“最弱世代”が見せた意地に思うこと。

ジャンルを超えて名が知られているような有名選手がほとんどいないのはもちろん、J1リーグでレギュラー定着している選手すらあまり見当たらない*1
U-20の大会では、ことごとく「アジアの壁」に阻まれてきたから、「世界」での実績も乏しい*2
そして、選手選考でも、最後の2人が直前まで決まらない・・・

と、大会前はサッカーメディアから散々な言われようだったサッカー男子・U-23日本代表チーム*3

ましてや「ドーハでのセントラル方式」*4、という、往年のファンには悪夢のような舞台設定とくれば、「期待しろ」というのが無理な話だった。

それが、蓋を開けてみれば、あれよあれよという間に、グループリーグを3連勝で首位通過し、準々決勝でも難敵イランを3-0で見事に撃破。

単に勝っている、というだけではなく、登録23人中22人までをグループリーグでしっかり使い切る、という手倉森監督の手の込んだ選手起用に、使われた選手たちが毎試合きっちり応える、という、チームとしての戦いぶりが素晴らしい。

前回の五輪の時のU-23代表もそうだったのだが、自分は「弱い、弱い」という前評判を聞くと、どうしても応援せざるを得なくなるタチなので、今回のアジア予選はいつになく気合を入れて毎試合見ているのだが*5専守防衛で封じた北朝鮮戦から、決めるべき選手がきっちり決めるべきタイミングで仕事をしたタイ戦、点差以上に圧倒的なゲーム支配力を見せたサウジアラビア戦、と、メンバーは変わっても試合を重ねるたびに進化していく姿を見て、驚きを隠せなかった。

そして、“あわやあわや”のテキスト実況にハラハラさせられながら、後半の終わり際くらいにようやく映像が見られるところに駆けつけたイラン戦では、均衡を破った豊川選手のドンピシャヘッドに、試合にとどめを刺した中島翔哉選手の“確変”的スーパーゴール2発、と、これまでにないような興奮のるつぼに巻き込まれることになってしまった・・・。


今朝の準決勝で勝ち上がってきた次戦の相手はイラク。反対側の山でも地元カタールと宿敵韓国が順当に勝ち上がっている、ということで、ここまで来たとは言え、「あと1勝」を挙げるのは、決してたやすいことではない。

J2で低迷していたあのベガルタをJ1で優勝争いするチームに仕立て上げた手倉森監督が名将であることに疑いの余地はないものの、最後の最後で栄冠には手が届かなかった、という巡りあわせの悪さも気になるところではある。

それでも、登録メンバー全員の力でここまで戦い続け、一戦一戦進化を遂げてきたこのチームが、さらにひとつ、壁を乗り越えてくれるのではないか、という期待を抱かせてくれる。
特に、ここまでゴールを決めていない浅野選手と、U-23代表に対する批判を受け止めつつ、Number誌に以下のような熱いメッセージを残した南野選手が次戦で爆発してくれれば・・・と思わずにはいられない*6

「周りにどう思われていようと、僕らは自分たちが持っている熱い気持ちを信じてプレーするしかない。ただ、これを僕が口でいくら説明しても、意味がないし、説得力もありません。僕らはリオ五輪への出場権を勝ち取って、結果で見返すしかないんです。」(南野拓実ゆとり世代は、結果で見返す」Number893号67頁(2016年)、強調筆者)

彼らが蘇らせるのが、23年前の当地の「悲劇」の記憶ではなく、20年前、同じ「セントラル方式」で世界への壁を突き破ったアトランタU-23代表の「歓喜」の記憶となることを、今は切に願う。

そして、常にドーハ世代と比較され、“ハートが”云々と言われていた20年前の世代が、その後世界で示したのと同じような存在感を、今のU-23世代がこの先示していってくれるようになることを、自分は密かに祈っている。

*1:とはいえ、J2レベルでレギュラーを張っている選手は多いわけで、高卒選手がJ1ですぐに活躍していた頃とのリーグ全体のレベル差を考えると、そんなに悲観するような話ではないはずなのが。

*2:もっとも、これはロンドン五輪に出場したU-23代表も同じことで、最近ではそう珍しい話ではない。

*3:散々言ってくれるメディアはそれでもまだマシな方で、グループリーグの2試合目くらいまでは、U-23の五輪予選をやっていることを知っている人すら、周りにはほとんどいなかった。

*4:同じセントラル方式でも、あの時はリーグ戦で決着を付ける方式だったから今回とはちょっと違うのだけど。

*5:開催地が中東で、試合開始時刻が毎回22時30分、と、仕事上がりにバーで見るのにちょうど良い時間、ということもあるのだが・・・。

*6:個人的には、左サイドには山中選手を入れ、センターバックを植田選手、奈良選手のコンビで組ませ、中盤を遠藤選手、大島選手、中島選手の3人が共存できるようなフォーメーションで組んでくれれば、最高の試合ができるんじゃないかな・・・と思っているのだけれど、その辺は蓋を開けてのお楽しみか。