美しい引き際。

今年の仕事も(正規の出勤は)ラスト、という日の朝に、テレビを付けた瞬間飛び込んできた衝撃的なニュース。

松井秀喜選手 現役引退」

結局、記者会見まで見てしまい、どんよりした気分で今年最後の出勤・・・ということになってしまった。

確かに、今年のメジャーでの成績を見る限り、来季もメジャーで、という選択はかなり厳しいだろうなぁ、というのは素人目にも明らかだったし、かといって、「日本でやります」というタイプの選手でもない、というのも分かっていたことではあったのだけれど、やっぱり、自分と同年代の選手、それも、高校時代から全国レベルのスターとして、王道を歩んできた選手が第一線を退く、というのは、率直に寂しいものだと思う。


松井選手と言えば、「5連続敬遠」のイメージがあまりに強すぎるために、どうしても高3の夏の甲子園のエピソードで語られることが多いのだが*1、自分は、彼が高2の夏に、同じく2年生の山口哲治投手(事実上のエース&打率も良かった)と暴れまくって甲子園で旋風を起こした時の印象の方が強い*2

あの頃は、一番、高校野球を良く見ていた時だったし、スポットライトの当たる場所で輝いている同年代の人間への憧れみたいなものもあった。

そして、その後、巨人&長嶋監督にドラフト1位で指名され、瞬く間に一軍に定着し、やがて4番の座を奪って、日本を代表するスラッガーになる、という絵に描いたようなサクセスストーリーを歩んでいく松井選手の姿には、ただただ、別世界の眩しさしか感じられなかった*3

日本での輝きがあまりにすごかっただけに、メジャーリーグに行ってからの戦績は「不満足」なものと評されることも多いのだが、冷静に見れば、あの名門ヤンキースの一員として7シーズン過ごし、しかも、ワールドシリーズでの優勝&MVPまで経験し・・・とくれば、数字以上の価値は十分にある結果を残した、ともいえる。

マイナー契約する途も、日本に戻る途も選ぶことなく、メジャーリーガーのまま現役を終える、という結論を出したのも、負傷の影響もさることながら、この10年でそれだけ成し遂げた感を経験できたから・・・とみることもできるだろう。

今や選手寿命は以前に比べて遥かに伸ばすことが可能となったとはいえ、かつて“天才”の名をほしいままにしていた選手たちが、批判に晒されながら選手生活の晩年を過ごすシーンを目の当たりにする、というのは、ファンとしては複雑な心境でもあるだけに、これで良かったのかなぁ、という思いもある。

ただ、日本球界にいた時から、敵味方なく応援できてしまう数少ない選手だっただけに*4、やっぱり、自分はもう一度、松井秀喜選手がどこかのユニフォームを着てプレーする姿を見たかった。

だから、今は、「残念」の一言しか出てこない。


なお、今回の引退劇を「美しい引き際」とみるか、「王道を歩んだゆえの淡泊な去り方」とみるかは、人それぞれだと思うけど、「引き際」を作れるような状況に持っていくために、日々死にもの狂いで頑張らないといけない我々凡人には、どちらも遠い世界の話だなぁ・・・と思わざるを得ないわけで、それも自分を落ち込ませる理由の一つ、になってしまっているのかもしれない。

いつかは辿り着きたい境地だと、思ってはいても、決してたどり着けない境地だからこそ、それを目指そうとするエネルギーも湧いてくる。そう考えれば、ちょっとは前向きな気持ちになれるのかもしれないけれど・・・(苦笑)。

*1:個人的には、あの明徳義塾戦の「5敬遠」を殊更に批判する当時の世論には非常に違和感があった。一生に一度の舞台で、トーナメント一発勝負、と来れば、勝負云々の前に「勝ちたい」と思うのが当たり前でしょう、と。「勝負すること」に快感を味わえるのは、同じレベルの実力を備えた人間か、高みの見物をしている観客だけで、並の選手なら「どうやったら打たれずにリードを守れるか」ということしか考えられない。必死だから。

*2:特に、絶対的エースの上田佳範投手を擁し選抜準優勝、優勝候補の一角だった松商学園との準々決勝は歴史に残る名勝負だったと今でも思っている(前の試合での死球の影響等、上田投手の悲劇性を象徴する試合として取り上げられる方が多い試合ではあるが)。

*3:中途半端に活躍している人間であれば、勝負するジャンルは違えど多少の嫉妬心は湧くものだが、あのレベルになってしまうと全く・・・(笑)。

*4:自分は「読売巨人軍」という存在は死ぬほど嫌いだし、メジャーにしてもヤンキースは元々決して好きなチームではなかった(チームの悲劇性ゆえにボストンの方に何となく共感していた)。それでも、松井選手にホームランを打たれて負けた日に悔しさを感じた、という記憶はほとんどない。これが清原とか元木(笑)とかだったら、悔しさ百倍だったのだけど・・・。

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