アジアカップで残酷な敗戦を喫した時から、こういう日が来ることは容易に想像できたのだが、それにしても唐突・・・な印象はあった。
「日本サッカー協会の大仁邦弥会長は3日、都内で記者会見を開き、スペイン時代の八百長関与疑惑で検察当局から告発されている日本代表のハビエル・アギーレ監督(56)との契約を解除すると発表した。現地の裁判所が告発を受理したことを確認したため。」(日本経済新聞2015年2月4日付朝刊・第3面)
契約の中途解除事由としての相当性、という観点からは、「アジアカップの引責」という形ではなく「八百長疑惑」を前面に出した方が(日本協会にとっての)ダメージが少なかったのだろう、ということは何となく推察できるところだし、ベスト8で敗退したとはいえ、アジア杯での「グループリーグから準々決勝までの戦いぶり」が、決して監督の責めに帰するような酷いものではなかった*1、ということも、上記のような説明につながったのだろうが、「なぜ、今なのか?」という疑問は当然出てくるところである。
「八百長」が報道され始めたタイミングで動かなかったのは、まだ理解できるとしても、
「スペインの検察当局が告発した12月半ばでも協会は動かず、結論を先送りした。」(同上)
という過程を経て、その上で、今回、単に裁判所が告発を「受理」した、というだけで、一転「解任」という結論に至った、というのでは、“アジアカップは一体何だったのか”ということにもなりかねない。
海の向こうで進んでいる前例の乏しい話に対応しなければならない、という日本協会関係者の苦労は、察するに余りあるものがあるし、ギリギリの選択を迫られた中での判断が、今回の話なのだろうから、サッカー協会を一方的にバッシングするのはフェアではない、と思う。
ただ、2010年のW杯終了後から、4年越しで追いかけ続けて、三顧の礼でようやく迎えたメキシコの名将を、こういう形で“切り捨てる”という形になってしまうのは、やはり残念なことだと思うし、解任の時期が、「八百長疑惑」と「アジアカップ敗退の責任」がごっちゃになるような微妙な時期になってしまった、ということも、今後のことを考えると、あまり良いことではないような気がする。
そして、この中途半端な時期の“解任劇”ゆえ、後任選びにも苦労するであろうことは、十分に想像できるところ。
「何かあったら、また、うちのクラブの監督が引っ張られてしまうのかなぁ・・・」という恐怖におびえていた身としては、
「これから新シーズンに向かうクラブの監督に声はかけない」(日本経済新聞2015年2月4日付朝刊・第37面)
という霜田正浩技術委員長のコメントは非常に有難かったのだが、かといって、「今、Jクラブで監督をしている人以外」ということになると、日本人でも外国人でも、見つけるのは相当大変な作業になる。
メディアでは、手倉森五輪代表監督にA代表の監督を代行させて、欧州クラブの監督が入れ替わる6月頃まで引っ張る、という観測も流れていたが、五輪代表にしても、これから本大会に向けた予選が始まる、という状況の中で、「代行」監督としてできることにはおのずから限界があるだろう。
日経紙にも書かれているように、
「6月から始まるW杯アジア予選をにらめば、後任人事にもたつきは許されない。が、焦ってババを引くのはもっと愚か。」(同上)
なのは確かである。
だからこそ、2018年にきっちりと結果を残せるように、「まだ3年前」という今の状況を冷静に捉える視点が欲しいところなのだが・・・
今は、禍転じて福となる、ことを願うほかない。