天国と地獄へのエレベーター

土曜日のJ1最終節。

楽々逃げ切る雰囲気だった浦和の赤い奴らが勝手にコケてくれたせいで、最後の2〜3節くらいから急に面白くなり、最終節の試合もそんなシーズンの動きを如実に反映したような展開で、テレビで刻々と変わっていく上位チームの試合展開を、ただ傍観するだけの自分みたいな者*1にとっては、実に清々しい90分となった。

開始早々に幸先良く先制するも、次の矢を放てない間にグランパスに鮮やかな反攻を食らい、2失点して万事休した浦和レッズ
一方、昨年の昇格決定戦のパフォーマンスを彷彿させるような素晴らしい集中力を見せたヴォルティスの前に、何度もあわや・・・という危機に陥りながらも、最後まできっちりと守り切ってドローで締めたのがガンバ大阪だった。

「1ステージ制」に移行した最初の年(2005年)に最終節までもつれ込む混戦を制し、“やっぱり1ステージ制は面白い”と思わせてくれたガンバ大阪が、「1ステージ最後の年」となる(かもしれない)2014年に、見るものに全く同じような感想を抱かせて、9年ぶりに優勝のタイトルを手にした、というのは偶然にしてはあまりに出来過ぎたドラマであり、かつ、実に皮肉な話だと思う。

もちろん、「J2逆戻り」を彷彿させるような前半戦の不振をシーズンの中で立て直し、中盤から終盤にかけての追い上げで一気にNo.1にまで上り詰めた、今季の彼らのパフォーマンスには、何らケチを付けるようなところはない。

そして、様々な“復活”の要因が挙げられる中でも、もっとも「そうだよな・・・」と納得したのが、

「V字復活できた最大の勝因は、監督選びに成功したことだろう」(日本経済新聞2014年12月7日付朝刊・第29面)

というコメント。

J2という「地獄」に落ちて、そのまま浮かばれないままシーズンを重ねてしまうチームと、きちんと建て直してJ1復帰後に降格前以上の高いパフォーマンスを発揮するチームの明暗、というのは、残念ながらくっきりと分かれてしまっているのだが、その明暗を分けているのは、やはり、降格した年に、どれだけ腕のいい監督にチームを任せられたか、ということなのではないのかなぁ・・・と思わずにはいられない*2

そんなことを思ったのも、今年の後半戦、黄緑赤の集団が、我が国有数の名将、関塚隆監督を迎えてから、まるで別のチームのように勝ち星を積み重ねる姿を見てきたから、なのかもしれない。

日曜日の昇格プレーオフに関して言えば、

「皆さん見て分かるように、戦ってないでしょ」(日本経済新聞2014年12月8日付朝刊・第40面)

というコメントが選手自身(上記コメントは、山口智選手)から出てしまうような体たらくで、「激しいプレスと豊富な運動量」以外には何も持っていないモンテディオ相手に、交通事故のような失点*3を喫した後、最後まで何もできずに終わってしまった*4、というところに強い不満はあるのだが、シーズンの序盤に2桁順位の時期が続いて、J3の影までチラついていたチームを、プレーオフ勝戦で「ホーム」を取れるポジションにまで持ってきたのは、やはり「監督の力」。

来年でもう6シーズン目に入るチームが、これからどんなに頑張ったところで、ガンバやレイソルの偉業と肩を並べることはできないのだが、それでも、久々(オシム以来)に「名将」と呼んでも恥ずかしくない監督を手に入れたチームが、来シーズンを「降格元年」と同じマインドで戦いぬけば、もしかしたら・・・という期待は湧いてくる。

そして、過去2年、プレーオフでJ1に昇格したチーム(12年大分、13年徳島)が、「断トツの最下位」という無残な戦績で再び降格の憂き目にあったことも念頭に置いて、「もう一年じっくり鍛え直す」という観点から、監督も選手も今回の昇格戦で無理をしなかった、と考えれば、来シーズン、天国の、そのまた頂上へと上り詰めるエレベーターに乗れるチャンスは、まだ残っているような気がするのである。

*1:かつ、何となくレッズは嫌い、という人種。

*2:もちろん、フロントのバックアップの問題等もあるのだろうけど、選手層が極端に薄くなったわけでもないのに、J2に落ちてからも苦戦するチーム、というのは存在するわけで、そこは、やはり“現場”でどれだけ明確な絵を描けるか、というところに尽きるように思われる。

*3:正確なクロスにベテランFWの山崎雅人選手がきれいに合わせた、というのが公式報道だが、コース的には、GK・高木選手が普通のポジション取りをしていれば防げたもののようにも思われ、何とももったいない失点になってしまった(この日の高木選手は、正面のボールをファンブルしてCKを与えてしまうなど、緊張のせいか、いつもの良さが影を潜めてしまっていた)。

*4:お世辞にも安定感があるとはいえない山形のDF陣が相手であれば、森本選手をうまく使って中央から斬り込んでいく、という戦術もあっただろうに、リスクを避けてサイド方向にボールを流し続けた結果、走り負け、セカンドボールも支配できず、何よりも、相手ゴール前でチャンスらしいチャンスを、ほとんど作れないまま、試合終了のホイッスルを聞くことになってしまった。2年前の大分戦でも感じたことだが、「ここで勝たないと」という勝負の場面で、選手の「熱さ」が伝わってこないのがこのチームの伝統的な弱点で、その意味で、記事のコメントにもあるように「自動昇格できるチームづくりをクラブとしてするしかない」のだと、自分も思っているところである。

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