こんな時代だからこそ。

国内で、サラブレッド生産牧場の「寡占化」が指摘されるようになって久しい。
今年に入ってからは特にその傾向が顕著で、特にクラシックレースでは千歳ノーザンファームの馬が大挙して出走。

オークスで1〜4着を独占して度胆をぬいたかと思えば、翌週のダービーでも生産馬9頭を出走させ、再び1〜4着を独占*1

代々続いている「社台」の看板を守りつつ、馬産面でもビジネス面でも様々な手法を駆使して、ここまでの地位を築いてきた関係者の努力は素直に称賛されるべきだと思うが、さすがにこれでは・・・という声が出始めても不思議ではない状況ではあった。

そんな時だっただけに、今日、日高地区の家族経営の牧場(戸川牧場)から生まれたモーリスが安田記念を制した、というニュースを聞いて、ちょっとホッとしたところはある。

馬自身はここまで3連勝、前走もG3のダービー卿チャレンジトロフィーを0.6差の「大楽勝」で制していただけに、勝ったことに大きな違和感はないのだが、この日のメンバーもミッキーアイル以下、ノーザンファームから4頭、社台ファームから4頭、さらに名牝フラワーパークの直仔・ヴァンセンヌ白老ファーム、と社台グループが過半数を占めていて、一歩間違えれば先週、先々週の二の舞になっても不思議ではなかったところで、Google Mapで検索しても出てこないようなマイナーな牧場の生産馬が優勝をさらっていくのだから、やはり、実に痛快な気分になる。

冷静に調べてみると、今年に入ってからも、平地G1レースを制した国内産馬の多くは、

フェブラリーS コパノリッキー ヤナガワ牧場沙流郡日高)
桜花賞 レッツゴードンキ 清水牧場(沙流郡平取)
天皇賞・春 ゴールドシップ 出口牧場(沙流郡日高)
NHKマイルC クラリティスカイ パカパカファーム(新冠
ヴィクトリアマイル ストレイトガール 岡本牧場(浦河)

といった感じで、決して大規模牧場の生産馬ばかりが大レースを勝っている、ということではない。

コンスタントに勝ち星を挙げ、賞金を稼ぐことはできても、本当に大きなレースになってくると、中小規模の牧場から生まれた飛び抜けた才能にタイトルを持って行かれてしまう、という現象が起きるのが競馬の醍醐味の一つだとすれば、その面白さは、少なくとも今の時点においては、まだ失われていない、と言えるだろう。

オークス、ダービーで否が応にも見せつけられた巨大ファームの“力”は依然として絶大で、いずれ、上記のような小さな生産者達を飲み込んでしまうときが来るのかもしれないけれど、そんな時代からこそ、せめて機会があり続ける限り、じわっと、小さな牧場たちを応援できればよいな、と思うところである。

*1:唯一牙城を崩したのが16番人気のコメート千代田牧場、5着)だった、というのが何ともシュールだったが・・・。

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