変わりゆく時代のさなかの訃報。

日経紙の社会面の片隅にひっそりと掲載される訃報。
日によっては見逃しても不思議ではないその場所に、現在にまで連なる民法学の一大系譜を築き上げた偉大な研究者のお名前が掲載されていた。

星野英一氏(ほしの・えいいち=東京大名誉教授)27日、心不全のため死去、86歳。
(略)
専門は民法。主な著書に「民法概論」など。2007年文化功労者日本学士院会員。

ここ数年の間にお亡くなりになられた東大法学部の看板名誉教授の方々(三ヶ月章名誉教授、団藤重光名誉教授)に比べると、いささか扱いが小さすぎるようにも思われ、「法学」という分野の、世の中での位置づけを改めて思い知らされた次第ではあるのだが、それでも、法学系雑誌を中心に、今後様々なところで追悼特集が組まれるのは間違いないところだろう。

自分なんぞは、星野名誉教授が大学の教壇を去られてから学生になったような世代だから、直接謦咳に接するような機会は全くなかったのだが、師が教壇を去られて何年も経った時代になっても、まことしやかに様々な“伝説”や“神話”の類が流布されていて、それだけ研究者としての存在感が大きい方だったのだなぁ・・・ということを、つくづく感じさせられたものだ。


今、時代はまさに、星野門下の民法学者達が、民法の世界で一大革命を引き起こそうとばかりに、最後の詰めに向かっているところなわけだが、そんな様子を見ながら、かつて、法制審議会で民法部会長まで務められた師は、どういう思いでこの世を旅立たれたのだろうか?*1

出来あがった新しい民法へのコメントを是非聞いてみたい、と思える研究者のお一人だっただけに、完成を待たずにこの世を去られてしまったのが、個人的には残念でならない。
そして、心より、ご冥福をお祈りする次第である。

*1:星野名誉教授が部会長の時に行われたのが、禁治産制度の抜本改正で、その後、現代語化等の動きにもかかわっておられたと記憶している。

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