「知財功労賞」表彰の微妙なタイミング

「発明の日」に合わせて毎年行われている「知財功労賞」の表彰。
今年も、平成27年度の表彰対象として、「知的財産権制度関係功労者」と「知的財産権制度活用優良企業等」それぞれの対象者・団体が発表されたのだが・・・*1

つい先日も、「新しいタイプの商標」について取り上げたばかり*2ということもあって、どうしても目が行ってしまったのが「知的財産権制度活用優良企業等」の部門の「経済産業大臣表彰(商標活用)」*3の対象に選ばれたのが、「久光製薬株式会社」だった、ということ。

佐賀県鳥栖市に本社を構えるこの会社にとって、こういう形で表彰を受けることがどれだけインパクトのあることだったか、ということは、容易に想像が付くところで、会社のホームページにも早々と表彰の事実を伝えるニュースリリースが掲載されている*4

公表された「受賞のポイント」は、以下のようなものである。

■商標には、企業の信用とその商品・役務の品質や特徴を消費者に伝えるコミュニケーション機能があることに着目し、消費者の五感を通じて訴える広告宣伝活動を国内外で積極的に展開。Hisamitsu®及びサロンパス®などの「音」、「動き」、「位置」、「匂い」の商標を「新しいタイプの商標」制度を導入した海外の国・地域で積極的に出願登録した先進的な取組みは、従来からの商標の概念に新しい提言を与えたばかりでなく、日本の商標法改正(保護対象の拡充)及び商標制度の普及啓発活動に大いに貢献。
■1934年に貼付剤サロンパス®を日本で発売して以来、継続した「育薬活動」の推進により、日本を代表するブランド商標としての地位を確立。日本の「貼る治療文化」を世界に広めるため、サロンパス®/SALONPAS®は、Hisamitsu®とともに世界185以上の国・地域で商標登録。
■日本で登録出願した商標は、海外でも積極的に登録出願することを基本とし、多くの商標を戦略的かつ効果的にアジア諸国を中心に積極的に登録出願。商標(コーポレートカラーを含む)の信用にフリーライドする第三者に対しては、断固たる姿勢で模倣品を徹底的に排除。
(強調筆者)

久光製薬が擁する「サロンパス」の商標が、我が国有数のブランドであり、国内のみならず、世界各国でも登録されていることは疑いのない事実だし、会社の規模としては決して大きくないこの会社が、長年にわたって多大なコストと手間暇ををかけて、「登録商標」を活用しながらブランドを守り続けてきた、ということが称賛に値することだというのは、言うまでもない。

だから、この会社が表彰の対象になること自体は、別にそんなに不自然なことではないのだが、問題は、今回の表彰が、「新しいタイプの商標」が法改正により制度化されたばかりのタイミングで行われた・・・ということである。

特許庁が長年導入を目指しながらも、国内で諸手を挙げて賛同する声は必ずしも多くなかったこの制度が、数年越しでようやく導入されるに至った背景に、「新しいタイプの商標の必要性」を訴える企業の声があったことは疑いがないだろう。

そして、様々なメディア等において、そのような「声」を挙げる会社、として、もっとも多く取り上げられていたのが、この久光製薬、という会社だったことも、過去の新聞記事等をあさってみれば、容易に分かることだと思われる*5

そういう背景を踏まえて、今回の「表彰」を眺めると、露骨な“論功行賞”ではないか?という雰囲気が、どうしても漂ってきてしまうのだ。、

久光製薬が海外で出願登録している音商標やその他の新しいタイプの商標を、どのような形で使いこなしているのか?というところまでは、これまでの報道等の中には出てきていない。

また、日本で新たに創設されたこの制度が、かつての懸念を払拭するような合理的な運用の下で機能するかどうか、ということも、自分には何ともいえない。

ただ、今後この制度がどういう方向に転ぶとしても、今現在、新たに出来上がった制度に対して、“渋々”対応している“古い日本企業”にいる者としては、この「表彰」のニュースに複雑な思いを抱かずにはいられないのである。

*1:経済産業省の公式リリースは、http://www.meti.go.jp/press/2015/04/20150410004/20150410004-1.pdfを参照のこと。

*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150408/1428764390

*3:この表彰には、「経産大臣表彰」と、「特許庁長官表彰」があって、役所の格どおり、前者の方がステータスが高い。

*4:http://www.hisamitsu.co.jp/company/pdf/news_release_150410.pdf

*5:例えば、まだ新制度に懐疑的な声が多かった2012年の段階から、久光製薬は積極的に制度創設を求める声を上げていた(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20121126/1354466589)。