4年連続3割の好打者、加えて元投手らしい強肩とずば抜けた身体能力を有し、日本ハムの“顔”になりかかっていた糸井嘉男外野手(31)が、八木智哉投手(29)とセットで、オリックスバッファローズにトレード。
入団6年目で開花した打者としての遅咲きの才能*1を、惜しみなく発揮していた糸井選手の“放出”は、これまで手塩にかけて育ててきた現場の関係者にとっても、ハムファンにとっても、実に衝撃的な出来事だっただろうし、八木投手にしても、近年は精彩を欠くシーズンが多かったとはいえ、元々は希望枠で入団した元新人王。昨シーズンの前半などは、まだまだいける、と思わせた矢先だった。
代わりに入ってくる選手と言えば、巨人から移籍後も今一つ抜けた成績が残せていなかった木佐貫洋投手(32)*2、コンスタントに試合に出場しながらも最高打率は2割7分8厘どまりの大引啓次内野手(28)、西武時代に一時代を築くも昨シーズンは打撃不振に苦しんだ赤田将吾外野手(32)と、素人目には「日ハム大丈夫か・・・?」と思わせるようなトレード。
まるで、パワプロでよくある“コンピュータお勧めトレード(笑)”みたいな展開である。
選手の見極めには定評がある日ハム球団の編成チームのことだから、一見不利に見えて、これも将来を見据えた戦術なのかもしれないけれど・・・。
やはり、いろいろと報道されているように、今回のトレードの背景には、昨年から続いていた糸井選手の契約更改交渉の難航・・・という事情があったのかもしれない。
昨年末の共同ニュースの記事は、糸井選手が年俸2億円の提示を保留し、代理人交渉に移る見通しとなったことを伝えている*3。
もちろん、一年一年、自分の体だけが資本のプロスポーツ選手が、年俸交渉で安易に譲歩しない、というのも理解できるところであるし、代理人を使ったからダメ、というルールになっているわけでもない。
しかも、糸井選手の場合、ここ数年ずっと安定した成績を残しているとはいえ、既に年齢は31歳。予期せぬ負傷や思わぬスランプにぶち当たった時に、その次のシーズンの保証がない状況である以上、“稼げる時に稼ぎたい”という感情は容易に理解できるところである。
だが・・・
稲葉篤紀選手ほど“チームの核”としての存在感を確立しているわけでもない。
かといって、中田翔選手や陽岱鋼選手ほどの、将来性を感じさせる華と若さがあるわけでもない。
巧打と強肩で客席を沸かせるだけの力はあるが、突出した長打力があるわけではなく、しかも三振と失策も結構多い未だ“荒削り”感が残っている・・・
そんな状況で、「代理人交渉」というカードを切り、さらにメジャー移籍までほのめかす、という交渉戦術が果たして得策だったのかどうか?
これで、オリックス移籍後の糸井選手が、一年を通じて今以上の成績を収めることになれば、誰にも不幸を招くことなく、結果的には首尾よくトレードが成功した、ということになるのだろうけど・・・
自分としては、ちょっと残念な気がしてならない。