歴史が塗り替えられた日。

絵に描いたようなカウンターで、久保選手が流し込んだ先制ゴール*1
そして、延長戦を覚悟した後半ロスタイム3分過ぎ、ペナルティエリアの外側から、地を這うような弾道で“最後のこぼれ球”を美しく叩きこんだ原川選手の決勝ゴール*2

五輪切符がかかった試合で、こんなに気持ちの良いゲームが見られるなんて、大会前には想像もできなかった。

所詮アジア予選じゃないか、という声もあるだろうし*3アトランタの時の代表からもうずっと五輪には出続けているじゃないか、この程度で騒ぐな、という突っ込みもあることだろう。

だが、いかにアジアの中の戦いといえども、過去何大会かの予選で、骨のある相手にこれだけ勝ち続けて五輪の切符を掴んだU-23代表チーム、というのは過去に存在しなかったのではなかろうか*4

そして、この「ドーハ」という場で、ロスタイムに、しかも「イラク」相手に勝負を決め、出場権を掴んだ、というところに、自分は、偶然というにはあまりに運命じみたものを感じてしまうのである*5


明確なチームコンセプトと、それを忠実に実行しようとする選手たちの意気、そして絶妙な起用法で能力を引き出す指揮官の采配。
選手たちの十分ミスや技量不足を指摘すればきりがないものの*6、、あと半年かけて磨けば、かなり良い線まで行けるチームを作れるように思えるだけに、今年の夏が待ち遠しくてたまらないのだが、その前に、20年前は果たせなかった「アジア第1代表」としての本選進出を目指して、あと1試合、美しい連動を見せてくれれば、と思っている*7

*1:鈴木武蔵選手のサイド抜き&ドンピシャクロスは、後々まで語り継がれて欲しい一世一代のプレー。

*2:その前に南野選手の絶妙なクロスと、勇猛果敢なオナイウ阿道選手の飛び込みが、歓喜ルーズボールを生み出したことも忘れてはいけない。そして、まだ若い阿道選手は、これで2試合続けて“影の主役”を演じたことになる。

*3:前評判どおり、イラクの攻撃には鋭いものがあったが、もう一段上のレベルのチームなら2,3点取れそうなチャンスを逃していた展開を、詰めの甘さで1点どまりにしてしまったことが、敗退を招いたことは否めない。

*4:セントラル方式で行われたアトランタ五輪予選では初戦引き分けスタート(相手はイラク)だったし、圧倒的な強さを誇ったシドニー五輪予選の時の最後の相手は、カザフスタンとタイだから、そんなに特筆すべき話でもない(もっとも、翌年、そのカザフスタン相手に、A代表がとんでもない目に合うことになってしまうのだが・・・)。※追記 夜中に書いたために時系列がグチャグチャになってしまったのだが、A代表がまさかのスコアレスドローを食らって青ざめたのは、アトランタ五輪の翌年のこと。その2年後に、アルマトイで進化を見せつけたのがシドニー五輪代表、というのが正しいストーリーだった。

*5:ただの年寄りの感傷、と言われてしまえばそれまでなのだが。

*6:特に毎試合奮闘しているGKの櫛引選手を除くと、守備は結構危なかっしい(植田選手は比較的安定しているものの、後の守備陣の選手達は、相手に寄せきれなかったり、不用意なファウルを与えたりして、ピンチを招くことが少なくなかった)し、攻撃陣もトラップミスやゴール前での思い切りのなさが目立つ(唯一迷いがないのは久保選手くらいだろう。大会を通じてさすがの貫録を示している)。

*7:特に、時々いい味を出しているものの、まだ“脇役”に甘んじている感が強い南野選手と、なかなかJでの持ち味が出ていない浅野選手には、最後に見せ場を、と思わずにはいられない。

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