極めて残念な結末を迎えたW杯の終戦からはや3ヶ月近く経ち、ハビエル・アギーレ新監督を迎えて新たな船出となった、サッカー日本代表。
ちょうどNumber誌上でも「新監督に贈る日本サッカー再生計画。」と銘打った特集とともに、新監督の詳細なプロフィールや過去の言動が紹介されていたこともあり、骨のある南米2チーム(ウルグアイ、ベネズエラ)との連戦には注目していた*1。
Number(ナンバー)860号 日本サッカー再生計画。 (Sports Graphic Number)
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/09/04
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (1件) を見る
結果だけ見れば、ウルグアイ戦では、凡ミスをきれいに突かれて完敗。
また、ベネズエラ戦では、スター性十分の武藤嘉紀選手、ようやくフル代表で表舞台に出てきた柴崎岳選手、というA代表戦初出場コンビが持ち味を十分に発揮した美しいゴールを決めたものの、またしても、ミス風味の2失点で、試合を作れずドロー、ということで、まだまだこれからかなぁ・・・という感は強い。
個人的には、「そろそろ日本人監督でW杯を目指してもいいんじゃないかな」という思いもあっただけに、4年前も取りざたされた「アギーレ」という新味のない名前を最初聞いた時には、がっかりした面もあった。
それからの2か月で、記者会見でのコメントにオシム監督以来の“勝利に向けた哲学のシンプルさ”を感じたことや、熱心に国内の試合を観戦し、通好みの選手たちをいきなり代表に初選出する(しかも、ちゃんと試合でも使う)という積極的な一面に接して、国内の多くのメディア同様、前向きな評価に変わりつつあるが、Numberに掲載されている「ハビエル・アギーレの主な監督歴」(Number860号18〜19頁)などを見ていると、
「メディア等で高い評価を受けているメキシコ代表監督としての経歴は、いずれも『予選途中からのリリーフ登板』だったこと」*2
「スペイン・リーグでの監督歴も、最初に率いたオサスナや、2チーム目のアトレティコ・マドリッドの前半では結果を残している(最高4位)ものの、アトレティコを途中解任されて以降、「1部残留」以上の目立った実績はない」
ということに気づいてしまうわけで、目前に控えたアジアカップをはじめ、これからの長い戦いの中で負けが込んできた時に“エキセントリック”な一面が前面に出てきて軋轢を起こすようなことにならないか、という懸念は、まだ消えていない。
2度、W杯を率いた岡田武史氏でさえ、「日本代表はしばらく外国人監督でいいんじゃないか」*3と言っているくらいだし、押しも押されもせぬ“日本人名監督”がなかなか登場しない今の日本サッカー界を見る限り、ロシアに向けたスタートとしてはこれで良いのかもしれないが、惜しいところまで来ながら、最後の最後で「壁」に突き当たっている日本代表に前向きな変化を起こせるのかどうか、時間をかけて新監督の品定めをしてほしいなぁ。と思うところである。
なお、先に紹介したNumber誌、ザッケローニ監督の通訳を4年間務めた矢野大輔氏が、「ここまで載せていいの?」という手記が掲載されているなど*4、読みどころは多いのだが、自分が一番痺れたのは、やっぱり、あの御方のコメントだった。
(ブラジルW杯で)「試合に負けたのが悲劇ではない。悲劇的なのはチャレンジしなかったこと。客観的に見たときすべてが可能であったのに、敢えてチャレンジしなかったことだ。」
「今の状況は、私が日本代表監督に就任したドイツワールドカップ直後に似ている。日本はあるレベルまで到達したのに、そこから後退してしまった。しかしそういうときだからこそ、継続性を重視すべきだ。なぜならこの日本代表は、ブラジルで見せたよりもずっと大きなポテンシャルを内に秘めているからだ。」
「日本人であることは決してコンプレックスではない、日本人には日本人の特質がある。そこをもう一度考えながら、他の国々が何をしているかよく観察して、模倣するのではなく自分たちのものにしていく。そうすれば、道は自ずと見えてくるだろう。」
(イビチャ・オシム「歴代日本代表監督からの提言。」Number860号57頁)
どんな世界にも、たら、れば、は禁物だが、もし、オシム監督が2007年の秋にアクシデントに見舞われることがなければ、その3年後、そして今、日本のサッカーはもっと大きな高みに達することができていたのではないか、という思いは未だに消えない。
キャラクターは異なるものの、やり方はオシムに近い、という声もあるアギーレ監督が“オシム・ロス・症候群”を乗り越えて、日本が進むべき明快な解を示してくれるのかどうか、しばらくはそっと見守り続けたいと思う。