突き破られた距離の壁。

昨秋のスプリンターズS、今春の高松宮杯と、芝1200mのG1を連勝し、“無敵のスプリンター”としての地位を不動のものとしていたロードカナロアが、1600mの安田記念も見事に制した。

ここ最近は傑出したマイラーがおらず、レースの度に主役が入れ替わっている、という状況は指摘されていたから、勝ち鞍が1200〜1400mに集中しているとはいえ、14戦9勝(2着4回、3着1回)という抜群の安定感を誇るロードカナロアが勝つ可能性は十分想定できたわけだが*1、約2年半ぶりのマイル戦にもかかわらず、中団後方から堂々の横綱相撲で差しきったこの馬の強さと距離万能ぶりは、想像以上のものだったように思う。

シルポートが作り出した流れが、マイル戦の中でも比較的速い方だった、とか、鞍上が名手・岩田康誠騎手だった、といった要素が、「府中マイル」という舞台で、馬の実力以上の力を引き出した可能性もないとはいえない。

だが、道中引っかかるそぶりすら見せずにしっかり折り合い、長い直線の最後に、後方で脚を溜めていたショウナンマイティに迫られても交わされることなくゴールした姿を見てしまうと、やっぱり違う何かを持っている馬、と評価せざるを得ないだろう。


・・・で、気になるのは、この馬の秋以降の路線である。

既に短距離G1を3連勝、ということで、秋のスプリンターズSマイルCSを狙って、前代未聞の「1シーズン短距離G1全制覇」を目標とする、というにも一つの道だろうが、個人的には、もう少し距離を伸ばして、「毎日王冠から秋の天皇賞」という王道路線を進む方が、面白いような気もするところ。

父・キングカメハメハだって、3歳時にはNHKマイルCからダービーまで、800mの距離の壁を一気に超えた*2、という実績があるわけだし、母父・Storm Catで走っている中距離、長距離馬は、今回2着に入ったショウナンマイティやダービー馬「キズナ」など、決して少なくはない。

なぜ、ロードカナロア、という馬が、短距離馬としての人生を歩み始めたのか、筆者には知るよしもないのだけれど、ファンに夢を与えるためにも、また、将来の種牡馬としての確固たる地位を築くためにも、ラストシーズンになる今年の秋は、思い切った勝負をしてほしいなぁ・・・と思うところである。

*1:そのため、当日もマイルG1で安定した実績を残しているグランプリボス以下を押しのけて、この馬が一番人気に支持されていた。

*2:キングカメハメハの場合、元々中距離路線を歩いていて、マイル戦の方が“他人の庭”的なところもあったのだが、マイルのG1に臨んでも、勝ち方は5馬身差つけての圧勝だった。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html