変わりゆく「強さ」の基準。

ここ10年位、荒れるのがすっかり定番になってしまった感がある、春の天皇賞
そして、今年もご多分に漏れず、昨秋以降連勝街道を突っ走っていたゴールドシップがまさかの5着に敗れ、馬連、ワイド、3連単複、とちょっとした波乱を引き起こすことになってしまった。

ディープインパクトが圧倒的1番人気*1に応えて勝った2006年の印象が未だに残っているファンが多いせいか、それ以降の荒れ傾向ばかりが強調される傾向があるが、この10年で言えばむしろディープが特異だっただけで、それ以前からスズカマンボイングランディーレヒシミラクル*2、とまぁ、“波乱”のエピソードには事欠かない。

波乱の原因が、マイラー色が強まっている最近のJRA登録馬の血統背景にあるのか*3、それとも「京都の開幕2週目」という舞台設定にあるのか*4、は分からない。

ただ、後に殿堂入りするような馬々が、春の盾の勝者として名乗りを上げていた時代とは異なり、今は、このレースで勝ったからといって、その後の盤石な地位が保証される、ということにはならないし、このレースで不甲斐ない負け方をしたからといって、その後のレース人生に暗雲が立ち込める、ということにもならない*5

伝統のあるレースだけに、古くからのファンであればあるほど、頭を切り替えるのは難しいのだけど、もはや、サラブレッドの強さを測る「基準」などとっくに変わってしまっていて、このレースの価値は、ステイヤーズSダイヤモンドSと大差ないものでしかないんじゃないか・・・と、今年のレースを見ていて改めて思った。


まぁ、最近では、ステイヤー色の強さゆえ、どこかしら“昭和”の香りが漂うステイゴールド産駒が、じわじわと存在感を増すようになってきていて、今年などは、サトノシュレンが豪快な逃げを見せ、人気を被ったゴールドシップが道中で捲りまくり、最後はフェノーメノが美味しいところを持っていき・・・と、「ステイゴールド産駒の、ステイゴールド産駒による、ステイゴールド産駒のための天皇賞」の様相を呈していたりもしたので*6、もう少し経つと、また状況が変わってくることもあるのかもしれないけれど・・・。

*1:あの時は、2番人気のリンカーンが、単勝10倍以上のオッズ・・・という震え上がるような一本かぶりだった。

*2:ヒシミラクルの場合、人気がなかったとはいえその前年の菊花賞馬だし、その後もしっかり宝塚記念を勝っているから、このカテゴリーからは外してあげた方が良いのかもしれないけれど・・・。

*3:長距離を走れてナンボ(菊花賞春の天皇賞のステータスが極めて高かった)、という血統がそれなりの存在感を放っていた時代とは異なり、今は、“本質的にはマイラー”という血統がJRA登録馬のほとんどを占めてしまっているし、それゆえ、秋の天皇賞などと比べて、レースに出走する馬の格自体が一段落ちる(そして、ちょっと長距離実績があるだけで一番人気に押し出される馬が出てくる)ことが、波乱の原因になっていた時期もあった。去年のオルフェーヴル、今年のゴールドシップに関しては、実績的には申し分ない成績でレースに臨んでいたので、直ちにこの理屈が当てはまるわけではないが、本質的には“ステイヤー”というより中距離馬としてのDNAの方が強かった、それゆえ3200mという長丁場では、どうしても過大な人気には応えきれなかった・・・ということはあるのかもしれない。

*4:馬場の整備技術が格段に進化した今、そうでなくても前残りになりやすい京都で、開幕2週目にこんな大レースをやること自体が、ナンセンスというべきなのかもしれない。

*5:それは去年のオルフェーヴルのシーズン後半の活躍を見れば、一目瞭然だろう。

*6:敗れたゴールドシップにしても、最後の直線でズルズル落ちても不思議ではないところを、じわじわと粘って掲示板を確保しており、実力の片りんは見せている。

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