世界ランクでは遥か上の存在だった南アフリカを終了間際の逆転トライで下す、というビッグサプライズで幕を開けたラグビーW杯。
厳しいスケジュールで臨んだスコットランド戦では大敗を喫したものの、サモアに続き、最終戦の米国にも勝利し、「3勝1敗」という堂々の戦績で大会を終えることになった。
前日にグループリーグ敗退が決まってしまっていたこともあって、今朝行われた最後の試合に、早起きしてテレビにかぶりつくまでの気力は湧かなかったのだが、過去の大会では、最初の1,2試合以降、LIVEでチャンネルを合わせる気にすらならなかったことを考えると、今大会の日本代表はまるで違う次元にいた、というほかない。
自分は、ラグビーが冬場の華、だった時代*1に何度か秩父宮や国立に足を運んで、熱気に圧倒された経験も持つ世代の人間だから、ラグビーの面白さもそれなりに分かっていたつもりだった。
でも、今大会で日本代表が見せた、研ぎ澄まされた低いタックルや敵陣での密集からの押しの強さ、速さ、そして、派手さはないがミスもしない安定したボールハンドリングによる細かい連続攻撃には、今までに見たことのない美しさがあった。
そして、そんな日本の「美」が、これまで手の届かないところにいた世界の強豪国を慌てさせた、ということの爽快感たるや・・・*2。
4試合通じてロースコアの展開が続き、ボーナスポイント(4トライ以上)を取れた試合がなかった*3、というあたりに今後の課題が見えたように思われるし、ここから2019年までの間、どういう方向でチームを強化していくのか、なかなか難しい、というのも確かだろう(良い結果を残した後の地元開催、ということで、関係者の要求レベルも格段に跳ね上がると思われるだけになおさらである)。
ただ、世界に通じる手がかりさえ見えなかったこれまでに比べれば、大きく道が開けたのは間違いないだけに、いずれ訪れる2019年が、日本のラグビー界にとって最良の年となることを願ってやまない。
そして、「3勝」の快挙の陰に隠れてしまってはいるが、毎回取り沙汰されていて今大会でも日本代表の足を引っ張った試合形式の問題*4をホスト国の力でちょっとでも改善できるなら、(スタジアム一つ作るにも)懐が厳しい日本で、あえてW杯を開催する意味があるんじゃないか、と思うのである。
*1:早明戦でキャラの強い選手たちが執念をぶつけていた時代、そして、憎ったらしいくらい強いスター集団・神戸製鋼に、三洋電機が挑み続けていた時代・・・である。未だに自分の中でキッカーといえば五郎丸選手より今泉選手の印象の方が強いし、SHといえば浮かんでくるのは堀越選手であり、永友選手である。そして、選手の所属チームが「パナソニック」と紹介されることには常に違和感がある。
*2:ジャイアントキリングを成し遂げながらも、たった一度の負けで不運にも決勝トーナメント進出を逃す、というのは、アトランタ五輪でのサッカーU-23代表を彷彿させる展開だが、最後まで自分たちの戦い方を徹底して単なる“番狂わせ”以上のインパクトを与えた、という点では、むしろロンドン五輪のU-23代表の戦いぶりに似ていたような気がする。
*3:それが、同じ勝ち数でありながら、南アフリカ、スコットランドの後塵を拝することになってしまった最大の原因でもある。
*4:そもそもグループリーグの構成チームが「奇数」で、チームごとに試合のローテーションがバラバラになる(したがって、どこかで「捨て試合」を作らないといけなくなる)とか、最終戦の日程がずれる、なんていうのは、この種の真剣勝負の大会の在り方として好ましいものではないはず。