“自炊代行”地裁判決への大きな失望

最近、いろんな裁判例を眺めても、なかなかこのブログで取り上げよう、という意欲がわかず、棚上げ状態にすることが多かったのだが、久しぶりにエキサイトさせてくれるような判決が登場したので、ここは迷わず書くことにする。

昨日午後、第一報があちこちのニュースで配信され、今朝の朝刊で比較的大きめに取り上げられていた、「自炊代行」訴訟。

「顧客からの依頼で本や雑誌の内容をスキャナーで読み取り、電子データ化する「自炊代行」の適否が争われた訴訟の判決で、東京地裁大須賀滋裁判長)は30日、「著作権法で認められた私的複製には当たらない」との判断を示した。その上で、東京都内の代行業者2社による著作権(複製権)侵害を認め、複製の差し止めと計140万円の損害賠償を命じた。」(日本経済新聞2013年10月1日付け朝刊・第42面)

この件で、著作権者側が地裁に訴訟を提起した2年前、自分はある種の期待を込めたエントリーを書いたのだが*1、いざ判決が出て、著作権者勝訴の報に接したときは、“やっぱり・・・”という思いの方が強かった。

だから、あとは、“自炊代行”をめぐっていろいろと吹き出していた論点に裁判所がどのような判断を示したのか、という点だけが関心事だったのだが、今日アップされた判決に目を通してみたら、「・・・」と唖然。

立場や考え方によって、受け止め方は様々だと思うが、以下、比較的丁寧めにご紹介するつもりなので、読まれた方はどこかでご感想を呟いていただければ幸いである。

東京地判平成25年9月30日(平成24年(ワ)第33525号)*2

原告:X1〜X7(小説家、漫画家、漫画原作者
被告:株式会社サンドリーム及びY1(代表取締役
   有限会社ドライバレッジジャパン及びY2(取締役)

経緯としては、以前当ブログでもご紹介した、平成23年9月5日付けの原告らを含む作家122名と出版社7社の質問書に遡る*3

被告サンドリーム(「ヒルズスキャン24」の名称でサービスを展開*4)は、この質問書に対する回答を拒否し、さらにその後に出された平成23年10月17日付けの質問書兼警告書に対しても回答しなかった。
また、もう一方の被告、ドライバレッジ(「スキャポン」の名称でサービスを展開*5は、平成23年9月5日付け質問書に対し、同月15日付けの回答書で「作家122名の作品について、利用者の依頼があってもスキャン事業を行うことがない」旨を回答したものの、平成24年7月31日に原告ら代理人である前田哲男弁護士が調査会社に依頼して行った一種の“おとり調査”*6に引っかかり、本件訴訟の標的となるに至った。

これらの事業者が行っている「自炊代行」サービスは、

「会員から送付された書籍を裁断した上で、スキャナーで読み取って電子ファイルを作成し、その後、DVD等の媒体に入れて書籍を送付してきた会員に対し送付する」

という点で共通する(17〜19頁参照)。

そして、このようなサービスに対して、原告らが、著作権法112条1項に基づく差止請求、及び不法行為に基づく弁護士費用相当額の損害賠償(両被告にそれぞれ原告1名につき21万円を請求している)を行ったのに対し、被告らが、

(1)「複製」の不存在
(2)被告らの行為は、私的使用のための複製の補助として適法である
(3)差止請求が権利濫用にあたる

という反論を行ったのが、本件の争いの構図であった。

「複製」概念をめぐる争いについて

さて、ここから先は被告らの反論の内容について、一つひとつ見ていくことにするが、個人的には、被告ドライバレッジが行った「『複製』の不存在」という主張は、少々無理があったのではないかと思っている。

ドライバレッジは、

「複製」といえるためには,オリジナル又は複製物に格納された情報を格納する媒体を有形的に再製することに加え,当該再製行為により複製物の数を増加させることが必要である。けだし,当該再製行為により複製物の数が増加しない場合(情報と媒体の1対1の関係が維持される場合)には,市場に流通する複製物の数は不変であり,著作者の経済的利益を害することがないからである。言い換えれば,「有形的再製」に伴い,その対象であるオリジナル又は複製物が廃棄される場合には,当該再製行為により複製物の数が増加しないのであるから,当該「有形的再製」は「複製」には該当しない。」(強調筆者、以下同じ)

という規範を打ち立てた上で、自己の提供するサービスについて、

「これを本件について見ると,本件訴訟において問題となっている小説及び漫画に関する限り,「スキャポン・サービス」(被告ドライバレッジのスキャン事業)においては,複製物である書籍を裁断し,そこに格納された情報をスキャニングにより電子化して電子データに置換した上,原則として裁断本を廃棄するものであって,その過程全体において,複製物の数が増加するものではないから,「複製」行為は存在しない。 」(以上8頁)

というあてはめを行っており、これ自体は非常にユニークな着想だと思うのだが、実質的な主張の妥当性はともかく、「複製」概念の解釈論として上記のような主張をするのは、従来の通説的見解に照らせば、いささか厳しい主張だと言わざるを得ないだろう。

また、そもそも、裁断後の書籍をどうするか、という点について、判決では明確には認定されていない。
被告ドライバレッジは、自らのサービスに関し、「原則として裁断本を廃棄する」という主張も行なっているのだが(8頁)、前記のとおり、“おとり調査”に対して裁断済み書籍の返送、という行為を行ってしまっているゆえに、説得力を欠いている感がある*7

電子ファイルを作成した上に、さらに裁断済みの書籍まで会員の手元に戻るタイプのサービスが提供されているとするならば、被告の主張によっても「流通する複製物の数は不変」とまでは言えないのであり、ここは被告側にとってはかなり苦しい主張だったのではなかろうか。

結果として、判決においても、

著作権法21条は,「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」と規定し,著作権者が著作物を複製する排他的な権利を
有することを定めている。その趣旨は,複製(有形的再製)によって著作物の複製物が作成されると,これが反復して利用される可能性・蓋然性があるから,著作物の複製(有形的再製)それ自体を著作権者の排他的な権利としたものと解される。そうすると,著作権法上の「複製」は,有形的再製それ自体をいうのであり,有形的再製後の著作物及び複製物の個数によって複製の有無が左右されるものではないから,被告ドライバレッジらの主張は採用できない。」 (24頁)

とあっさりドライバレッジの主張が退けられており、この点については特に大きな違和感はない。

「私的使用のための複製の補助」としての適法性について

問題は、あとに続くこの論点である。

被告サンドリームの主張が、「手足論」をベースにした以下のようなものである一方、

著作権法30条1項は,個人的等の限られた範囲内において使用することを目的とする複製を認めており,被告サンドリームは,その使用者のために,その者の指示に従い,手足として補助者的立場で電子データ化を行っており,基本的に同項の範囲内を逸脱していない。書籍の所有者が,既に所有している本を個人的に読むことを目的としており,書籍の著作権者に,実質的な意味での権利侵害や実損害は存在しないからである。」(9頁)

被告ドライバレッジの主張は、

著作権法30条1項の「使用する者が複製する」とは,使用者自身が物理的に自ら複製する場合だけではなく,「補助者による複製」をも含むべきである。けだし,主体性の判断の際には,物理的な行為を行う者ではなく,「複製」に向けての因果の流れを開始し支配している者が「複製」の「主体」と判断されるべきであるし,「複製の自由」が書籍の所有権に由来するものであることに照らしても,書籍の所有者が複製の主体であるというべきだからである。そして,各種業務のアウトソース化が拡大した今日においては,「補助者」には,秘書や事務員のように使用者の業務を日常的に補助している者に限定されず,「複製」のみを業務として委託される「業者」をも含むというべきである。」
「これを本件についてみると,被告ドライバレッジは,ユーザーから書籍を送付してもらい(所有権の移転はない),その依頼に応じて市販の裁断機を利用して書籍を裁断し,スキャナーを利用してスキャンを行い,生成されたデジタルデータをユーザーに納品している。しかも,その単価は他の業者よりも高額であり,電子データ及び裁断本の販売も行っていない。さらに,被告ドライバレッジの顧客は,医者・弁護士等の専門家であり,当該専門家の情報へのアクセスを容易にするため専門書の電子化を図ることは社会的に有用である(多忙な専門家に「自炊」を強いることは社会的コストが高すぎる)。以上の点を総合的に考慮すれば,規範的にみて,スキャン等の行為の主体はユーザーであって,被告ドライバレッジでないことは明らかである。」(9〜11頁)

と、政策的考慮も加味した上で、規範的主体認定を行うべき、というものになっており、若干主張のトーンは異なるものの、いずれも理屈としては一本筋が通ったものだと言えるだろう。

そして、このような立論は、当ブログで以前自分が書いた試論(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20111020/1319136012)とも共通するところがあるし、今年の著作権法学会の発表等を聞いていても、私的使用の「主体」をより規範的に拡大して解釈しようとする動きは、決してマイナーなものではなくなりつつあるように思われただけに、結論が著作権者/代行業者のいずれに傾くとしても、最近いろいろと注目されている著作権法30条1項の解釈に、裁判所が初めて(?)本格的に踏み込む事例として、その判断が注目されるところであった。

ところが、東京地裁は、「複製の主体」の判断に際して、以下のような理屈を用い、複製の主体を被告ら法人、と認定することで、完膚なきまでに、上記のような立論を葬り去ってしまったのである。

「 (ア) 著作権法2条1項15号は,「複製」について,「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義している。この有形的再製を実現するために,複数の段階からなる一連の行為が行われる場合があり,そのような場合には,有形的結果の発生に関与した複数の者のうち,誰を複製の主体とみるかという問題が生じる。」
この問題については,複製の実現における枢要な行為をした者は誰かという見地から検討するのが相当であり,枢要な行為及びその主体については,個々の事案において,複製の対象,方法,複製物への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して判断するのが相当である(最高裁平成21年(受)第788号同23年1月20日第一小法廷判決・民集65巻1号399頁参照)。」
「本件における複製は,上記(1)ア及びイで認定したとおり,(1)利用者が法人被告らに書籍の電子ファイル化を申し込む,(2)利用者は,法人被告らに書籍を送付する,(3)法人被告らは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,(4)法人被告らは,裁断した書籍を法人被告らが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,(5)完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過によって実現される。この一連の経過において,複製の対象は利用者が保有する書籍であり,複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らが管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化するというものである。電子ファイル化により有形的再製が完成するまでの利用者と法人被告らの関与の内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付するのは利用者であるが,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら法人被告らであり,利用者は同作業には全く関与していない。」
「以上のとおり,本件における複製は,書籍を電子ファイル化するという点に特色があり,電子ファイル化の作業が複製における枢要な行為というべきであるところ,その枢要な行為をしているのは,法人被告らであって,利用者ではない。したがって,法人被告らを複製の主体と認めるのが相当である。」(以上、21〜22頁)

最一小判平成23年1月20日、といえば、言わずもがなの悪名高き「ロクラク2」事件の上告審判決である。

そして、あの時、散々っぱら批判にさらされ、同事件の差戻し審判決を書いた知財高裁(飯村コート)ですら、一言もその文言を使わなかった「枢要な行為」が、ここで亡霊のごとく蘇るとは・・・。

さすがにこれだけでは収まらない、と思ったのであろう。東京地裁判決では、進んで、被告らの主張に応答しているのであるが、その内容がまたすごい。

「確かに,法人被告らは,利用者からの発注を受けて書籍を電子ファイル化し,これを利用者に納品するのであるから,利用者が因果の流れを支配しているようにもみえる。しかし,本件において,書籍を電子ファイル化するに当たっては,書籍を裁断し,裁断した頁をスキャナーで読み取り,電子ファイル化したデータを点検する等の作業が必要となるのであって,一般の書籍購読者が自ら,これらの設備を準備し,具体的な作業をすることは,設備の費用負担や労力・技術の面において困難を伴うものと考えられる。」
「このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならば,抽象的には利用者が因果の流れを支配しているようにみえるとしても,有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下にあるとみられるのであって,複製における枢要な行為を法人被告らが行っているとみるのが相当である。」
「また,被告らは,法人被告らが補助者にすぎないと主張する。利用者がその手足として他の者を利用して複製を行う場合に,「その使用する者が複製する」と評価できる場合もあるであろうが,そのためには,具体的事情の下において,手足とされるものの行為が複製のための枢要な行為であって,その枢要な行為が利用者の管理下にあるとみられることが必要である。本件においては,上記のとおり,法人被告らは利用者の手足として利用者の管理下で複製しているとみることはできないのであるから,利用者が法人被告らを手足として自ら複製を行ったものと評価することはできない。」(23〜24頁)

前半は、MYUTA判決を彷彿させるような判示になっているし、後半は「手足論」にまで「枢要な行為」を重ねて持ち込む、という周到というか、しつこいくらいの判示である。

以前のエントリーでも書いたように*8、自分は「ロクラク2」判決が打ち立てようとした法理とそれに対する金築判事の補足意見から伝わってくる考え方自体には、決して全面的にネガティブな印象を持っているわけではない。

著作権の利用主体の認定に際して、“カラオケ法理”の管理・支配、利益帰属の2要件に固執することなく、「社会的、経済的側面をも含め総合的に観察すべき」という発想自体は、方向性としては間違っていないし、「枢要な行為」という文言にしても、そういう文脈で捉えるのであれば、一応は理解できるところである。

だが、本件判決では、そのような「社会的、経済的側面」に対する考慮が十分になされているようには読めず、あくまでサービスの流れを物理的に見た時に、「スキャナーで読み込んで電子ファイル化する」という行為が「枢要」だ、と言っているに過ぎないように思われる。

元を辿れば、前記「ロクラク2」事件の最高裁判決の“あてはめ”段階で、既に「物理的、自然的観察でも行ける!」(金築補足意見参照)という価値判断に立ち、「放送を受信して複製機器に入力する」という極めてベタな行為を「枢要な行為」と認定してしまった、という前例があるわけで、それが全ての元凶だと言えなくもない*9

だが、利用者が「放送番組を転送して好きな番組を録画する」ということ以上の意思を持たず、放送の受信や転送に係るシステムの構築や機器の製造・調達等については全て事業者に委ねられていた「ロクラク2」とは異なり、今回の自炊代行は、どこにでもあるような裁断機と、どこにでもあるようなスキャナーを使って、特定の書籍を送付してきた会員の指示に忠実に従った作業を事業者が遂行した、という話であり*10、ユーザー(会員)との関係も含めて、判断の基礎となる事情は大きく異なるはずである。

そして、「ロクラク2」以前の事案では、

「実際に複製物作成のための操作を行っているのは個人だが、規範的に考えると事業者が(も)利用主体にあたる」

という理屈で、散々サービス提供事業者に著作権侵害の責めを負わせてきた裁判所が、こと今回の場面では、

「(コンテンツを自ら用意したわけでも、提供したわけでもない)事業者が、(世の中どこにでもある裁断機とスキャナーを使って)作業をしたことをもって、利用主体に当たる」

という評価に切り替えるのはかなり違和感があり、著作権者に有利な結論を導くための恣意的な解釈操作、と疑われても、決して不思議ではないように思われる。

密かに期待していた著作権法第30条第1項の沿革や立法趣旨に遡った判断が示されなかったのは、おそらく当事者の主張の内容や構成によるところが大きいのだろうから、そこはやむを得ないと思うのだが、「枢要な行為」というマジックワードをこね回す前に、せめて、「社会的、経済的に」観察して、「自分の手元にある本を電子ファイルに置き換えるだけ」という行為を、契約に基づいて淡々と遂行するだけの事業者がどのように評価されるべきなのか、ということくらいは、裁判所として回答を示せなかったのか・・・

極めて残念でならない。

権利濫用の主張について

さて、最後の「権利濫用」の主張については、さすがにタイトルを見ただけでダメだろう、と思うところで、実際、裁判所はにべもなく、わずか4行でこの主張を退けている(27頁)。

ただ、被告側のこの争点に関する以下の主張のうち、対価還元スキームの構築を優先すべき、という主張については、(訴訟上の主張としてまっとうか、という点はともかく)政策論、立法論としては理解できるところで、「Myブック変換協議会」(http://www.mybook-digital.jp/)等による業界ソフトロー構築の動きもある中、「まず「侵害」の結論を!」と言わんばかりに、判決を得た著作権側のスタンスについては、いろいろと思うところはある*11

「(ア) 書籍については,明治初期(1880年代)から古本売買という商取引が行われ,その場合,著作権者には対価が全く還元されない。年間1300億円超とも言われる古本の流通量との比較から考えると,私的使用を前提とするスキャン代行の規模自体は微々たるものである。また,かつては,レンタルレコード(CD)やコピー業者をめぐり,権利者への対価支払が業界的に制度化されてきた経緯もある。その意味では,スキャン代行は,対価支払制度の将来の実現に向けた模索的,過渡的,価値不確定な段階という評価もできる。そこで,著作権者への対価還元の仕組みを作ることは,著作権者側にとっても,本の所有者を含めたスキャンを行う側にとっても,有益なことである。例えば,日本複写機センターや出版社著作権管理機構(JCOPY)その他の事業者がスキャンを対象とし,包括契約を結んでいる著作物のスキャン代行を一度に申し込めるようにする仕組みはどうかという提案意見もある。」
「 (イ) 以上のとおり,本件は,法的に見ても,社会的に見ても,評価や将来の制度設計について多様な意見があり得る問題といえる。そのような問題について,原告らが,権利侵害行為や損害の具体的な主張立証もなしに,本の所有者「本人」がスキャンしているわけではないという一事をもって,あたかもすべてのスキャン代行行為やスキャン代行業者が一律に「社会悪」であるかのような請求を行うことは,仮にスキャン代行が私的使用に該当しないと判断される場合であっても,権利の濫用に該当する。」(12〜13頁)

今後に向けての期待

この判決を受けて、原告サイドでは早速、強気の勝ち名乗りを挙げている*12

ただ、その一方で、被告ドライバレッジ(スキャポン)のサイトでも、負けじと短い文章ながら、「控訴する方針」が示されている*13

できることなら、知財高裁でもう一度じっくりと、「ロクラク2」判決の上っ面を当てはめるだけで結論を出していいのか、同じ結論を出すにしても、もう少し深いところまで全体的に考察した上で判決を書くべきではないか、ということを審理していただけないものか、と思う。

そして、いわゆる「電子書籍」や「紙媒体の大衆書籍」とは競合しない専門書等の分野で、スキャン代行をお願いしたい、というニーズ等も世の中にはある以上、白黒はっきりつける前に、対価還元等のスキームを構築することで何とか対処することができないか、という点についても、是非、審理の中で模索していただけないものか、と思うところである。

いずれにしても、今回の地裁判決は、突っ込みどころ満載の判決だと思うだけに、判決を受けての議論と、それを踏まえた更なる攻防の進化に、もう少しだけ期待してみることにしたい。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20111221/1324661043

*2:第29部・大須賀滋裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20131001115316.pdf

*3:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20110906/1315415967

*4:http://www.scan24hr-tokyo.com/

*5:http://www.scapon.jp/

*6:具体的に認定されているのは、スキャン事業での利用を許諾していない作家の作品である「部長島耕作」(全13巻)と「沈黙の艦隊」(全32巻)のスキャンを申し込み、PDFファイルを収録したDVDの納品と、裁断済み書籍の返送を受けた、というもの。

*7:ちなみに、サンドリームの方は「そもそも原告らの書籍に対するスキャンサービスは提供していない」というスタンスで反論しているため、スキャンサービスの内容に踏み込んだこの種の主張は行っていないようである。

*8:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20110124/1295795815

*9:ちなみに、判決当時は、判旨部分に「・・・場合には」という限定が付いていることをもって、ロクラク2判決の射程が限定される、という評価をする識者も多かったのだが、全く場面が異なる“自炊”の世界にまで、「枢要な行為」論が進出してきた今となっては、そのような評価は楽観的に過ぎたように思えてならない・・・。

*10:判決の中では、データの点検等の作業の労力が強調されているが、親子間で番組を転送できる機器をわざわざ自主製造して販売していたロクラク2事件の被告会社に比べれば、大した労力ではない、という見方もできる。

*11:もちろん、ここで原告側が反論しているとおり「異論の存在故に法律上の権利行使が権利濫用とされてしまうのならば、民事訴訟制度など成り立たないであろう」(13頁)という主張も十分理解しているつもりではあるが、「差し止め+差し止め訴訟に係る弁護士費用(結局、認容されたのは1名につき各被告10万円ずつ)」のみで請求を立てている、というところに、本件訴訟の“象徴的意味合い”を見てとることができるのであって(要するに、実質的損害がない、か、あるいは立証することが極めて難しいレベルの状況でしかないにもかかわらず、一種のイメージ戦略として、一部の業者を狙い撃ちした訴訟を起こした、という見方もできるということである)、著作権者側でも、もう少し議論の帰趨を見守る、という穏当なやり方はできなかったのか、という疑問は感じるところである。

*12:講談社のプレスリリース:http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/hanketsu.pdfなど。

*13:http://www.scapon.jp/pdf/%E8%87%AA%E7%82%8A%E4%BB%A3%E8%A1%8C%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E5%88%A4%E6%B1%BA%E3%82%92%E5%8F%97%E3%81%91%E3%81%A6.pdf