土曜日から日曜日の未明にかけて、グリーンチャンネルが気前よくスクランブル解除してドバイの国際競走を中継していた。
かつては、頂点を極めた馬だけが行く、という印象もあった国際G1競走も、今ではすっかり日本のオープン馬のローテーションの中に組み込まれてしまったようで、(一流の実績を持つ馬であるのは間違いないものの)「超一流」とまでは言えない日本馬が次々と出走していたから*1、ちょっとした競馬好きがチャンネルを合わせるにはちょうど良いコンテンツだったのだろう。
しかし、レースの結果はかなり残念なもの。
自分が見たレースの中では、ドバイシーマクラシックで、ワンアンドオンリーが3着に食い込んだのが最高の結果で、ハープスターは珍しく先行気味に走っていたと思ったら、案の定直線で失速してしまったし、ドバイワールドカップの方も、ホッコータルマエが果敢に先行してダート王の意地を辛うじて見せた程度で、エピファネイアに至っては馬場が合わなかったのか、全く見せ場なくズルズル後退してレースを終えることになってしまっていた。
このレースに関して言えば、昨年、ジャスタウェイやジェンティルドンナが見事な結果を残しているし、他国のG1に目を移せば、豪州や香港でもそれなりの実績を残しているのは確かなので、「日本馬は世界で通用しない」などという、十年一昔前の議論をここでするつもりはない。
ただ、団子のような展開で、前が簡単には止まらないレース展開の中で、さらにそこから一歩、二歩抜け出そうとする外国馬の「強さ」に比べて、今年、レースに臨んだ日本の馬たちが少々か弱いように見えたのも事実。
そして、その翌日、わが日本の地で行われた高松宮記念で、香港からやってきたエアロヴェロシティが、壮絶な叩き合いの末、ミッキーアイルを競り落として栄冠に輝いたシーンを見た時、その思いはより強くなった。
今の中京の馬場は、かなり荒れていて、良馬場でも相当力のある馬でないと、脚を取られてもがくことになる。
ましてや、この日は、雨模様で「稍重」の発表。
それにもかかわらず、エアロヴェロシティは終始自分のペースで先行。
直線の入り口でハクサンムーンに離され、後方からはミッキーアイルに交わしかけられる、という厳しい展開ながら、馬場の悪さをものともせずにミッキーアイルを差し返し、最内にいたハクサンムーンまで一気に交わし切る、という、着差以上に、嫌というほどの「強さ」を感じさせる競馬を見せた*2。
驚かされるのは、同馬が初の海外遠征だった、ということ。
初の海外、初のコース、そして、力のいる馬場、という悪条件が揃った中で、こんな競馬をやってのけるのだから、ホームに戻ったらどれほどの力を出すのだろう、と思わずにはいられなかったのである・・・。
今の日本は、「速い馬」を生産し、調教で育成する技術にかけては、おそらく世界の頂点に立つ、と言っても過言ではないだろう。
だが、どんな国の、どんな競馬場に行っても、たくましく“自分の競馬”をやってのけるような「強い馬」をどれだけ育てられているか、と言えば、いささか心もとないところもあるように思えてならない。
これから日本の競馬を海外にアピールしていく上で必要なのは、やはり、どれだけ馬の本質的な部分を「強く」できるか、そして、「強い」馬をいかにきちんと選り分けて、ふさわしい調教システムと出走ローテーションの下でしっかり育てられるか、ということではないか、と思えるだけに、春の海外遠征の教訓も生かして、いつか名実ともに世界ナンバーワン、の結果が出せるようになることを、一ファンとして願っている。