依然として見えない「電子出版権」の落としどころ

もうずいぶんと長く、このブログでも取り上げている電子書籍問題。

年末に小委員会の報告書が出た時点で、大丈夫かなぁ・・・という懸念はあったのだが*1、やはり通常国会が始まってしばらくたった今になっても、混迷している状況が依然として報じられている。

「雑誌など紙の出版物をスキャンしたインターネット上の海賊版対策について、法的手当ての検討が難航している。文化庁が新たに創設する予定の「電子出版権」を使えば出版社が海賊版対策を行えるものの、電子書籍を出す義務とセットになっており、出版社などが別の対応策を求めているためだ。」(日本経済新聞2014年3月3日付け朝刊・第15面)

以前のエントリー*2でも書いた通り、「出版義務」の存在は、著作権者と出版者の間の利害調整のためには欠かせないツールであり、現在行われようとしている立法が、これまでの紙媒体での出版義務だけでなく、電子書籍についても出版義務を課す方向で動いているのも、著作権者に配慮して・・・という側面が大きいように思われる。

しかし、記事にも登場する「雑誌」などは、元々、連載開始の時点で確定的な書籍出版契約などないのが通常であり、「紙」の時代から、出版権設定契約が行われないことは「むしろ当然」のこと、との指摘もなされているところだから*3、それに対して海賊版対策のために「出版権設定契約」が必要、という制度設計にして、「電子書籍」の出版義務まで課す、ということになると、これは実に大変なことになるのは間違いないだろう。

記事の中では、超党派議員連盟側で、紙をスキャンして海賊版を作る行為を「みなし侵害」規定により封じる、という考え方が浮上している、ということで、これが導入されれば、「電子書籍化する予定のない書籍のデジタル海賊版」に対しては、電子書籍の出版義務を負うことなく紙ベースの出版権で差し止めが可能、ということになるのだが、「みなし侵害」規定の導入については、昨年末の小委員会報告書とそこに至るまでの議論の中で、理論的整合性の見地から葬り去られた感が強いし、仮に導入できたとしても、先ほどの「雑誌」問題については、決定的な改善策にはなりえない*4

関係者がどんなに悩んでも、今国会中に法案が提出される、という筋はさすがにもう揺るぐことはないだろうし、そうなれば、結局はどこか落ち着くところに落ち着く、ということになるのだろうけど、最後の最後で、あっと驚く条文案が世の中に示されることになるのか、それとも、国会に上程されてから、更に一波乱あるのか・・・

ディテールに関しては、まだまだ落ち着きどころが見えない、そんな状況がまだしばらく続きそうな気配ではある。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20131224/1389619746参照。

*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20130805/1375800716

*3:村瀬拓男「出版権のこれまでとこれから-実務の観点から」ジュリスト1463号57-58頁。

*4:「雑誌」の場合は、そもそも紙ベースの時代から出版権設定が難しい、とされていたものであり、いくら「みなし侵害」規定ができても、紙ベースの出版権設定がなされなければ、活用しようがない、ということになってしまう。