衆院選の低投票率に引きずられる形で、前回よりも6ポイント以上も投票率が低下した最高裁裁判所裁判官の国民審査。
いつものことながら、罷免の「×」が過半数を上回ることはもちろんなかったわけだが、今年の数字を見ると、いろいろと興味深いところはある。
<罷免を求める票数、及び不信任率>
鬼丸かおる(弁護士) 4,678,087(9.2%)
木内道祥(弁護士) 4,861,993(9.6%)
池上政幸(検察官) 4,855,670(9.6%)
山本庸幸(行政官) 4,280,353(8.4%)
山崎敏充(裁判官) 4,786,184(9.4%)
まず、全体的な不信任率の高さ。
前々回に比べるとやや高めだった前回の国民審査*1よりも、さらに1%くらい高い数字になっている。
低投票率によって投票所に足を運ぶ“無関心層”が減った一方で、一言モノ申したい、という人々がきっちりと思いの丈をぶつけた、というのが背景にはあるのだろうが、このペースで行くと、早晩、不信任率が2桁の大台を取り戻す可能性も否定はできないだろう。
そして、さらに興味深いのが、今回もっとも不信任票が多かった木内裁判官と、もっとも少なかった山本裁判官との得票の「差」である。
限られた材料しかない中での投票で付いた票差は、実に58万票。
このような結果になったのが、「一票の格差」をめぐる先進的な「反対意見」の影響によるものなのか*2、それとも「内閣法制局長官」という前職の地位への信頼によるものなのか、は分からないけれど、ここに、今後の国民審査の傾向を占う何か、があるのかもしれないな、と思うところである。
なお、新聞報道等派されていないが、もう一つの興味深い結果として、最高裁が所在する千代田区での開票結果を挙げておこう*3。
最高裁判所裁判官 国民審査開票結果〔千代田区〕
罷免可 罷免不可
鬼丸かおる 793 25,607
木内道祥 461 25,939
池上政幸 845 25,555
山本庸幸 278 26,122
山粼敏充 2,481 23,919
前の東京高裁長官である、山崎裁判官のこのぶっちぎり感はいかに・・・
法曹関係者も多く居住していると思われるこのエリアでのこの結果が、いったい何を意味しているのか、考えさせられるところは多いのである*4。