そしてまた悲劇は繰り返される。

2年続けて挑んだ昨年の凱旋門賞2着馬・オルフェーヴルと、父・ディープインパクトの無念を晴らすべくロンシャンの地に降り立ったダービー馬・キズナ

前年のレースが、まさに“扉に手が届いた”感じの悔しすぎる負け方だった上に*1、今年の出走馬がいずれも古馬・3歳馬を代表する“役者”だったこと、さらに両馬とも前哨戦とされるフォア賞、ニエル賞で堂々の勝利を収めたこともあって、専門誌も含めて、各メディアの期待感は、この上なく高まっていたように思う。


冷静に考えれば、昨年、「4歳」という競走馬としてはピークの年齢で挑んだオルフェーヴルが、今年再び凱旋門賞に挑んだこと自体、ある種の奇跡のようなものだし、過去20年間のうち1頭の例外を除いて、3歳、4歳の馬が優勝馬の欄に名を連ねるこのレースにおいて、“2年連続参戦”という事情は、決して有利に働くものではない*2。ましてや国内壮行レースとなった宝塚記念を肺出血で回避した、という臨戦過程を考えれば、本来多くを期待してはいけなかったはずだ。

キズナにしても、全く死角なくダービー馬の地位に上り詰めた馬、というわけではない。弥生賞で一頓挫した後、重賞を連勝してダービーを制したあたり、只者ではないのは確かだが、過去にこのレースに挑戦した日本馬たちのように、同世代にもはや敵なし、後は世界だけ・・・というほどのオーラはまだない。、

例年同様、欧州の有力古馬たちが直前になって次々と回避し、現地のオッズでも日本馬が上位を占める状況になった、という事実をもってしても、我々はまだ疑ってかかるべきだったのだ・・・


期待に胸を膨らませた後にやってくる“失望”ほど、活力をそぐものはない。

素人がテレビ画面を眺めているだけでわかるくらいの超スローな流れの中で、馬群からの脱出に苦しんだオルフェーブルが、最後の直線でようやく障害となる馬を捌き切った時には、既に時遅し。
軽い斤量を生かして、出し抜け気味に飛び出した3歳牝馬トレヴの背中は遠く、アンテロとの2着争いをクビ差制するのがやっと、という状況だった。

武豊を鞍上に据えて、最後の直線での切れ味に賭けたキズナも、上位に入線した馬の瞬発力には遠く及ばず(それでも4着に残ったのは立派だが・・・)。

エルコンドルパサーの時からそうだったように、東の最果てからやってきた馬に対して、地元の馬たち(&その調教師&騎手)は、至極冷淡で、元々スローに流れる傾向が強い、と言われるレースを、さらに一段とスローに落とし、速い流れのスピード勝負に慣れ親しんだ馬たちを究極の瞬発力勝負に持ち込んでくる。
そして器用に立ち回った先行馬が軽い斤量を生かして飛び出し、そのまま影を踏ませない・・・というのも、どこかで見たような光景。歴史は繰り返されてしまった。

「5馬身」という大差を付けられた池江調教師のレース後のコメント*3が、テレビの前で日本馬の悲願達成を待ち望んでいたファンの声まで、全て代弁していたような気がする。


ここ数年は、日本勢が「2頭出し」で挑む流れが続いているこのレース。
敗れたとはいえ、2年続けて2着、という偉業をオルフェーヴルが達成したことで、まだまだしばらくは“挑戦熱”が衰えることはないだろうし、年々海外遠征の経験値を蓄積していくことで、どこかで日本のホースパーソンたちの努力が花開く日も、きっと来るに違いない。

ただ、今回遠征した2頭、特にオルフェに関わったスタッフが次に、同じレベルの馬に巡りあえるのはいつか、ということまで考えると、やっぱり去年のレースで勝たせてあげたかったなぁ・・・と、あと一歩のクビの差が、今さらながら悔やまれてならなかった。

いつか、ステイゴールドオルフェーヴルのサイヤーラインを引き継ぐ馬が、今日の5馬身差を10倍返しできる、と、自分は信じているのだけれど・・・。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20121007/1349665315

*2:2010年に世界をあっと驚かせたナカヤマフェスタも5歳になった翌年のレースでは大惨敗を喫している。

*3:去年もそうだったが、今年もより慎重さを増したコメントになっていた。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html