東アジアカップから見えた光明。

ダイナスティカップから看板を掛け替え、今回で5回目を迎えるサッカーの東アジア杯。
ライバルは、韓国と、良くてせいぜい中国くらいしかない大会なのに*1、2度の地元開催を含め、なかなか優勝に手が届いていなかった日本が、かつての天敵・韓国のホームタウンで、逆転優勝を狙っていた相手を見事なまでに葬り去り、堂々の初優勝を飾った。

国際Aマッチデー」が充てられない東アジアのローカル連盟の大会、ということもあり、海外組は軒並み招集対象外。
そこを逆手にとって、「若手のセレクション大会」と位置付けてはみたものの、国際経験に乏しい選手たちだけで、果たしてどこまでできるのか、半信半疑で眺めていた人も多かっただろうし、初戦の中国戦、完全に“勝負あり”だったはずの試合で、不安定な守備を露呈し勝ち点3を逃した時点で、「このまま1つも勝てずに大会を追えるのでは?」という悪夢が胸をよぎった関係者もいたんじゃないかと思う。

だが、メンバー総入れ替えで臨んだオーストラリア戦で執念の勝ち点3を拾い、大一番となった最後の韓国戦でも堂々の勝利。
いずれの勝負も“紙一重”だったし、ベストメンバーで臨んでいない、というのは他国にも共通した事情だったとはいえ、本田も香川も遠藤もいないチームで、既にW杯出場を決めているアジアの同輩チームに競り勝ったことの意味は格別に大きい。

さらに言えば、「勝負」だけではなく、「育成」という観点から結果を出せたことも、特筆すべきことだったのではなかろうか。

個人的には、韓国戦が始まる前、昼間の再放送で見たオーストラリア戦の内容が、先週の選挙速報の最中に見た中国戦のそれと比べて格段に良かった、ということもあり、最後の試合も同じメンバーで行くものだと勝手に思っていたのだが、蓋を開けてみれば、フィールドに登場したのは、第1戦と全く同じ11人。
そして、彼らの動きは、格下相手にいいようにやられてしまった1週間前に比べると、格段に良くなっていた・・・。

消耗が激しい真夏の大会、ということを考えると、疲労を考慮して、という側面も当然あったのだろうが、それでも、比較的守備が安定していて*2斎藤学大迫勇也、といったテクニックのある若手がテンポ良く攻める第2戦のメンバーをそのまま使っておけば、韓国戦も最初からもっと楽な試合になったんじゃないか、という気はする。

でも、そこで、屈辱の3失点を喫した初戦のメンバーに、汚名返上の機会を与えたのがザック流と言えば、ザック流。

決めるべきところできっちり決めた柿谷選手*3はもちろんのこと、果敢なドリブルシュートで決勝点を9割方おぜん立てした原口元気選手や、中盤の引き締めに貢献した森重選手、山口螢選手など、2度目のチャンスのおかげで、緊張感から解き放たれてようやく本領を発揮できた選手も多かったように思う。


一年前の五輪のメンバーが、必ずしも順調に今回のメンバーへとステップアップしていない*4、という問題はあるし、今回活躍した選手たちの多くは、A代表で“今が華”とばかりに活躍している選手と概してポジションが被る、という点も、今後につながるかどうか、という今大会の評価をややもすると微妙にしがちな現実、と言えるのかもしれないけれど*5、これまで“代表級”とは評されど、なかなか実績を積むことができなかった選手たちが、とにもかくにも結果を出した、という事実には、やっぱりプライスレスな価値がある。

この先、プラジルでの本番までの間に、A代表としての試合をどれだけこなすことができるのか、は分からないけど、今日のメンバーがちょっとずつでも“リアルA代表”のメンバーに入り、ブラジルの地を踏むところまで行けるのであれば、日本サッカーの未来も明るいのかなぁ・・・と何となく思っているところである。

*1:今大会からはオーストラリアもゲスト参加するようになって、ちょっと骨っぽい大会になってきたようだけど。

*2:特に、GK・権田、DF・徳永悠平ボランチ高橋秀人といったFC東京組が手堅い仕事をしていたので、選手交代の混乱等であたふたし始めるまでの時間帯は、比較的安心してみていられた。

*3:最後の得点を決めた瞬間などは、単にテクニックに長けているだけでなく、ハートも強いなぁ・・・と感心させられる素晴らしさだった。

*4:一部の選手が海外にわたったこともあるが・・・。

*5:逆に言えば、A代表のレギュラー陣にすら不安定さが指摘されているDF面については、今大会を通じても、明確な改善に向けた処方箋は示せなかったように思う。

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