無敵の三冠牝馬は悲しいジンクスを破れるか?

馬場入り後に騎手を振り落すわ、ゲート入りは嫌うわ、で、波乱の予感がプンプン漂う中スタートした今年の秋華賞

元々“紛れ”が起きやすいと言われるコース設定の上に、第1回のレースが大荒れになった記憶がいまだに鮮烈に自分の中に残っていることもあって、「すんなりと三冠」というわけにはいかないんじゃないか?、という意地悪な期待もちょっとしてはいたのだが、なんの何の・・・。

向こう正面で小牧太騎手&チェリーメドゥーサが仕掛けた一世一代の大まくり*1も、“シルバーコレクターヴィルシーナのゴール前の執念の粘り腰も何のその、といった感じで、上がり33秒1の豪脚を炸裂させたジェンティルドンナが、見事にハナ差差し切って、史上4頭目の「三冠」に輝いた。

そして、ここまでなら、本来は「おめでたい!」と一言で括れる話のはずなのだが・・・。


名実ともに、「日本最強」の称号がついて回る牡馬の三冠馬に比べると、牝馬の「三冠」は、何となくニュースバリュー的にも劣るし*2、過去の「三冠牝馬」たちのその後、にまで目を向けると、むしろ悲劇性をまとった、ありがたくない称号のようにすら思えてくる。

戦績的には比較的美しいまま引退したメジロラモーヌは、繁殖牝馬としての実績をほとんど、といってよいほど残せなかったし、直近の三冠馬であるアパパネは、三冠達成当時の自分の心配*3をなぞるかのように、翌年のヴィクトリアマイルを最後に輝きを失い、失意のまま故障で引退という道をたどった*4

さらに、G1レースはおろか、府中牝馬Sでも大惨敗を喫して、現役を退くことを余儀なくされたスティルインラブは、繁殖牝馬に上がったのちも、わずか一頭の産駒を残しただけで、早逝・・・。

確かに「三冠」を取るためには、牝馬にとって一番難しい、2歳〜3歳の早い時期からレースで実績を残すことが求められるから、大なり小なり“早熟さ”がなければならない→ゆえに、「三冠」達成後は伸び悩む、という理屈は分からないでもない。

また、「三冠」馬ならずとも、レースで力を消耗した馬が、繁殖に行って活躍できない、というケースは決して少なくない*5

だが、せっかく「三冠」をとっても、将来を悲観しなければならない、というのは、T大に入った女子が将来を思って嘆くのと同じくらい*6もったいないことだと思う。

一昔前の“女傑”たちが皆ターフを去り、牡馬と互角に走れる「最強牝馬」が不在となっている今、歳を重ねても成長力を失わなかった父・ディープインパクトの血を受け継ぐものとして、ジェンティルには、仲良く露払いを続けたヴィルシーナともども、過去のジンクスを打ち破るくらいの派手な活躍を、この先も期待したいところである*7

*1:まだ若い牝馬のレースだけに、単に引っかかってしまっただけ、なのかもしれないが、前半1000mが62秒台、というペースを考えれば、あそこで前に出たのは正解だったし、最後の直線に入っても場内のどよめきを白けさせなかったレースぶりは、このレースの影のMVP、と呼ぶにふさわしいものだった。結果論ではあるが、桜、樫と同じ顔ぶれでのディープ産駒の順当なワン、ツー、という決着を導いたのも、レースの展開を一変させたあの大まくりだったのかなぁ、という気がしている。

*2:2年前にアパパネがタイトルを取ったばかり、というのもあるだろうが。

*3:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20101017/1287330153

*4:それでも、彼女が「三冠」達成後にG1タイトルを獲得した唯一の馬、ではあるのだが・・・。

*5:エアグルーヴのように、あれだけ息長く牡馬に交じって活躍しても、きちんと繁殖としての実績を残す恐ろしい馬もいるが、彼女は3歳時、オークス以外の三冠レースを欠場、ないしまともに走らなかった、という点で、真面目に「三冠」をとった馬に比べれば、消耗が抑えられていた、という見方もできるところである。

*6:笑。

*7:巷では、ディープ産駒の4歳以降の成長力への疑問符も呈され始めているだけに、若干気になるところもあるのだけれど。

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