「グッド・ウィル・ハンティング」をもう一度。

最近、日本でも海の向こうでも、自分が一昔前に映画に熱狂していた時代の名優たちの訃報を、しばしば見かけるようになってきている(それだけ、自分も歳を取ったということなのだろう)のだが、今朝のニュースは、特にショックが大きかった。

「米映画『グッドモーニング、ベトナム』(1987年)や『いまを生きる』(89年)などで知られる米人気俳優、ロビン・ウィリアムズ氏が11日、カリフォルニア州サンフランシスコ近郊の自宅で死亡しているのが見つかった。自殺とみられる。63歳だった。」(日本経済新聞2014年8月12日付け夕刊・第13面)

ロビン・ウィリアムズ氏が、毎年のようにアカデミー主演男優賞に名を連ねていたのは、自分も周囲もちょうど多感な時期で、そんな中、映画や演劇の世界にどっぷり浸かったコミュニティにいた者にとって、彼の存在には特別な意味があった。

(自分はあまり好きではなかったのだが)「今を生きる」に触発されて演劇の世界にぶっ飛んでいった者もいれば、「レナードの朝」を見て、医業の道を志した者もいた。
今日のニュースの中では、ロビン・ウィリアムズ氏の“コメディアン”としての側面にスポットを当てて、その多才さを称えるトーンのものも多かったのだが*1、少なくとも90年代の日本の青少年にとっての彼は、見事な台詞回しで、決してストレートではない、一癖も二癖もある難しい役柄を、それでも“ヒーロー”として堂々と演じ切る「本格派俳優そのもの」だった、と言ってよいだろう。

それくらいの重みは、間違いなくあった。

ちなみに、自分の中で一番印象に残っているのは、そこから少し時代が下った90年代末期の「グッド・ウィル・ハンティング」のショーン・マグワイアとしての演技である。

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これまでの人生ベスト20に入るくらい好きな映画だから、というのもあるのだけど*2、それ以上に、あんな禅問答のような(でも言葉としてはとても鋭い)セリフでのやり取りを、全く違和感を抱かせずに自然にやってのけてしまう・・・というところに、ロビン・ウィリアムズ氏の真骨頂ともいえる独特の持ち味が存分に発揮されていたように思う。「アカデミー助演男優賞」と聞いて納得の名演技・・・。

冷静に考えると、あの映画以降で、ロビン・ウィリアムズ、という俳優の存在を意識することはほとんどなかったし、「グッド・ウィル・ハンティング」の記憶自体、最近では少し薄れかけていたことは否定できない。

だが、あれから10年以上の歳月が流れ、突然の「訃報」を目にしたとき、どうしても、90年代の、自分自身決して楽ではなかった時代の記憶を蘇らせずにはいられなかった。

そして、ショーン・マグワイアとして、あれほどの老成した演技を見せていた彼が、あれから10年以上経っても、まだ「63歳」という若さだった、という事実を知って、驚きを禁じ得なかった自分もまたいる。

これから普通に歳を取ったとしても、あと10年もしないうちに、あれくらいの“味”を、自分が醸しだせるようなになるなんて到底思えないわけで、その意味でも、この世界は惜しい人を亡くしてしまったのだなぁ・・・ということを、つくづく感じてしまうのである。

できることなら、「グッド・ウィル・ハンティング」をもう一度見返してみたい。
今は、そんな気持ちで満ちている。

*1:オバマ大統領のコメントが、米国人にとっての「ロビン・ウィリアムズ」という存在を端的に現していたのではないかと思う。

*2:初めてレンタルして見た時に、ちょうど自分が、とんがり過ぎて行き場を見失って社会的引きこもり状態(苦笑)に陥っていた、というのもあって、研ぎ澄まされたウィルとショーンの会話に、ちょっとした戦慄を覚えたものだった。

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