追徴課税の衝撃。

「国際レース」の看板を掲げながら、外国馬が1頭も走らなかった今週のジャパンカップダート*1

昔懐かし“ニホンピロ”の冠を付けた馬が堂々の勝利を飾り*2、鞍上に苦労人・酒井学騎手、とくれば、本命馬&一流ジョッキーの時とはまた異なる趣きがあるもので、それはそれで競馬らしいドラマだったと思う。

・・・で、本筋の話題はこの辺にしておいて、自分が週末、衝撃を受けたニュースを一つ。

「競馬で得た所得を申告せず、計約5億7000万円を脱税したとして、大阪地検所得税法違反罪で、会社員の男を在宅起訴していたことが29日、分かった。」(日本経済新聞2012年11月30日付け朝刊・第47面)

確かに、馬券の配当金が一時所得として課税される、ということは、コアなファンなら皆知識として知っていることではあるのだが、配当金が年間50万円(課税対象の基準額)を超える人、となると、相当限られるのもまた事実。

ましてや、「納税しなかったことで刑事責任を問われた」なんて話は、前代未聞である。

記事によると、被告人は、「市販の競馬予想ソフトに独自の計算式を入力し、2004年ごろからインターネットで一度に大量購入していた」ということで、

「09年までの3年間に約28億7千万円を馬券購入につぎ込み、約30億円の配当を得たため、もうけは約1億4千万円だった。」(同上)

ということだから、これだけ派手にやっていれば・・・ということなのだろうが*3、それにしても3年間で1億円プラス、というのは、何ともうらやましいことこの上ない(そっちかよ・・・って突っ込みはなしでお願いします(苦笑))。

既にあちこちのブログ等で議論が盛り上がっているように、本件は、「収入を生じた行為のために直接要した金額」と規定される経費に「外れ馬券の購入費」が含まれるか、ということが、最大の争いどころになってくると思われる*4

そして、「宝くじ」(非課税)と同じ扱いにしろ、とまでは言わないものの、せめて株式譲渡益のように損益通算できるようにすべきだ、という主張は、当然ありうべしだと自分は思っているし*5、刑事訴訟とはいえ、被告人の主張が認められれば*6、今後の実務(?)に与える影響も大きいのではないかと思っている。

だが、そんな主張の当否もさることながら、やっぱり、3年間で1億円というのはすごいこと。

納税を免れようとした金額の大きさを考えれば、実刑判決が出ても不思議ではない事件だけに、あまり先の話をしても仕方がないのかもしれないが、「1.4億円」のリターンを叩きだしたノウハウを何らかの形でビジネスに活用すれば、追徴課税分くらいはあっという間に回収できてしまうのではないか・・・そんなつまらない妄想すらしたくなる。

外れ馬券購入費を控除しなくても、課税最低ラインに遠く及ばないレベルでこせこせと馬券を買っている自分には、なかなか想像できない世界ではあるのだけれど、とにもかくにも、スケールの大きな話だなぁ・・・と思った次第。

*1:個人的には、このレースは阪神じゃなくて、左回りの競馬場でやった方がいいんじゃないかと思う。東京だとレース数のバランスが悪い、というのであれば、中京競馬場でもいいから・・・。

*2:かつてニホンピロウィナーが数少ない国内産種牡馬として活躍していた時代は、ニホンピロプリンスとかニホンピロスタディみたいな、個性的な馬がターフを沸かせていたのだけれど、最近では馬柱に名前を見る機会すら減っていただけに、何とも感慨深い。

*3:しかもIPATで購入していたようだから、窓口で馬券を買っているのに比べれば、正確な取引履歴を当局が入手することもたやすい。

*4:おそらく納税額に争いがあったので納めなかった、という事案ではなく、最初から納税する気がなかった事案だと推察されるから、刑事裁判において「有罪」認定を受けることに変わりはないと思われるが、未申告額が約29億円なのか、約1.4億円なのか、というのは、情状や罰金額等を考えると、それなりにインパクトは大きい(いずれにしても巨額の脱税であることに変わりはないのだが・・・)。

*5:自分は、馬券を買う、という行為の本質は、ギャンブルというよりは、純粋な投資のそれに極めて近いと思っていて(事前に与えられた様々な情報を総合的に検討して、リスクとリターンを見極めながら、「これだ」という商品を購入する、というのが「馬券を買う」という行為である)、金融商品への投資が推奨される風潮があるにもかかわらず(最近では子供にまで「教育」が行われていたりもするのに)、(株式や為替に比べれば)遥かにリスクが読みやすく失敗した時の実害も少ない、「競馬」という投資機会が必ずしも日の目を見ていないのはいかがなことか、と常日頃思っている。

*6:というか、本当は本筋の課税処分を争う機会の中で主張が認められるなら、それにこしたことはないのだが・・・。

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