年の瀬にようやく出た弁護士ランキング。

毎年、12月の日経法務面の名物企画となっている「企業法務・弁護士調査」特集。

本来であれば、先週15日くらいには掲載されていても不思議ではなかったのだが、イレギュラーな選挙に水を差されたか、年の瀬も押し迫った12月22日付の紙面に掲載されることになった*1

アンケート自体は、かなり細かいところまでデータを拾っているはずなのに、ここ2年ほど紙面で大々的に取り上げられていた話題は極めてセンスのないものばかりでがっかりさせられることが多かったこの特集だが、今年は、「顧客情報流出事故の公表/非公表の判断」だとか、「第三者委員会の設置を決める際、最も重視するものは」といった、実務サイドから見ても“何となく(他社の考え方が)気になる”ネタが前面に押し出されていて、印象は悪くない*2

特に、

住所氏名などの個人情報」や「重要情報」(ID・パスワードやカード番号・口座番号等の決済関連情報、を指すようである)に該当しないような顧客情報だけが流出した場合は、流出件数にかかわらず、『非公表』を選択した会社の方が多かった。

とか*3

企業が第三者委員会の設置を決める際、各社が重視しているのは、『メディアの報道』や『監督官庁の指導』、『警察や検察などの強制捜査の可能性』がほとんどで、『ネットやソーシャルメディアでの炎上』を挙げた会社は、わずか7社(4%)しかいなかった。

といったデータは、何かの折に使えるような気がしないでもないし*4、「有識者を第三者委員会委員として選ぶ際に重視する要素」という質問に対し、「会社が契約する顧問の推薦」という回答が最も多かった、という事実も、気に留めておくべき事柄だと思う。


・・・で、恒例の弁護士ランキングと言えば、今年も、企業からの得票者のランキングのみが掲載されている。

<企業法務分野>
1.中村直人(中村・角田・松本)16票
2.太田洋(西村あさひ)15票
3.武井一浩(西村あさひ)10票
4.野村晋右(野村綜合)9票
5.沢口実(森・濱田松本)7票

現在の形式でのランキングが発表されるようになって以来、首位を譲っていない中村直人弁護士が今年も貫禄を示し、他の先生方もほとんどがこのランキングの常連、という至極穏当な結果。

他にも、外国法分野で射手矢好雄弁護士(森・濱田松本)、危機管理分野では国広正弁護士(国広総合)と、いずれもこの特集常連の先生方が、いわば予定調和的にトップに名を連ねており、実務者としては「安心できる結果」になっている*5


電子版にのみ掲載されている「企業票+弁護士票」のランキングでも、トップが入れ替わったのは「企業法務分野」だけで、極端に違和感のある結果とまでは言えないのだが、やはり、大手事務所の組織票バイアスがかかっていることは否定できない状況になっているだけに、紙面にランキングを載せるのであれば、今の形式が一番良いのだろう、と思うところである*6


なお、「弁護士」側のアンケートに関しては、これまた電子版にしか結果が掲載されていない「民法改正で『約款』規定を導入するかどうか」という質問への回答で、「改正の対象とすべき」という意見と、「改正の対象とすべきではない」という意見が拮抗する、といった興味深い結果も出ているのだが、そのあたりはまたおいおい、取り上げてみることにしたい。

*1:日本経済新聞2014年12月22日付朝刊・第15面。

*2:とはいえ、「企業の3割強がコンプライアンス(法令順守)上のトラブルを抱え・・・」という微妙な数値情報(しかも去年より減っている(笑))を載せるところは相変わらずだし(何が問題か、は、昨年のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20131216/1387298034)をご参照のこと。)、回答企業の数は増えたものの(ここ3年の推移は148社→159社→177社)、何でこの会社が入ってて、この会社が入ってないの?という疑問は、より大きくなったような気がする。

*3:もっとも、「個人情報」の定義を広く解するなら、上記の情報に該当しない顧客情報なんて存在するのか?という素朴な疑問も出てくるのだが・・・。

*4:ネットでの風評が、ネットの世界の住民が思っているほど、リアルの世界の取引や企業行動に影響を与えるものではない、ということは、自分も肌で感じているところである。もっとも、最近は、ネット上での言動を安易に活字にする“大メディア”も増えているから、「ネットやソーシャルメディアでの炎上」と「メディアの報道」の差は、紙一重になっているのも事実なのだが。

*5:これも昨年のエントリーで書いたとおり。このランキングを見るたびに、“定番”の先生方が名を連ねる、という“紅白歌合戦の大トリ”的な安心感と、ひそかにお世話になっている腕の良い先生のお名前が挙がっていないことへの安心感が入り混じった感情を抱いている。

*6:そもそも、この手のランキング企画を組むこと自体、企業法務の世界にはなじまないのでは?というのが、自分がかねてから呈している素朴な疑問であり、毎年同じ感想を抱かれる方は多いと思うのだが、その話はとりあえず措いておく(そういえば、某NBL誌の巻末のコラム(惜字炉)に「ランキング支持」のご意見が載っていたこともあった・・・)。

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