「システム開発契約」が注目され続ける理由。

「Business Law Journal」誌において、すっかり定番となった感がある「システム開発契約」の特集。
今月号も「システム開発トラブル〜実務対応の最前線」というタイトルが表紙を飾った。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 07月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 07月号 [雑誌]

表紙の頭を飾った特集だけで見ても、

2011年12月号 「システム開発契約〜成功と失敗の分かれ目」
2010年5月号 「IT ベンダ対ユーザ システム開発契約をめぐる紛争」

と、毎年一回くらいのペースで、この手の特集が組まれていて、もういい加減ネタ切れなのではないか・・・と思いながら、最新号の特集を読んでみたのだが・・・。


何となく、これまでの特集と比べても、掲載されている論稿の中身が一段グレードアップした感がある。

特に、伊藤雅浩弁護士の「システム開発プロジェクト推進中の法的留意点」(26頁)という論稿では、プロジェクト推進過程における「証拠づくり」という観点から、よりリアルな第一線法務のテクニックが語られていたし、松島淳也弁護士の「システム開発訴訟における攻防」(33頁)という論稿も、かなり具体的なシミュレーションの下で、原告・被告双方の主張・立証事項が要領よくまとめられている。

また、実務家の生々しいコメントが有益なのは、別に今回の特集に限った話ではないのだが、それでも、「なぜ30年間同じ失敗が繰り返されるのか」(元中堅ソフトウェアベンダ法務部長の高田寛・富山大教授)、「赤字案件を見抜くための組織的対応」(大手ベンダ法務部長)と、どちらかと言えばマネジメント的立場で活躍されてきた実務者の方々が寄稿されたことで、“システム開発交渉が何故泥沼にはまるのか”という構図がより鮮明になったように思われる。


おそらく、これまで理屈先行の法解釈と、マイナー判決の積み重ねの下で語られてきたベンダー、ユーザーの役割に関する問題が、「スルガ銀行IBM事件」という、ユーザーから見れば画期的、ベンダーから見れば最悪な判決によって、明確な形で世に出てきたことも、上記のような“進化”の原因として考えられるところなのかもしれない。

伊藤弁護士のプロジェクトマネジメント義務に関する様々な“サンプル”の多くも、上記スルガ銀行事件に着想を得たものだし、訴訟での主張立証の話にしてもそうだ。

自分は、まだあの判決の原文に接したわけではないので、何とも評価できない部分はあるのだが、裁判所における紛争解決規範の定立を契機に、実務が動く、ということは十分ありうる話のわけで、システム開発の世界においても、今は何となくそういうフェーズに差し掛かりつつあるのではないか・・・ということを感じた次第。


こうなってくると、次にまた同じテーマで特集を組む時が、より大変になってくるのかもしれないが、その時にはまた新しい動きが出てきているのかどうか。

今後の議論の行方が注目されるところである。

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