これが次元を超えた強さ。

先日のエントリーで触れた松井投手はじめ、今年の甲子園にはいろいろと“怪物”がいるらしい・・・と聞いて、もしかしたら凄い試合になるかも・・・と、本能的に録画した全国高校野球勝戦

こういう期待は、概して裏切られるものだが、どっこい。
今年に関しては、大当たりだった。

まずは、「3年間で一番いいピッチング」をこの大舞台でしてのけた藤浪晋太郎投手の快投。

体格のいい高校球児の中でも一際目立つ、2メートル近い長身から、本家ダルビッシュばりの七色の変化球が繰り出され、しかもたまに投げるストレートは、軽々と150キロ/hに達してしまうのだから、いかに強打の光星学院打線といえど、バットに当てることすら難しい。

結果、積み重なる三振と凡打の山。

ドラフトで高校生野手の目玉になりそうな今大会屈指の捕手、3番・田村選手や、清原和博のホームラン記録にあと1本、と迫っていた4番・北條選手といった、今大会で好投手を軒並み打ちまくってきた光星学院の上位打線(1番・天久選手から5番・大杉選手まで)を僅かヒット1本に抑え、9三振(この日は全部で14奪三振)を奪ったこの日のピッチングが「一番」でなかったら、何が一番なんだ、って、テレビの前の誰もが突っ込んだことだろう。

強豪チームで大事に使われてきた*1、ということもあるが、これまで“ダルビッシュ”の名ほどは凄味のある結果を残していなかった投手が*2、準決勝の明徳義塾戦に続いて決勝でも被安打2の完封・・・。
誰もができることではない、「高校生活のクライマックスにピークを持って来る」という難題を見事に成し遂げたあたりに、このピッチャーの底知れぬ能力を感じる。

そして、大阪桐蔭は打線の方も、インパクト十分の結果を残した。

序盤からバットをガンガン振っていき、しかも、“安牌”だったはずの7番バッター(白水選手)が豪快な先制ホームランを打つ。

最後は相手の内野守備の“硬さ”に助けられた部分はあったとしても*3、毎回のように塁上をランナーで賑わせ、打って良し、選球眼良し、そしてバントをさせれば皆独特の構えから嫌らしいゴロを転がしてくる・・・と、このチームの打線のレベルは、並の高校生を大きく凌駕していた。

奪った得点は3点、とはいえ、藤浪投手に完膚なきまでに封じ込まれた相手打線との比較でいえば、“コールドゲーム”になっても不思議ではない展開だったように思えてならない。

相手監督も脱帽した「完成度の高さ」。

激戦区・大阪では、メンバーが入れ替わった後に代表の座を守り続けること自体が、かなり厳しいミッションになるから、来年また甲子園に戻って来られる保証は全くないのだけれど、少なくともこの試合を見る限りでは、永遠に栄華が続きそうな雰囲気すら感じた。

もちろん光星学院も、変化球をコーナーに散らし、7四死球で見る者をハラハラさせながらも、要所要所で大阪桐蔭打線の攻撃をしのぎ切った(しかも三振も2回の三者連続を含む6つ)、金沢投手‐田村捕手のバッテリーの「迫力」というか「気合」は見事なものがあったし、それまで打撃ではほとんどいいところがなかった田村捕手が最終回に打ったヒットにも執念を感じた。

大阪桐蔭春夏連覇が偉業であることに疑いの余地はないが、年をまたいでの光星学院の「3期連続決勝進出」というのも、なかなかできることではない。

昨年の0‐11の決勝戦から3度目の挑戦で、点差を大きく縮めた今大会決勝でのパフォーマンスには、見る者を熱くさせる何かがあった。

こうなると、チームの完成度を高め、「3度目の正直」とばかりに臨んだ決勝戦で、時代を超越した優勝候補大本命とあたってしまったのが*4光星学院の最大の不運だった、と言わざるを得ないのかもしれない。そして、この辺りに、優勝旗に白河の関を(新幹線でw)越えさせようとしない運命の神様の悪戯を感じる・・・*5

駒大苫小牧が、かつて、歓喜の初優勝以降、“常勝軍団”の名をほしいままにしたように、東北のチームも、どこかで壁を破ることができれば、ガラッと流れは変わると思うのだが、まぁ、それはこの先の楽しみにとっておくことにしよう。

*1:控え投手でも甲子園で完投出来るチームゆえ、連戦連投の事態を避けられた。

*2:少なくとも春の選抜の時は、「浪速のダルビッシュ」は言い過ぎ・・・という評価の方が強かったように思う。

*3:大事なところでのエラーが、チームのリズムを崩し、最後は致命的な「2点」につながった。

*4:年によっては、優勝候補が早々と敗退する時もあるというのに・・・。

*5:まぁ、既に北海道代表が甲子園優勝を果たしてしまった今、「白河の関」のフレーズにも昔のような重みはない。特に光星学院の場合は、全て地元選手で・・・というチームでもないし。ただ、東北に本拠を構える学校が甲子園で勝つ、ということには、今でもそれなりの意義があることだとは思う。学校にとっても、選手たちにとっても、そして、応援する人にとっても。

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