世界市場の“一服感”が意味するもの。

世の中には、まともな根拠があるかどうか疑わしいのに、まことしやかに唱えられている(しかも、ネット上の呟きのレベルではなく、それなりに社会的地位がある人まで信じ込んで(?)しまっている)“都市伝説”的な主張、というのが結構ある。

昨冬以来の“アベノミクス・バブル”で、どこもかしこも株価が急騰してしまった今となっては誰も口に出さない「ガバナンスに問題があるから日本企業の株価が低迷している」といった主張なども、一年前の会社法改正要綱決定に向けた議論の頃には、かなり真剣に唱えられていたものだ。

そんな中、また一つ“都市伝説”を覆すようなニュースが報じられている。

「2012年の世界の音楽販売は1999年以来13年ぶりに増加。米国の映像ソフト販売も8年ぶりに増えた。音楽では『定額・聞き放題』などの新サービスが普及。映像でも品ぞろえが豊富で購入手続きも簡単なサービスが定着したためだ。」(日本経済新聞2013年3月13日付け朝刊・第9面)

わが国において、「音楽業界の不振」が語られる時には、必ずと言ってよいほど、“違法ダウンロード”の問題が指摘されてきたし、それゆえ、性急に過ぎると思えるくらいのペースで、「違法ダウンロード刑事罰化」といった動きまで突き進んで来てしまったのであるが、そんな中、伝えられたのがこのニュース・・・。

あくまで日本の新聞社が書いた記事だけに、上記記事の中にも「違法ダウンロードよりも使いやすいサービスが出てきた」から、といったトーンの論調が垣間見えるのだが、「違法ダウンロード」を使い続けている人の行動パターンはそうそう変わるものではないだろう。

それよりはむしろ、“iTunes”や“Spotify”が大量の音楽をリーズナブルに供給し始めたことで、これまでCDショップに足を運ばなかった人々が音楽の「需要者」に転じた効果の方がむしろ大きいように思えてならない。

翻って日本で、上記のような世界的な動きがどの程度数字に反映されることになるのかは分からないけれど、2012年に一瞬回復の兆しを見せた音楽ソフト販売がまた落ち込みに向かうようなことになったとしても、それで“違法ダウンロード”云々を再び叫ぶのは、もはや許されない市場環境になりつつある・・・と言えるのではないだろうか。

個人的には、パッケージ型のCD販売で未だ市場が下支えされているこの国で、本来“ドル箱”になるはずの有料配信の落ち込みを放置するのは、重大な機会損失だと思うだけに、せめて一般ユーザーが海外と同程度の配信サービスを享受できるように、権利者側でも柔軟な思考で対応してほしい、と思うところである。

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