調査と検証を繰り返して行き着く先は・・・

様々な意味で教訓的だった「蒼国来」の“無罪”事件*1

残念ながら当の本人は、約2年のブランクがあまりに大きかったようで、復帰した場所で負け越して十両に転落、さらに東十両筆頭で迎えた秋場所でも大きく負け越してしまい、せっかくの勝訴も、なかなか結果にはつながっていない。

人に対する「処分」をひとたび誤ってしまうと、後日、仮に見かけ上は地位を取り戻せたとしても、人生の中身が大きく変わってしまうこともある・・・、そんな当たり前のことを改めて思い知らされた感じがする。

そんな中、また新たな衝撃が一つ。

「2011年の大相撲八百長問題を巡り、蒼国来が幕内力士としての地位確認を求めた訴訟で解雇無効判決が出た問題で、日本相撲協会の危機管理委員会が3日、当時の調査には不備があり、解雇処分は誤りだったとする検証報告書を発表した。」
調査に当たった弁護士が机をたたくなど脅迫的な言動をとっていたことや、証言の録音をとっていないなどの調査方法についても問題視した」(日本経済新聞2013年10月4日付け朝刊・第39面、強調筆者)

いわゆる「第三者委員会」が行った調査の内容を、同じ組織内の別の委員会がわざわざ事後調査してひっくり返す、というのは非常に珍しいことだと思う*2

しかも、この危機委員会の委員長は検察庁出身の宗像紀夫氏のようで、「元検事」率いる委員会が、「弁護士」の行なった取調べ手法を問題視する、というのも、何ともシュールな話である*3

もちろん、過去の処分が裁判で無効となった、ということが、今回の“再調査”の大きなきっかけとなったのは間違いないところだが、処分当時の相撲協会の体制と、再び北の湖理事長が戻った今の相撲協会の体制の違い等々、背景には、少々政治的な動機も絡んでいるように思われるし、当時の放駒元理事長や特別調査委員会のメンバーが、

「聞き取り要請に応じなかった」

と報じられていることなどから*4、どんよりとした後味の悪さが残る。

力士人生を左右するような重大な処分をめぐる問題なのだから*5、調査が念入りに行われるべきなのは当然のこと、とはいえ、既に判決が出て、処分無効が確定している一件について、あえて事後検証し、「特別調査委員会の調査、判断手法」をあえて糾弾することにどれだけの意味があるのか、と言えば、疑わしいところもある。

まさか、「危機管理委員会の調査報告に対する特別調査委員会」が立って、三度調査が行われるようなことは決してないと信じたいが、まだまだ人気回復途上の相撲界が、これ以上の恥を晒すことがないように・・・ということだけは、強く願っている。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20130404/1365356756

*2:オリンパスの事件の際のように、問題が明るみに出たがゆえに、過去の第三者委員会が水面下で処理していた内容を検証して糾弾する、ということは珍しくないが、本件のように、先の調査自体が公になっている場合に、改めてひっくり返す、というのは、あまり聞いたことはない。

*3:あまりにベタなメディア的切り口になってしまうかもしれないが・・・。

*4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131003-00000096-mai-spo

*5:個人的には「八百長」という行為に、そこまでの重みを持たせてしまったこと自体が間違いだと思っているが、これについては別稿に譲る。

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