届かなかった末脚と日本馬の目指すべき場所。

過去2回、オルフェーヴルが挑んで2年連続2着、という結果を残してきた欧州最高峰レース、凱旋門賞
昨年は、勝ち馬との着差こそ開いたものの、日本のもう一頭キズナも4着に入線し、長年の日本競馬界の悲願達成まであと一歩・・・というところまで近づいたかのように思えた。

だが、今年の第93回目のレースで栄冠に輝いたのは、昨年に続いて地元フランスの4歳牝馬トレヴ
一方、これまでの実績だけを見れば「史上最強の編成」、しかも、騎乗していたのは全員、日本の一流騎手、と、まさに「オールジャパン」といっても過言ではなかった日本勢3頭は、枕を並べて討ち死にする、という極めて残念な結果になってしまった。

まるで団子のような集団が固まったまま最後の直線まで崩れず、欧州の名手たちが他の馬の進路を巧みに潰しながら、柵が取っ払われた最内のコースを目指してスピードを落とさずに削り合う神経戦。
そして、勝った馬がジャルネ騎手の手綱に導かれて、「どこにいたの?」という絶妙な位置取りから、馬群を抜け出して堂々の連覇を達成したのを見た瞬間、このレースで、日本勢が「オールジャパン」の体制で勝つのは、しばらく無理なんじゃないかな・・・と思わずにはいられなかった*1

特に、今年の日本勢の中で最も栄冠に近い、と思われていた世界最高レート馬・ジャスタウェイが、馬群にもまれたままほとんど見せ場らしい見せ場を作れなかった、というのは、いろんな意味でショックだったし、ゴールドシップが最後方からズブズブと進んだまま、最後まで眠ってしまったことも、(半ば予想されたこととはいえ)何とも言えない気分にさせられた。

そんな須貝厩舎の2頭に比べれば、川田騎手が手綱を取った我らがハープスターは、まだ、一瞬期待を抱かせてくれただけ良かったと思う。

戦前から散々言われていた通り、基本的にスローペースで前が止まらない傾向があるこのレースで、ハープスターのような極端な追い込み馬が差し切るのはさすがに無理だったし、着順的にも6着、と記録的には平凡、と言われても仕方ない結果ではあったのだが、直線で追い上げを開始した瞬間の脚は、明らかに周りの馬とは次元が違ったし、一気に中盤まで追い上げてきた姿を見たときは、これまでの国内での彼女のレースと同じく戦慄が走った。

結果的に、記録には残らなくても、人馬ともに日本馬の中で唯一、「自分達の競馬」ができた、ということは、彼(川田騎手)&彼女(ハープ本人)双方の今後のキャリアを考える上でも、決して悪いことではなかったような気がする*2

とはいえ、トータルすれば、結果的には「惨敗」。
過去2年とは違う意味で、今年の凱旋門賞は実にほろ苦いレース、ということになってしまった・・・。


なお、今年に入ってから全く勝ち星がなく、前哨戦のヴェルメイユ賞では4着に敗れていた地元馬のトレヴが勝ったことからも分かるように、「欧州最高峰」の看板を掲げていても、最後はコース&レースとの「相性」の世界なのだと自分は思っている。

そして、20年前、30年前とは異なり、世界を見回せば、ロンシャンにこだわらなくても、格の高い国際G1レースがたくさんあり、その中には日本馬と相性の良さそうなレースも、当然いくつかは存在する。

だとすれば、相性の良し悪しにかかわらず「何がなんでもロンシャンを目指す」という風潮は、そろそろ卒業しても良いのかな・・・と思うところ。
秋のG1戦線がこれから盛り上がる、というところで、「日本代表」クラスの馬が国内のレースに出られない、というのも、実にもったいない話だ。


ここ数年、とにかくこのレースに挑戦することが、「是」とされてきた、その価値観を急に変えるのは難しいのかもしれないけれど、「最強布陣」で敗れた今だからこそ、考え直すチャンスだと思わずにはいられないのである。

*1:これまで、長年手綱を取ってきた日本人騎手が、欧州遠征で乗り替わりになるのを見て、もったいないなぁ、と何度も思ったものだが、過去のそういった選択が間違いではなかった、ということを、今年の日本人騎手(特に大負けした2頭の騎手)たちが皮肉にも証明してしまった。

*2:少なくとも自分は、十分夢が見られたし満足できた。元々の期待値が去年までのオルフェや、かつてのエルコンドルパサーに比べると、比較にならないくらい低かった、というのも満足できたひとつの要因ではあるのだけれど。

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