最悪の試合を最高の結果につなげるために。

気が付けばあっという間に、2014年W杯に向けたアジア最終予選も大詰めとなり、浦和スタジアムの大観衆の前で迎えたオーストラリア戦。

1試合多く消化しているとはいえ、今回の最終予選は、いつになく“楽勝”ムードで勝ち点を積み重ねてきた我らが日本代表のこと。
3位チームとの勝ち点、得失点差を考えれば、ここで負けてもまだまだ余裕はあるところだったし、強いて言えば、W杯に向けた大事な武者修行の場・コンフェデ杯に万全の状態で臨めるように、今日勝って決めてほしいなぁ・・・*1という程度の期待感でしかなかったのだが、それでもやっぱり、たまには要所で代表の試合をしっかり見たい、ということで、仕事を早めに切り上げて観戦してみたのだが・・・。

おいおい何だこりゃ・・・と嘆くこと90分。


オーストラリア、と言えば、2006年のドイツW杯での悪夢が未だ生々しい記憶に残っていたし、AFCに移ってきてからもしばらくは、“アジア最強のライバル”の形容詞がふさわしいチームだった*2

だが、この日、来日していたメンバーは平均年齢30歳超。
今野選手をはじめとする日本のDF陣が完璧に相手の攻め手を封じていた、ということもあるが、パスはつながらず、カウンターの精度もイマイチで、逆に日本の流れるようなパスワークにDF陣が翻弄される、という*3、かつてとは別人のようなチームになっていた。

大ベテランGK・シュワルツァーの再三の好セーブと、いわば“自滅”に近いようなゴール前の日本側の連携の悪さゆえに、辛うじてスコアの均衡は保たれていたものの、どう転んでも0-0以下の試合になるはずがない・・・そんな展開。
特に後半に入ってからは、相手の足も止まりかけ、外から内から、日本の攻撃陣が相手ペナルティエリアに怒涛の侵入。
絶好のポジションでFKを獲得するシーンも二度ほどあり、本田&香川の2枚看板が、普段通り落ち着いてプレーしていれば、2-0、3-0の点差がついても不思議ではないような状況だった。

なのに・・・

日本ベンチが、後半34分、突如として切った、FW・前田選手OUT DF・栗原選手IN、という選手交代のカードが運命を暗転させる。

試合翌日の朝刊では、

「引き分けでもW杯出場は決まるのだから日本も無理をする必要はなかった。しかしザッケローニ監督は79分に選手交代に出た。前田の代わりにCB栗原を投入。本田が前線に上がり、香川がトップ下に。空いた左MFには長友が一つ繰り上がった。」(日本経済新聞2013年6月5日付け朝刊・第37面)

という“攻めの交代”との解説も付されているが*4、普通に考えれば、“守備固め”と思われても不思議ではないチョイスなわけで*5、それを、圧倒的有利なはずのホームの試合で、スコアが0-0という状況で行われた、ということに自分は目を疑った。

そして、その直後、選手交代でバランスが崩れた右サイドをオーストラリアのオアー選手に崩された挙句、GK・川島選手が、クロスのつもりで打った、と思われるロングキックの目測を誤り、先制ゴールを許す・・・という悪夢。

残り時間が少なくなる中、泡を食ったベンチが、ハーフナー・マイク選手、清武選手を立て続けに投入するも、本来であれば、“明らかに手遅れ”という酷い采配だった。

同点PKのきっかけとなったCKの直前くらいで、見る気が失せてテレビを消したので、その晩、散々テレビで流れた“感動の”シーンを自分はリアルタイムでは見ていない。だが、仮に見ていても、これまでで一番後味が悪いW杯出場決定シーンだった、という事実は、何ら変わることがなかっただろう。


冷静に考えると、ホームの試合で出場を決定したのは今回が初めて、ということで、それゆえの見えないプレッシャーが選手にもベンチにものしかかっていたのかもしれない*6

それに「W杯予選」という試合の位置づけを考えるなら、試合展開なんかどうでもよくて、「勝ち点1」を取って、確実に出場を決めた、という結果だけで十分、という考え方もあるところだろう(確かに、それを言ったら、1997年のジョホール・バルの試合なんて、内容的には実に酷いものだった(笑))。

でも、“飽食”と言われようが何と言われようが、自分は、今の日本人サッカー選手のクオリティの高さは、「W杯に出られれば満足」というレベルのものでは到底ない、と思っているし、特に、現在の伸び悩んているアジアのレベルを考えれば、少なくともホームでは、目の覚めるような試合を繰り返してナンボ、だろう、と思っているので、この程度の試合で「よかったね」なんて、絶対に言いたくはない。

この日、選手たちも味わったであろう苦い思いが、最近何となくマンネリ化しつつあったA代表チームに刺激を与え、この先のコンフェデ杯での貴重な経験等と合わせて、2014年ブラジルの地で花開くための糧となる・・・自分はそう信じているし、そうでなければ、この日スタジアムに足を運んだ6万人超のサポーターも報われないだろう、と思うのである。


個人的には、来週のイラク戦で、口直しをしたいところではあるのだけれど・・・。

*1:そもそも、大陸代表が出場するコンフェデに最終予選の日程をかぶせてしまう・・・というあたりが、AFCらしいグダグダぶりを如実に表している。

*2:前回のW杯最終予選でも同組に入ったオーストラリアに対しては1敗1分。日本は勝ち点5の差を付けられて2位に甘んじている。

*3:大体、ニールとかブレッシアーノとかいったヒディング時代の選手たちでDFライン作っているのだから、今の日本のスピードについて行けるはずがない。

*4:もっとも、他紙では、むしろ右サイドの内田選手を攻撃参加させるための交代、という解説もなされていたりして、どうも実際のところははっきりしない。

*5:そもそも本田選手をトップに置いて戦った2010年W杯の日本代表が、“超守備的”戦術との評価を受けていたことを考えれば、本田選手をトップに持っていくこと自体が、攻撃的な選択肢ではない。

*6:ついでに言うと、ザッケローニ監督自身もクラブの監督としての実績はあっても、代表監督としてのキャリアはないので、これが文字通り初めての「W杯出場」ということになる。

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