期待の裏にある、もう一つの思い。

先日、安藤勝己騎手が引退するなど、“新年度”*1を感じさせるニュースが流れる季節になっているが、そんな中、また派手なニュースが飛び込んできた。

中央競馬の2013年度騎手免許試験合格者が7日発表され、過去5年で4回、地方競馬最多勝を記録した戸崎圭太騎手(32、大井)が、3度目の受験で合格した。3月限りで閉鎖が決まっている広島・福山競馬の岡田祥嗣騎手(41)も合格し、地方から中央への移籍騎手は10人となった。」(日本経済新聞2013年2月8日付け朝刊・第33面)

記事にもあるように、内田博幸騎手が中央に移籍し、さらに的場文男騎手が衰えを隠せない中、大井競馬所属の看板ジョッキーとして名を挙げてきた戸崎圭太騎手。

ここ数年は、中央のレースで名前を見かけることも多くなっていたし、中央馬が地方交流戦に出るときの手綱を任されることも多くなっていた。

リアルインパクト安田記念を勝ったレースなどは、シルポートの作った速い流れの中で、9番人気の馬を思い切って先行させ、他の馬が軒並みばてる中、粘りに粘りの直線で、ストロングリターンの猛追を交わし切る、という実に見事なもの。

知名度も高く、馬主の信頼を得るにもそんなに時間はかからないだろうから、数年後には、リーディング上位の常連になるのは確実だと思われる。

若手・中堅世代が伸び悩む中、そろそろ世代交代を・・・と思うファンも多い中で、まだ32歳、という若さだけに、期待も一気に膨らむところだ。


だが・・・

戸崎騎手が移籍してしまうことで、全国区で張り合える地方のジョッキーが、また一人いなくなってしまう寂しさ。
あと南関東で自分が知ってるのは、戸崎騎手と同世代の森泰斗騎手(船橋)くらいだが、実力はともかく、実績と知名度ではまだまだ互角に張り合えるレベルではないような気がする。

さらに地方に目を移せば、園田の木村健騎手*2などもいるし、佐賀競馬で気を吐く山口勲騎手なども時々中央に出てきてはいるのだけれど、地の不利もあってか、どうしても「全国区」には届かない*3

かつて、地方競馬所属だった頃のアンカツだとか、小牧太騎手、内田博幸騎手といった脂の乗り切ったジョッキー達が、「中央何するものぞ」と腕っぷしをふるっていた時代があったし、時々レースに出て、見事な職人芸を披露しては、翌日自分のホームグラウンドに戻って淡々と勝ち星を重ねた石崎隆之騎手のような“いぶし銀”のジョッキーが、中央のターフで存在感を放っていた時代もあった。

中央>地方、という暗黙の序列に縛られがちなファンの固定観念を打ち砕く、意地と技。
優れた騎手の移籍の報を聞けば聞くほど、そんなドラマを目撃する機会が減ってしまう・・・

そう思うと、何とも言えない気持ちになる。

*1:競馬界のカレンダーでは、騎手、調教師に新規に免許が付与される3月が、何となく世の中的な新年度の始まり、になっている。もちろん事業年度は1〜12月なのだけど。

*2:ショウリュウムーンJRA重賞を取った実績もある。

*3:園田競馬の関西での位置づけが自分にはピンとこないので、その辺は関東の人間と関西の人とで、感覚の違いがあるのかもしれないけれど。

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