名実ともに歴代の名馬と肩を並べた幸せな結末。

年が明けて、既に開幕週のレースを終えていても、まだ昨年の有馬記念の余韻が残っている中央競馬界。

そして、毎年恒例のJRA賞の発表が行われた。

「昨年度、中央競馬で活躍した人馬を表彰する日本中央競馬会JRA)のJRA選考委員会が6日、東京都内で開かれ、年度代表馬ジェンティルドンナ栗東石坂正厩舎)を選出した。」(日本経済新聞2015年1月7日付け朝刊・第33面、強調筆者)

一流馬の海外遠征がポピュラーになり、逆に国内のレースの戦績だけを見ると傑出した存在がいなくなる、というのがここ数年の残念な傾向ではあったのだが*1、今年は春先に海外でタイトルを奪い、秋は国内に腰をじっくり据えてG1を連戦したジェンティルドンナが、文句なしで2度目の年度代表馬に輝いた。

2014年は、海外を合わせてもG1タイトルは2つだけ、しかも2度も掲示板を外す凡走を演じてしまっただけに、ジェンティルが「年度代表馬」にふさわしいかどうか、というところには、いろいろと議論もあるところだろうが、最後の最後に、国内最高レベルのメンバーが揃った有馬記念で圧倒的なパフォーマンスを示した、というのは、やはり大きかったと思う*2。。

記者投票の結果(http://www.jra.go.jp/news/201501/010601a.html)を見ても、

1 ジェンティルドンナ 231
2 ジャスタウェイ 51
3 該当馬なし 2
4 エピファネイア 1

と、同じく海外・国内で合計G12勝*3の牡馬・ジャスタウェイを大きく引き離す結果となった*4

記者の感覚と、一般のファンの感覚は、必ずしも合致するとは限らないが、今回に関しては、多くのファンも同じ思いだったのではないかな、と思うところである*5


なお、ジェンティルドンナ年度代表馬受賞は、2012年以来2年ぶり2度目。

過去、2度以上「年度代表馬」になった馬、というのを探してみると、シンザン(1964,65年)、ホウヨウボーイ(1980年、81年)、シンボリルドルフ1984年、85年)、シンボリクリスエス(2002、03年)、ディープインパクト(2005、06年)、ウォッカ(2008年、09年)と、錚々たるメンバーが名を連ねている*6

今回、ジェンティルドンナは、そこに名を連ね、G1勝利数記録とともに「名馬」としての地位を確固たるものにする足跡を残したわけだが、彼女が過去の「2度受賞」の馬たちと異なっているのは、「2年連続」ではなく、「1年空けて2度」受賞しているところ。

どんな競走馬にも、ピークの時期があり、それが決して長くはない、ということを考えると、ブランクを経て「2度目」を受賞する、というのは、また一味異なる価値があるわけで、そういった観点からも、彼女の名には、長く語り継がれる価値があるのではないか、と思っている。

*1:典型的だったのが、2012年、2013年と凱旋門賞制覇まであと一歩、という見せ場を作ったオルフェーヴルが、いずれの年も年度代表馬になれなかった、というエピソードだろう。特に2013年は有馬記念で劇的な勝利を飾り、「最優秀4歳以上牡馬」のタイトルを堂々手にしたにもかかわらず、年度代表馬のタイトルは同じカテゴリーの短距離馬・ロードカナロアにさらわれてしまった。

*2:今年から出走にインセンティブを付けたことで、一流メンバーが勢ぞろいした、そして、それを勝ったことが「年度代表馬」に向けた大きなアピールとなった、という事実は、今年以降の各馬のローテーションにも大きな影響を与える可能性がある。

*3:対戦成績でも1勝1敗。

*4:最優秀4歳以上牝馬部門では、当然ながら文句なしの満票である。

*5:なお、他の部門もおおむね順当なのだが、最優秀3歳牡馬部門で、ダービー馬のワンアンドオンリーではなく、皐月賞馬のイスラボニータの方が記者投票で上回った(イスラボニータ170票に対し、ワンアンドオンリーは109票にとどまった)、というのは、これまでの傾向に鑑みると、少し意外な気がした。皐月賞菊花賞の2冠、あるいは皐月賞古馬G1タイトル、というパターンの馬であれば、ダービー馬を押しのけて受賞することも珍しくないのだが、「一冠」しかとっていない同士の争いでダービー馬が負けるのは、過去にもあまりなかったような気がする。天皇賞・秋でのジェンティルとの壮絶な叩き合いを思い返せば、個人的にはこの結果が妥当だと思うのだけれど。

*6:もちろん、これらの馬すべてが完璧な戦績を残していたわけではなく、同世代や近い世代にライバルが多いか少ないか、という運、巡りあわせの要素も大きいのは確かだが・・・。

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