現実になってしまった悲しい予感。

アテネ、北京、ロンドン、と過去3大会の五輪に出場し、ベスト8、ベスト4、準優勝、とステップアップを遂げてきていたサッカー女子日本代表
だが、「金メダル」の夢を賭けて戦うことになるはずだったリオへの道は予期せぬ形で閉ざされようとしている。

初戦のオーストラリア戦から昨日の中国戦まで、「今日は勝てるだろう」、「今日は勝ってくれるだろう」、「今日こそは負けるはずがないだろう」、というテレビ桟敷の呑気な期待は、いつの間にか落胆に変わってしまった。

自分は、ネットの速報と新聞の悲痛な論評で最初の2試合の結果に触れた後、中国戦になってようやく試合の時間に運よくチャンネルを合わせることができたのだが、過去のW杯や五輪で当たり前のように目にすることができた小気味よいパスワークや思い切りの良い縦攻撃は影を潜め、画面の向こうから伝わってくるのは焦燥感ばかり・・・。

横山選手が前線で走り回ってもパスの出し手と呼吸が合わず、大儀見選手が個人技で敵陣に迫っても周囲との連係が今一つでなかなかシュートに持っていけない。
頼みの宮間選手は、ポジションが相手ゴールから距離が遠すぎてこれまでのような脅威を与えられず、サイドからの攻撃も迫力を欠く。

後半に入って、岩渕、川澄といった才女たちを次々とフィールドに送り込んだものの、戦術なのか、バランスが悪いのか、体格の良い中国守備陣に対して確度の低いロングクロス主体の単調な攻撃を繰り返すばかりで、「これだ!!」というシーンはなかなか訪れない。

この日の試合に関して言えば、「絶妙なパス回しと、意表を突く縦パス・サイドチェンジを巧みに織り交ぜて相手の守備陣を翻弄する・・・」という、過去の“なでしこ”の奥義を伝承していたのは中国の方で、一見攻め続けているように見えても最後まで決定機を創り出せなかった日本代表は、スコア以上の完敗、というのが率直な印象だった。


昨年のカナダでのW杯で、グループリーグから決勝トーナメントまで毎試合冷や汗ものの試合を繰り返し、決勝でもこれまでにないような厳しい戦いを強いられたのを目撃して、「リオ五輪の出場さえまだ約束されていない」と書いたのは、8か月ほど前のこと*1

あの大会での日本女子代表のパフォーマンスが、ピークだった2011年W杯〜2012年五輪の頃に比べて比較にならないくらい落ちているように感じられ、その一方で、アジアのライバルだったオーストラリア、中国、韓国といったチームが、いずれもグループリーグを突破して決勝トーナメントでも健闘した、という状況を見て、素人目にも嫌な予感がしたゆえのコメントで、できることなら杞憂に終わってほしかった予想だったのだが、これまでの予選3試合を見る限り、事態は想像以上に深刻だった、ということなのかもしれない*2

開催地が大阪で多少なりとも地の利を生かせることに加え、“厳しい”と言われ続けていた男子U-23代表が同じ集中開催方式で見事に予選突破を果たしたことから、戦前は楽観的なムードが支配的だったメディアも、予選が始まって1週間しないうちに早くも絶望ムードに支配されつつある。

初戦で北朝鮮を完封して波に乗ったU-23男子代表とは逆に、初戦のオーストラリア戦で完敗したことで歯車が狂ってしまったのか、それとも、選手選考の過程、あるいは、予選に向けたコンディション調整の過程で何か重大な瑕疵があったのか*3

大会が終われば、いろいろと明らかになってくる敗因もあると思うのだが、「これですべてが終わり」ではないだけに、せめてベトナム戦ではこれまでの溜飲を下げるような豪快な試合をしてほしいと思うし、願わくば最後の北朝鮮戦まで、細い細い希望の糸がつながっていることを、自分は願ってやまない*4

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150706/1436454879

*2:個人的には去年のW杯は、明らかにピークアウトしていた澤選手を中途半端に起用しようとしたのが苦戦の原因だと思っていて、それがある意味“スッキリ”した形で臨めるようになったことがプラスに働くかな・・・と思っていたところはあったのだが、突き付けられたのは、澤選手だけでなく、2011年、2012年の主役だった選手たちが皆、もはや往年の彼女たちではなかった、という悲しい現実だった。

*3:澤選手から中盤のポジションを“奪った”はずだった宇津木選手が「コンディション不良」を理由に招集されず、精神的支柱になるはずだった安藤選手の招集も見送り。一方で、最終合宿まで残していた猶本選手ら次世代の若手選手たちも直前で落選となり、結果的に“代わり映えのしないメンツ(ただし飛車角落ち)”になってしまったことは否めない。

*4:既に、バスケやラグビー、ホッケーといった競技で女子代表の五輪出場が決まっている中、これからも若い世代の競技者たちに“人気競技”として認知してもらうためには、地元の予選で覇気なく敗退してしまう、という最悪の事態は何としても避けられなければならない。

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