予定調和を覆した“東北魂”への感嘆符。

ここ数年、プロ野球、というものへの興味がかなり薄れていて、「日本シリーズ」といっても、結果だけ見て「あ、そう」という感じの反応しか示せなくなっていた自分だが、今年は何となく特別な気分だった。

元々、自分は、贔屓の虎以外のセ・リーグ球団は、「皆、敵。」という思想の人間で*1、特に巨人とか中日のような大都市資本家の贅沢玩具みたいな球団が出てくると、どこのチームだろうがパ・リーグを応援してしまう*2傾向があるのだが、特に今年は、ここ数年思い入れの強い東北をフランチャイズとするチームが初めての日本一に挑戦する、というシリーズだっただけに、思いは格別。

とはいえ、毎試合見られるわけでもなく、第2戦で、田中将大投手が危うい勝利を収めたのをちらっと見た後は、速報のチラ見とダイジェスト映像だけ。

そして、決めるならここしかないだろう、と思っていた第6戦で、今季無敗の田中投手に土が付いた、という報を聞いた瞬間、予定調和的に、

「東北の誇りイーグルス、惜しかった。でもよく頑張った」

的な結末になってしまうんだろうなぁ、という思いが漠然と浮かび、せめて明日はちょっとでもテレビを見る時間を確保して、最後の散り際を見届けようか、という思いから、スケジュールを組んでいたのだが・・・。


まさか、そこで、美馬投手が「2度あることは3度ある」的な快投を演じるとは。
そして、前日沈黙した打線が、プレッシャーの下で何とかリードを奪い、盤石のように見えて綱渡りだった則本ー田中というWエースの継投で無失点で抑えるとは・・・*3

定石破り、掟破りの戦術でも*4、流れを味方に付ければ、最高に絵になるドラマを演出できる、という素晴らしい見本を、今年の楽天イーグルスは示してくれたのではないかと思う。


なお、何だかんだ言って、戦力補強のレベルで言えば、既に“弱小球団”の域はとっくに超えてたじゃないか、という突っ込みもあるだろうし、最初と最後をホームスタジアムで戦える環境がなければ、全く違う結果になっていたはずだ*5、という読売ファンのボヤキも、至極その通りだろう。

何より、過去の“遺産”を見れば分かる通り、ここで頂点を極めた監督が去った後、仙台のファンが惨々たる荒野を目にすることになる可能性も否定はしまい。

ただ、少なくとも今年の仙台球場には、“東北魂”というシンプルなフレーズでは語り尽くせないような、魂、というか霊気が宿っていたのではないか、そして、大エース田中将大投手を筆頭に、来季以降のことなど考えず、目の前の一試合一試合に執念を注いだ選手たちの思いが、本来の実力差から導かれるはずの予定調和的な結末を、見事なまでにひっくり返してしまったのではないか。
そして、こんな美しい瞬間を、現地で、あるいは、テレビで見ていた日本中の視聴者が共有することができたこと、それで十分なんじゃないか・・・

そう思わずにはいられない。


なお、相手チームのファンにしてみれば耐えがたいような、「日本中を敵に回すような恐怖感」を最後の最後で味わうことなく、多くのアンチファンを素直に“勝ち馬”に乗せてくれた、という意味において、今年のセ・リーグ読売ジャイアンツが圧倒的な力で制覇してくれていたことに、今さらながら、厚く感謝を申し上げなければならないなぁ・・・と思った次第である。
(こういう時は、万年、CSシリーズ第1ラウンド敗退(ないしそれ以下)のチームのファン、というのも、悪くないものだ、と、今年は素直に思った次第。)

*1:強いて言えばカープだけは応援しても良いかな、と思うが、そもそも、もう何年も日本シリーズでは出番がない。

*2:ただし、福岡の金満球団は除く。

*3:「160球を投げた翌日に・・・」ということばかりが言われているが、則本投手はともかく、田中投手の場合、日本シリーズに入って明らかに“出来落ち”感があったから(第2戦だって、藤田選手のヘッドスライディング、という名演技がなければ、星を落としていても不思議ではない試合だった)、仮に前日のダメージがなくても、本来、あそこで投げさせてはいけない投手だったんじゃないかと思う。それでも投げさせるのが星野監督だし、そこで登板しても試合を壊さないのが、今季の田中投手の“大エース”たるゆえんだと思うのだけれど、あれは心底冷や冷やさせられた。

*4:・・・ていうか、星野監督は元々、短期決戦の采配は決して上手ではないし、「戦術」を駆使して勝利をつかむタイプの監督でもない、ということは、これまでの実績が証明していること・・・。

*5:2003年の日本シリーズの第6戦、第7戦をホームで戦えなかったことが、今でも悔やまれる・・・。

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