風は吹き、箱根路は荒れた。

往路で「切り札」的存在だった東洋大の柏原選手が昨年で卒業し、今年は最後まで目が離せない・・・と煽られながら迎えた今年の箱根駅伝

素人ならすぐに音を上げてしまいそうなハードなコースを、様々な“期待”(温かいものから意地悪なものまで・・・)を背負わされて走る選手たちは気の毒だなぁ・・・と思いながら、毎年テレビで眺めていたのだが、今年の往路は、それに輪をかけて、激しい風が吹き付ける、という過酷なコンディションゆえ、見ていてかわいそうになるような展開となってしまった。

5区に至っては、シード校である城西大(前年6位)、中大(前年8位)が相次いで棄権を余儀なくされる、という悲劇。
報道*1によれば、寒風による低体温や脱水症状が原因、ということのようだが、中大の選手などは、ゴール直前(2キロ前くらい)のチェックポイントまでは、きちんとラップを刻んでいただけに、あと一歩のところで、「28年連続シード」の栄光の歴史を自ら途切れさせる判断をしなければならなかった走者&関係者の心中は如何ばかりだったのだろうか・・・と考えただけで、胸が痛む。


毎年、この時期のエントリ―では書いていることだが、今、箱根駅伝に出てくるチームはどこもレベルは高いし、ほんの一部の飛び抜けた選手を除けば、どの選手も実力は高いレベルで拮抗している。

それだけに、ちょっとしたコンディション調整ミスや、メンタル的な焦りから来るフォームの乱れ、ペース配分ミス等々で大きく順位が変動してしまうことにもなるわけで、今年も、1区の早大、2区の中大、そして、ベンジャミン選手の快走で首位で襷をつないだ後の日大の3区・・・と、10000m・28分台の記録を持つ選手たちが、チームの予測を大きく狂わせる“まさかの失速”*2

さらに、いつもならこういう時でも手堅く堅実な戦略で乗り切ってくる、近年の駅伝名門校(かつ今年の優勝候補たち)も、

◆駒沢大:2区でエース・窪田選手が区間7位で順位を下げ、3区・中村選手が3人抜きで2位まで浮上したものの、4区の走者が区間19位。8つ順位を下げる大誤算。最終的に7分近く差を付けられての9位。
東洋大:1区・田口選手が区間賞、2区、3区と設楽兄弟でつないで3分近い差を付けたところまではプラン通りだったものの、急遽エントリー変更を迫られた4区と、大砲・柏原選手を失った5区で他校の後塵を拝し、最後は3位に粘るのがやっと・・・。

と誤算だらけの結果となってしまった。

そうでなくてもプレッシャーのかかるレースで、計算通りに襷をつなげない焦りが、選手たちの走りに微妙な歪みをもたらし、悪天候というコンディションがその亀裂をさらに広げる・・・

真に一流の選手であれば、そういった要因を全部はねのけてエネルギーに変えられるのかもしれないが、そういった特殊な才能と根性を持っている選手がそうそういるわけもないのであって、本来の実力以上に他の選手に水をあけられてしまった選手も、今年は多かったのではなかろうか*3

予選会からの出場で、優勝候補として挙げられる機会は決して多くなかった日体大が、5区の服部主将の力走で往路逆転優勝を遂げることができたのも、選手の力もさることながら、過酷な自然条件の下でも、ある程度肩の力を抜いて走れるポジションにいたのが大きかったのではないかなぁ・・・と思うところである*4

もちろん、復路になれば、それぞれの学校に、また異なる思惑が出てくるだろうし、長丁場で、それが勝負のあやとして浮かび上がってくる可能性もあるのだけれど*5、筆者としては、せめて復路だけでも、神様の悪戯がもたらす悲劇をちょっとでも和らげることができるように、天候が落ち着くことを願うのみである*6

*1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130102-00000057-nksports-spoなど。

*2:メディアも視聴者も、見ている側は「ブレーキ」という言葉を安易に使ってしまいがちなのだが、各区間で一番タイムが遅かった選手でも、普通の市民ランナーには20分、30分を優に超える差を付けられるくらいのスピードでは走り切っているのだから、順位変動にかかわらず、走り切ったことを素直に称賛してあげたいなぁ、と思う。

*3:5区で棄権を余儀なくされた2校も、シード校ながら5区に襷を引き継いだ時点で11位(城西大、5分11秒差)、18位(中大、9分34秒差)と、シード権確保に向けて正念場のポジションに置かれていたがゆえに、挽回しようとした選手たちに余計な力みが生じてしまったのかもしれない。

*4:東洋大がトップを譲り渡してしまったのも、早大の山本選手が前を行く日体大をいったんは捕まえたのに最後に足を痙攣させて2位を守るのがやっと、になってしまったのも、上位常連校ならではの「往路優勝」がちらついていたゆえ、と考えられなくもない。

*5:おそらくすべては、日体大が6区の出だしをどう乗り切るか、にかかっていて、ここで市川選手擁する東洋大に逆転を許すようだと、当初の予想通り、順当な結果に収まる可能性も高い。

*6:特に6区は、山下りだけに、往路と同じような強風が吹きすさぶことになれば、レースの安全性自体が微妙になってきてしまう。下り坂の横風は、上りのそれとは別の意味で脅威なので・・・。

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