あのゴールドシップが、遂に、春の天皇賞のビッグタイトルを手に入れた。
父はステイゴールドで、3歳時の菊花賞や、既に3度制した阪神大賞典の走りなどからして、長距離適性も全く問題ないはずなのに、なぜか春のこの大舞台になると人気に応えられない、というレースを繰り返していたこの馬が、6歳にして栄冠に辿り着くことになるとは・・・。
過去の実績も買われて最終的には2番人気、というポジションに収まっていたものの、強気の印を打っていた予想紙は少なく、日経新聞に至っては、金曜日夕刊の予想で「無印」というひどい扱いをしていた。
とはいえ、
「3回目以降の出走で初優勝という前例はない。」
「初回の敗戦から巻き返した馬でさえ少数派だから、『負け→負け』から巻き返すのがいかに困難なパターンかがわかる。」
(日本経済新聞2015年5月1日付夕刊・第11面、「須田鷹雄のG1解剖学」)
という須田鷹雄氏の解説に、「4歳になってからは、G2を含めても阪神競馬場以外で勝てていない」という散々な馬柱を見れば、“今回も人気になって散るパターンだなぁ”と思う方が、むしろ健全なファンだと言えたのかもしれない。
まるで2歳馬のようなゲート入りで、発走を今や遅しを待つ観衆を戸惑わせ、レースが始まっても、
「きょうは1度も手応えを感じることがなかった」
という珍コメントを名手・横山典弘騎手に残させる“自然体”の走り。
相手役となる馬たちがあまりに力不足だった*1、という運に恵まれたこともあるのかもしれないが、天皇賞・春の出走馬の層が薄いのは、今に始まったことではなく、去年も、一昨年も、同じような指摘はあったから、何故今年勝てたのか?という問いへの答えとしては、イマイチ説得力に欠ける。
いずれにしても、これでG1は6勝目。あと一つ勝てば、テイエムオペラオー、ディープインパクト、といった名馬に記録上は肩を並べ、さらにもう一つ勝ってしまうと、“史上最多”と呼ばれるところまで来てしまっているから、こうなったらもう応援するしかないわけだが、果たして、年末の有馬記念あたりにそんなドラマチックな瞬間が訪れるのか・・・
期待されると裏切る、でも、期待が失われたと悟った瞬間に走る、そんな“芸風”の馬だけに、最後の最後まで期待せずに、(だが、ささやかに)時代の生き証人となれることを願いながら、今年一年、追いかけてみることにしたい。