2週続けての美しい復活劇。

先週、弟・幸四郎が久々のG1勝ち名乗りを上げた、という一族の良い流れをそのまま引き継ぐように、武豊騎手がキズナ号で8年ぶりに制覇した第80回日本ダービー

8年前の武豊騎手、と言えば、怪物・ディープインパクトとコンビを組んで、クラシック三冠、国内では無敵の快進撃を繰り広げていた時代であったわけで、既に第一人者の地位を確立して久しかったとはいえ(そして、一部の目の肥えたファンからは、彼の騎乗ぶりに批判の声も上がるようになっていたとはいえ)、あの頃は、まだ、このスタージョッキーの勢いが永遠に続くだろう・・・と信じていた人は多かったはずだ。

だが、凱旋門賞で完敗、しかもレース後に失格・・・という悲哀を味わったあたりから、運命は暗転。
ケガなどもあって、気が付けば、勝ち星は100勝に遠く届かない数字にまで落ち込み、G1タイトルからも丸2年見放されてしまう。

今年は、昨年(年間の重賞勝利がわずか3勝にとどまった)に比べれば、出だしから比較的好調のように見えたとはいえ、牝馬クラシック戦線で期待されたクロフネサプライズは、桜花賞4着、オークスでは12着惨敗*1、と、やはり往年の勢いには程遠いなぁ・・・と思っていた矢先に、転がり込んできたのが、「5度目のダービー制覇」という栄誉だった。

しかも、勝ちっぷりがまたすごい。

この日のレース展開は、アポロソニック(3着)やペプチドアマゾン(4着)といった逃げ・先行勢が上位で粘り込んでしまったことからも分かるように、決して追い込み馬優位の流れではなかったのに、そこで、上り33秒5、という次元の違う脚を見せて、直線完璧に差し切ったのだから、まさに全盛期の武豊騎手の「強い競馬」そのもの。

正直、今年の3歳世代は、クラシック戦線の動向等からして、牡馬・牝馬共に“どんぐりの背比べ”的な感が強いことは否めない。
それゆえ、古馬勢に交じった時に、3歳戦での戦いぶり同様、必ずしも思うような戦績を残せるかは分からないのだが、もし仮に、あのディープインパクトを父に持つこの「キズナ」という名の馬がここから無事に連勝街道を突き進むようなことになれば(そしてそれに合わせて武豊騎手の勝ち鞍も伸びてくるようなことになれば)、後々、この日のレースが、一種のターニングポイントとして語られることになるのは間違いないだろう・・・と思うところである。


なお、今回ばかりは福永騎手に、悲願のダービージョッキーの栄誉を取らせてあげたい。という思いの方が個人的には強かったのだけれど、名牝・シーザリオを母に持つエピファネイアは、皐月賞に続き2着。
キングヘイローを制御しきれずに惨敗した1998年のダービー以来、勝ち鞍は積み重ねながらも、「大一番に弱い」というレッテルだけはどうしてもはがせない福永騎手にとって、今回は、悲願のダービージョッキーの栄誉を手に入れる千載一遇のチャンスだっただけに、少し気の毒な結果となってしまった。

初夏の敗北が、馬も人も強くした例、というのは、枚挙にいとまがないだけに、ここは仕切り直してもう一度、期待したいところではあるのだけれど・・・

*1:元々武豊騎手の必勝パターンは、人気馬に乗って好位から抜け出す、というものだけに、こういう極端な脚質の馬で粘り切るのキツイだろうなぁ・・・と思っていたら、案の定、そのとおりになった。

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