの前にかじりついたのに、試合終盤には淡白さすら感じさせる完敗で、「何だこの野郎!」と思った人も多いことだろうと思う(自分も、正直観終わった直後は腹立たしさを押さえられなかった)。しかも、試合後に「竹島パフォーマンス」まで食らったとあってはなおさら・・・。

だが、改めて考え直すまでもなく、これまでの育成世代におけるチームの実績で比較しても、個々の選手のこれまでのキャリアで比較しても、日本に勝機があったのか、かなり疑問だった*1のが今回の3位決定戦なわけで、そんな中、前半からいつもながらの手堅い守備を見せ、圧倒的なボール支配率で、ゲームをコントロールしようと奮闘していた我らがU-23を、無下に責めるのは気の毒な気がしてならない。

確かに、あわや、の見せ場を作った次の瞬間に、ロングボール1本から痛恨の失点を喫した前後半の2つのシーンでは、経験の差が如実に出てしまった感があったし、扇原選手、永井選手といった今大会最大の功労者たちの動きも、この日はどこかしら鈍く見えたが*2、吉田、徳永のOA組を中心とした守備は、変わらず貫禄十分。清武選手の技巧は、何度となくチャンスを演出したし、前線で孤軍奮闘した大津選手の動きには、経験豊富な韓国DF陣ですらもはや止められない次元に達してしまった、と思えるような凄味があった*3

44年前にメキシコで銅メダルを取っている、とはいえ、“アマチュア”しか出られなかった当時の五輪と、今の五輪では、競技としてのレベルも世界の中の日本のポジションも、そして五輪という大会そのものの位置付けも根本的に異なる*4

W杯で既にベスト4を経験している韓国(そして、地元での3位決定戦で苦杯を喫した)に比べると、代表チーム全体としての“国際経験”が大いに不足している日本が、今回ベスト4まで勝ち進んだことそれ自体に大きな意味があるのであって、3位決定戦での敗戦も、代表が次のステージに到達するための一ステップだと思えば、そんなに悪い話じゃない(ましてや、今、アジアで先行する韓国相手に好勝負ができたとなればなおさら・・・)。

かつては予選を突破することすらままらず、五輪本番に出られるようになっても、ここ2大会ほどは、大会のハイライトシーンに入れてもらえないような状況が続いていたU-23が、メダルにあと一歩のところまで近づいた、そのこと自体を再評価してあげないと、選手たちがかわいそうだ。

日本との間に決定的な力の差があるようには思えなかったメキシコU-23が、世代最強メンバーを揃えたブラジルU-23を倒して金メダルに輝いたことからも分かるように、今回の五輪は、2010W杯に続いて、世界との差が戦い方一つで追いつけるくらいのところにまで来ていることを証明する場となった。

あくまで特定の年代で構成される、という男子五輪代表の性格上、4年後にバトンを受け継ぐ・・・という、“なでしこ”のような洒落た真似はできないのだけれど、この競技が、今目指すべき最高の目標は、あくまで2年後のブラジルでの戦い*5

それゆえ、今は屈辱に天を仰ぐよりも、お隣の国とのコセコセとした戦いの結末など忘れさせてくれるような素晴らしい結果を2年後に期待する方が、遥かに前向きだろうと思うのである。

28年ぶりのメダルと世界との距離。

一方、ロサンゼルス五輪以来の銅メダルを獲得したのが、女子全日本バレーボールチーム。

自分が子供の頃は、まだ日立の黄金時代も続いていて、五輪に出たらメダルを取るのが当たり前、的な風潮が強かったとはいえ、旧共産圏が軒並みボイコットした(つまりはソ連東ドイツもいなかった)ロサンゼルスですら、銅メダルを確保するのがやっと。その後は、大会ごとに成績を落とし、一時は本戦出場まで逃すところまで落ち込んでいた事を考えると、今回のメダルには非常に大きな価値がある。

“サクラ”に近いような大応援団をバックに付けた国内での大会とは違う環境で、中国戦、韓国戦と、二度の大一番を制した、ということもある種、画期的なことだったといえるだろう*6

ただ、対戦相手、ということでいえば、メダルマッチの相手が、お世辞にも強豪とは言えないお隣の国だった、というのは、極めてラッキーだった、という見方もできるところ。

最終予選でこそ、まさかの敗北を喫したものの、あの時は大友愛選手という真ん中の大きな飛び道具を欠いた状態で戦っていたわけで、飛車角が揃った本戦になれば、地力の差は歴然*7

実際の対戦でも、相手に経験に裏打ちされた嫌らしさがない分、ブラジルやイタリアとやるのとは大違いで、上背はさほどない迫田選手のスパイクが大爆発、要所、要所で木村沙織選手が綺麗にポイントを決める、という理想的な試合運びでストレート勝ちすることができた*8

逆にいえば、イタリア、ロシアといった上位チーム相手に1セット奪うのがやっとだったグループリーグでの試合ぶりや、ブラジル戦でのあっけない敗戦*9を冷静に見れば、他の国が勝ち上がってきていたらメダルに手が届いたのか、ということに、大いに疑問を感じたのも事実。

反対の側のプールで韓国が暴れてくれたおかげで、本来2位に入って、トーナメント初戦でプールBの3位(日本の定位置)と戦うはずだったブラジルとの対戦が準決勝まで延びた、というのも幸運の一つといえば一つだし、その意味では、韓国サマサマの銅メダル、まだまだ世界の「3番目」を名乗るには早い、という見方もできるところだろう。

サッカーのU-23とは違って、五輪をまたいでの継続的なチーム作りができるのがバレーボールの良さとはいえ、全日本復活の歴史を支えてきたセッター竹下やセンター大友、リベロ佐野といった名選手たちが、そろそろ世代交代期に差し掛かり、不動のエース、木村沙織選手も今大会でピークアウトしても不思議ではない、という状況の中で、ここから先、世界との距離をどう縮めていくのか・・・。

ついでにいえば、今回の五輪で韓国の女子バレーチームが置かれた状況は、まさにサッカーのU-23日本代表が置かれたのと同じ状況だから、日本が「世界との距離」を縮めるのに手間取っている間に、アジアでの勢力図が変わってしまう、というリスクもある。

勝ってもなお強くあり続けよ、というのは、「負けて強くなれ」というよりも難しいことなのかもしれないけれど、メダルを賭けて戦った経験が、4年後、仇となって返ってくるようにするために、真鍋JAPANのさらなる進化を願うのみである。


・・・ということで、勝っても負けても、まだまだ先があり、歴史は続く・・・のだけれど、個人的には、こういう国際大会の大事なところで韓国と当たるような組み合わせは、応援する側にとってストレスだし、それをまともに受ける選手にとっても気の毒なので、ないにこしたことはないと思うところ。

スポーツと政治は別、といったところで、いずれもそれぞれの国の歴史と文化に根差すものである以上、両者を切り離すのは不可能なわけで、選手の側も、応援する側も、この2つを別々の頭で考える、というのはちょっと難しい*10

4年後に、政治的な諸々の問題も、ちょっとは前向きに片付いてれば、もう少し気持ち良く試合の結果だけを楽しめるのだろうけど、そうもいかないのが、「隣国」の重さ、というべきで、自分の生きている間は、ずっとこういった“怨恨”対決は続くんだろうなぁ、と思うと、ちょっとげんなりする。

*1:韓国U-23は言わずもがな、の黄金世代で、U-17、U-20世代のアジアでの対戦でも、常に日本を凌駕してきた存在。日本U-23のここ1,2年での伸びしろを考えても、難しい力関係ではあったと思う。

*2:後半途中から入った山村選手の調子がそんなに悪くなかっただけに、扇原選手に代えて最初から起用しても良かったんじゃないかと思う。扇原選手は、疲労に加え、前の試合のミスパスのショックをどこかしらか引きずっていたようにも見えたので。

*3:終盤の決定的場面でのキーパーチャージに象徴されるように、最後は熱くなりすぎて、かえってゴールへの距離を遠ざけてしまったが、その辺は経験を積めれば・・・ということで、今後に期待。今大会の活躍を見れば、そのうち、ビッグクラブへの移籍話も出てくることだろう。

*4:比較するなら、プロ化されて以降の実績で見ないとフェアではない。そして、その観点でみれば、今回の五輪で日本U-23が残した成績は、間違いなく最高成績である。

*5:2年後も4年後もブラジル、っていうのが、面白いところではあるけど・・・。

*6:今回、中継を見ていて、静かに進んでいくバレーを、熱くなって応援するというのも良いなぁ、と思った。テレビの向こうばっかりが盛り上がっていると、かえって醒めてしまう。

*7:かつては韓国にすら勝てなかった時代、というのが確かにあったが、ここ数年は圧倒的に相性の良い相手になっていたはずである。

*8:もちろん、名立たる強豪国(予選リーグでセルビアに3-1、ブラジルにストレート勝ち、トーナメント初戦ではなんとイタリアまで倒してしまった)を葬り去ってきた韓国の勢いは本物で、キム・ヨンギョン選手を中心に、勢いに乗って何度か連続ポイントを奪われるなど、危ない場面は何度かあった。それでも要所でミスが出たり、木村選手にクリーンに決められたりして勢いをそがれたあたりに、“若さ”を露呈させていたとは思うが・・・。

*9:結果的に金メダルを取ったチームだけに、やむを得ない敗戦というべきだったのかもしれないが。

*10:切り離すのが常識的で簡単なことだったら、IOCもあえて「禁止事項」に列挙したりはしない。不可避的に両者が結び付くからこそ、意図的に排除されている、と考えるべきだろう。