これまで“世界最高峰”の名を欲しいままにしていたリーガ・エスパニョーラの2強が、相次いで準決勝で散った今年の欧州チャンピオンズ・リーグ。
先に行われたレアル・マドリッド対ドルトムントの試合の方は、モウリーニョ監督らしいあきらめの悪さ、ゆえか、地元に戻って息を吹き返した白い軍団が、あと一歩・・・のところまで相手を追い詰めたのだが、FCバルセロナの方は、前半を0-0で折り返してささやかな抵抗を見せたのがやっと*1。
ロッベンに鮮やか過ぎる一発*2を食らって以降は、なす術なく、2戦合計スコア0-7という屈辱的な大敗で、大舞台から姿を消すことになってしまった。
大黒柱のメッシが満足にプレーできず、他にも主力選手の負傷、出場停止が相次いだ状況で、充実一途かつ昨年のCL決勝の雪辱に燃えているバイエルンと当たってしまったのが運の尽き、とはいえ、今年に関してはACミラン、パリ・サンジェルマンと、お世辞にも現有勢力では「難敵」とまでは言い難い相手に苦戦続き。
直前に発売されたNumber誌でも、今季の“異変”を受けての特集が組まれていて、メッシへの依存度が強いチームになり過ぎてしまった、とか、長年黄金時代を支えてきた選手たちが歳月とともにピークを過ぎてしまった、とか、グアルディオラ監督がチームを去った影響が想像以上に大きかった等々、いろいろと指摘はされていたのだが、それでも論者の意見はまだ50/50。
だが、今回、CL準決勝で無残な姿を晒してしまったことで、「斜陽の陰」を指摘する声が一段と加速することは間違いなさそうだ。
Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 5/9号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/04/18
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (3件) を見る
自分は、クライフが監督をやっていた頃から、メディアを通じて見聞きする“名門バルセロナ”のブランドに憧れを感じていたし*3、それゆえ、数年前、スペインを訪れる機会があった時も、他のどんな予定よりも優先してカンプ・ノウに足を運んだ。
当時のFCバルセロナは、まさに栄華の極み、といった感じで、試合があるわけでもないのに、全世界からやってきた観光客が、試合観戦と同じくらいのチャージが必要なスタジアム・ツアーに行列をなし、街に出ても、どこかしこに観光客目当てのグッズが並ぶ・・・
当時は、高い技術に裏打ちされた華やかな戦術や、クラブの優れた育成システムなど、どんなスポーツ雑誌を読んでも“バルセロナ礼賛”の声があふれていたし、大舞台でもそれに相応しい結果を確実に積み上げていた。
さらに、国内リーグでの宿敵レアルとの激しい争いが国全体のレベルを引き上げたのか、長年結果を出せていなかったナショナルチームまでもを長年の眠りから覚ますなど、どこを叩いてもいい話しか出てこない・・・そんな時代だった。
もちろん、頂点を極めれば、後は下り坂をおちていくしかないのが世の常で、名将の名をほしいままにしたグアルディオラ監督がチームを去り、さらにスペインという国がW杯を挟んで2大会連続のEURO制覇の偉業を達成した時点で、遅かれ早かれこうなる運命だったのだろう、と思う。
リーグ自体も、かつて複数のチームが覇権を競いあっていた時代とは異なり、今は圧倒的に戦力が充実した「2強」とそれ以外のチーム、という構図になってしまっていて、“日々の戦いを通じてのレベルアップ”に期待することはもはや難しい。
健全経営の要請ゆえ、チームごとの戦力が比較的拮抗する傾向があるブンデスリーガの所属チームが、CLの決勝戦に勝ち上がった、という事実と対比すると、現在のバルセロナが&リーガ・エスパニョーラ勢が置かれている立場もより鮮明になってくることだろう。
このまま行けば、来季は、いよいよドイツ勢が欧州のサッカー界を席巻することになりそうだし*4、ここ1、2年でようやく往年の輝きを取り戻しつつあるイタリア・セリエA勢も、今季を上回る戦績は期待できそうだ。
これに対し、おそらくモウリーニョ監督が去るであろうレアルと、体制の混乱すら予想される落日のバルセロナ、そして、それに追随する勢いがない3番手以下のチーム*5で、スペイン勢がCLの長丁場を乗り切るのは、かなり難しいミッション、ということになるだろう。
FCバルセロナが、このまま一直線に栄華からの転落の道のりを辿ることになるのか、それとも、また新たな血を導入して、徳俵で踏みとどまることになるのか、今の時点で予測することは難しいのだけれど、仮に不幸にも前者の道のりを辿ることになったとしても、長い歴史に裏打ちされた伝統が、いつか再び、見慣れた“臙脂と青”のユニフォームを大舞台で輝かせてくれることを信じて、もうしばらくは静かに見守ることにしたい。
*1:その前半ですら、ホームとは思えないくらい相手にボールを上手に回されてしまって、何度もペナルティーエリアであわやのシーンを作られており、「良く持ちこたえた」という以上の感想はなかった・・・。
*2:あれだけの名手に、どフリーでボールを与えて悠々とカットインさせてしまった、という事実が、今のバルセロナの状態を象徴したように思う。
*3:当時は、「長い伝統と熱狂的なファンを有し、世界的なスーパースターを擁して魅力的なサッカーをするけど、勝てない&ビッグタイトルには縁がない」という類のチームだったから、わが国の某縦縞野球チームに対して抱く思いと似たような感情を持って応援していた。
*4:なんといっても、「これだけ強いバイエルンに、あのグアルディオラがやってくる」というだけで、次期CLの大勢は決したようなものだ。仮に運その他の要素ゆえに、頂点まで勝ち上がれなかったとしても、無様な試合は決してしないだろうし、リーグでの戦いを通じての、他のチームの戦術的な進化にも期待できる。
*5:今年はマラガが健闘したが・・・。