あれから8年。

このブログに初めてのエントリーをアップした日付は、2005年8月4日。
つまり、今日は、開設から8周年を迎える日、ということになる。

当時は、ちょうど「ブログ」という言葉が市民権を得るようになってきて、今FBのアカウントを取るのと同じくらいの感覚で、気軽に自分のブログを開設する人が多かった時代である。そして、業界的には、法科大学院生や法学部生から一部の弁護士、学者の先生方まで、自分のブログで日常を綴る方が決して少なくはなかったから、自分もそんな状況の中で、本当に軽い気持ちで書き始めたものだった。

だが、書き始めてすぐ、自分の「日常」をどんなに頑張って膨らましたところで、所詮は平凡なサラリーマン。
書けることには限界がある(ゆえに毎日書き続けるネタなどない)ってことにすぐ気付く。

また、「企業法務」というフレーズをタイトルに掲げていながら、当時の自分は法務部門の中核にいたわけではなかった。
むしろ、早く自分の会社の「企業法務」のど真ん中で仕事をしたい・・・という願望を込めて付けたのがこのタイトルだから、「法務はどうあるべきか」的なことを書こうとしても、どうしても“理想像”を追いかけてしまうことになってしまう。
それゆえ、これを前面に押し出した場合には、学生向けの啓発エントリーにはなるかもしれないが、現にバリバリ法務のど真ん中で仕事をしている人から、どう見られるか、というところに、かなりの不安があった。

そんな中で、数少ない自分が書けるネタかもしれないなぁ・・・と思ったのが、当時、ネット上で日増しに関心が高まっていた知的財産権(特に著作権、商標)に関する話題で、特に、ある話題が投じられた時のメディアの報道やネット上の反応のなかに、当時、一応は専門的な勉強の過程を終えてからまだそんなに日が経っておらず、しかも、知財関係法務の実務も一通り回せるようになって来ていた自分に違和感を抱かせるようなものが散見されたことが、自分の“何とかしなきゃ”魂に火を付けたところはある*1

そして、開設して間もない時期に訪れた“のまねこ”騒動*2が、この路線を決定的なものにした。

そのうちに、自分のブログが検索サイトで比較的表示されやすい、ということに気づき、細々とプライベートで行っていた知財判例のコレクションを、“覚え書”代わりに書いておくと便利なぁ・・・と思ったことが、“二本目の柱”になり、それ以降、多少趣向は変え、取り扱う法務系のネタのジャンルも広げてはいるが、基本的な路線は、ほぼ同じままでやっている*3

「名刺代わり」なんて、大それたことは考えたこともないから、未だに完全匿名のスタンスは変えていないし、時折、好き勝手に毒も吐く*4。それゆえ、いくら一生懸命書いても得られる実益は少ないし、一方で、書けば書く程、潜在的なアンチファンは増えていく・・・。

それでも、無事「8周年」という節目まで来ることができたのは、大した欲もなく気軽に始めて、誰に媚びるでもなく、自分の素朴な問題意識を投下することだけを考えてやってきたこと、そして、ちょっとだけ面の皮が厚かったから、なのかな、と思うところ*5


ちなみに、8年、というのは物凄く長い時間なわけで*6、あれから職場も仕事の中身*7も何度か変わっている。

「開設3年」を振り返った2008年の時ですら、“もうずいぶん経ったなぁ・・・”という思いが、エントリーからあふれているのだが*8、その数か月後に、思いもかけない運命の悪戯があって、その波にどっぷりつかっているうちに、あっという間に、あの時の倍近い時間が経ってしまったことになる。

あの頃、認知度的には決して高いものではなかった「法務部門」のお仕事も、不思議な“コンプライアンス”ブームの到来等もあって、今では一部の業種にとどまらず、それなりの裾野にまで広がってきたような気がするし*9、積極的な情報発信を志向する業界関係者も、相当増えてきたように思う*10

欲を言えば、もうちょっと自分なりの味付けと掘り下げをして情報発信してくれる人が増えるといいなぁ・・・という思いはあるのだが*11、筆者自身、ここ数年は、頻繁な更新もなかなかままならない状況だし、今までここで細々と発信していたことを、それなりに重みのある場で、おそるおそるながらもストレートに発言することがボチボチできるような立場になってきたこともあり、“このブログも、もうお役御免かな(笑)”と思ったことは、一度や二度ではない。

ただやっぱり、日常の仕事の中で、あるいは、ややもすると閉鎖的になりがちな“専門家集団”や“中の人たちの集まり”の空気に触れるたびに、まだここで出来ることがあるんじゃないか・・・という思いに駆られることはあるわけで、それが今日まで細々ながらも、このブログを未だに続けている理由。

この先の8年は、おそらく、これまでの8年間以上に、大きな変化が待ち構えている(おそらくこの先「企業法務」の世界に身を置くのも、そう長い期間ではない)のは間違いない、と思っているのだが、そんな荒波の中でも、できるなら、自分がこのブログを始めた時の原点を見失うことなく日々に臨めるように、もう少し*12、この場は維持していきたいと考えている。


・・・ということで、8年前からこのブログをご覧いただいている読者の皆様も、最近ご覧になり始めたばかりの読者の皆様も、今日初めてここを訪れた方も、もう少しだけお付き合いください。

*1:誤った情報や、特定のバイアスがかかった情報が世の中に流布されて、それに多くの人が影響を受けているような状態なのに、専門家集団の中で眉をひそめるだけで、見て見ぬふりをする(少なくとも公の場できちんとした解説をしない)というのは、当時の自分には耐えられなかった。若気の至り、と言えばそれまでだが、基本的な精神は、今でもそんなに変わっていない、と自分は思っている。

*2:あの事件はこのブログの方向性を事実上決めた、という点で、事案としては全く無関係の自分にとっても非常にエポックメーキングな出来事だったと思う。

*3:時々良く分からない“ひとり言”だとか、スポーツ関係のネタを混ぜるところも、初期からほとんど変わっていない。

*4:辛口ですね、とか、毒舌ですね、とかよく言われるのだけど、自分にとっては普段通りなので、その自覚はあまりないのだけれど、皆がそういうなら、そういうことにしておこう・・・。

*5:何度か大量のブクマが付いて、炎上に近い状態になったことはあるけど、自分としては、自分の書いたものをネタに勝手に盛り上がってくれるのであれば、それはそれで(肯定的な評価だろうがそうでなかろうが)良いことだと思っているし、「他人はあくまで他人」だから、自分がそれなりの意図をもって投じた説明なり意見なりが理解されないのであれば、それはそれでしょうがないことだと思っているので、そこで一喜一憂しても仕方ないのかな、と。

*6:だって、ブログ開始の時から8年さかのぼると、まだ正真正銘の学生ですよ自分・・・(苦笑)。

*7:法務のカテゴリーに属する仕事であることに変わりはないが、細かいところでは結構変わった。特に開設したころにどっぷりやっていた知財の仕事の比重は、かなり下がった。

*8:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080806/1218206552

*9:ただし、そのことが、「法務」担当者が本来やるべき仕事を増やすことに繋がっているか、と言えば、必ずしも肯定できないところがあるように思われる。この点については、おって稿を改めることにしたい。

*10:ブログを開設する弁護士、弁理士が格段に増えたのと、ここ数年、SNSで「法務」を名乗る人がかなり目立つようになった気がする。

*11:「顔を出す」タイプの媒体では、セルフプロデュースの方が先に立っているような気がするし、匿名の媒体(特にSNS)では、垂れ流し系と脊髄反射的リアクション系が何となく目立ってしまうのが残念なところ。

*12:この「もう少し」が1ヶ月なのか、3年なのか、10年なのか、それ以上なのか・・・ということは、今の時点では何とも言えません(笑)。

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