圧倒的な強さがもたらした凡庸。

箱根駅伝は、結局、“どこから見ても青山学院大学の圧勝”という結果に終わった。

往路を終わった時点での2位とのタイム差が3分ちょっと、と、昨年よりも小さかったこともあって、6区がスタートした時点では、2位の東洋大以下のチームにも十分逆転のチャンスはあったはずだが、前日の監督のインタビューで“名指し”で注目選手に挙げられていた青学の1年生(小野田選手)が区間2位の好走。

一方の東洋大は、服部兄弟に次ぐエース格、と目されていた口町選手*1がトップとの差を縮められず、3位の駒澤大の選手も、区間10位に留まる。

こうなると、エントリー変更で、7区〜10区を1万メートル28分台の選手で固めた青学大に太刀打ちできるはずもなく、文字通り、影も踏ませぬ襷リレーで、深緑の軍団が大手町まで駆け抜けることになった。

上位校の実力が拮抗している最近の箱根駅伝では、往路・復路の両方で優勝すること自体がレアで、今世紀に入ってから一昨年までの間の14回で達成したのは、駒澤大(2004年)、順天堂大(2007年)、東洋大(2008年、2012年、2014年)の3校(5回)だけだったし、2年連続して達成できたチームは昭和の時代まで遡らないと出てこない*2ほどだった。

それが、昨年、今年と、2年連続で往路・復路完全優勝を達成し、しかも今年は、最初の中継所では一度も首位を譲らない*3という結果だから、もう完全に駅伝の歴史を塗り替えてしまった、と言っても過言ではない。

7年前に復活出場したときは、23チーム中22位*4という散々な結果だったチームが、短期間でどうしてここまで強くなったのか、ということについては、これから至るところで取り上げられることになるだろうから、ここで深く突っ込むことはしないが、新年早々、“良いサイクル”が回っていく、というのはこういうことなのだなぁ・・・というのを目の当たりにすることができ、(監督の思惑どおり?)何となくハッピーな気分になったのは、自分だけではなかったはずだ。


ちなみに、今年の大会では、復路のスタート以降、首位の青学大から、2位の東洋大、3位の駒澤大まで、上位校の順位が変動することは一切なかった*5

また、中位以降でも、細かい順位変動はあったものの、暑さのせいでどのチームも慎重な走りに徹したためか、例年必ずどこかの学校がハマるような“大ブレーキ”は、ほとんど出なかったように思われる*6

毎年、途中の区間での分かりやすい逆転劇や、アクシデントによる順位変動を殊更に盛り上げようとする中継局としては、何とも歯がゆい展開だったのかもしれないが、個人的には、これくらいの落ち着きがあった方が、安心してみていられるわけで・・・。

力が勝るチームが作り出した“秩序”に支配された今年の箱根駅伝は、一見“凡庸”なレースのようで、実に味わい深いものであった*7

入れ替わりの激しい学生の世界。この2年の栄光の立役者となっていた主力選手たちも今春卒業していく中で、来年以降もこの“秩序”が保たれるかどうかは、全く予測のつかないところであるが、「強いチームが順当に勝つことの面白さ」を教えてくれた青山学院大には、是非このまま立ち止まらずに、来年まで歴史をさらに塗り替える勢いを保ち続けていてほしい、と思うところである。

*1:全日本大学駅伝では勝利を決定づける快走を見せてMVPを獲得した選手。

*2:1988年-1989年の順天堂大学。憎ったらしいほど強かった時代だ。

*3:この記録自体、40年近く遡らないと出てこない非常にレアな記録のようである。かつての強豪チームも1区に常に強い選手を配置していたわけではなく、2区、3区で逆転して完全優勝、というパターンが多かったことを考えると、あくまで戦略のアヤ、といえなくもないのだが、凄い記録であることに変わりはない。

*4:この大会では城西大が途中棄権、という扱いになっているので、実質的に最下位である。

*5:7区以降は、4位の早稲田大も順位が動かなかった。

*6:上位チームが着実に走り続けた結果、中位以降では繰り上げスタートが度々行われ、走行順を見ているだけではシード権争いの状況が今一つ分からない、というある種玄人好みの展開になっていたりもしたのだが・・・。

*7:見方を変えれば、これまで「強豪」と呼ばれていた各校が、復路で流れを変えられるような選手を投入するだけの選手層を有していなかった、という問題も露見するわけで、低調だった今年のニューイヤー駅伝と合わせて、日本の長距離界の今後にとってはあまり良い話ではないのかもしれないが、それはひとまず置くとしよう。

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