崩れた“三強”の公式。

レース前から、ノーザンファーム出身のリオンディーズサトノダイヤモンドマカヒキの3頭に注目が集まり、“三強対決”で盛り上がっていた今年の皐月賞

自分の世代だと、特に、“平成の三強”*1とか、“BNW”*2の印象が強いから、なのかもしれないが*3、戦前から「傑出した馬」として3頭くらい名前が挙がっている時は、大概、その3頭で上位を独占するか、1頭こけても残りの2頭でワン・ツー、というパターンになる、というのが、自分の中で長年定着していた「公式」だった。

そして、1番人気サトノダイヤモンド(2.7倍)、2番人気リオンディーズ(2.8倍)、3番人気マカヒキ(3.7倍)までの人気が頭一つ抜けていて、4番人気(エアスピネル)になると一気に16.1倍までオッズが跳ね上がる、という状況だった今回のクラシック一冠目は、まさにこの公式がぴったりはまるレースになるはずだった。

それがどうだ。

終わってみれば、ゴールを先頭で駆け抜けたのは、後方待機から巧みにまくって直線で弾けた共同通信杯ウィナー、8番人気のディーマジェスティ

一番中山向きのレースができると思われていたリオンディーズがレース中盤から“暴走”し、1000m・58秒4というそのまま先頭で走り切るには厳しすぎるペースで逃げを打たされてしまったこと*4に最大の原因があるとはいえ、昨年の皐月賞共同通信杯から直行したドゥラメンテと、共同通信杯勝馬リアルスティールが上位を独占していたことを思い返すと、ここ数年あまり本番で結果を残せていない弥生賞上位馬と、オーナーが「目標はダービー」と公言しているきさらぎ賞からの直行馬*5を「三強」に押し上げていた事前の予想メディアの論調が、果たして正しかったのかどうか、という話になってくる。

昨年、皐月賞で一敗地にまみれたサトノクラウン*6のその後の活躍*7を見れば分かる通り、クラシックレースで本命視されるほどの戦績とレースセンスを持った馬は、やっぱり並みの馬ではない素質馬なのだろうし、大きな故障でもしない限りは、その後も堅実に実績を積み重ねる可能性は十分にある。

ただ、目の前のレースに勝てるかどうか、というのは、単なる“素質”だけで決まるものではない、というのもまた事実で、調教技術も血統背景も相当熟成してきて、G1級のレースともなれば遜色のない馬が十数頭揃うようになった今の日本競馬で、安易なスターメイク的報道に飛びつくのはちょっとリスクが高いんじゃないかな、と思わずにはいられない*8


何だかんだ言っても、自分はこの世界の“スター神話”が大好きだし、ダービーでも懲りずに、マカヒキサトノダイヤモンドディーマジェスティの3頭を“新3強”と決めつけて、ボックス買い等々に走ってしまいそうなのだけれど、馬券を買う前に、ふと我に返って馬柱を冷静に眺めるくらいの余裕は残しておきたいものである。

*1:泣く子も黙るオグリキャップスーパークリークイナリワン

*2:クラシック三冠をきれいに分け合ったナリタタイシン・ウィニングチケット・ビワハヤヒデ

*3:ついでに言うと、96年のイシノサンデーロイヤルタッチダンスインザダークの3頭の戦いも印象に残っていたりする。ダービーで伏兵フサイチコンコルドが割り込んできたゆえに、公式にきっちり当てはまらない、という問題はあるが。

*4:その結果、直線で苦しくなってヨレてしまい、進路妨害で降着、という散々なことになってしまった。マカヒキの切れ味を封じるための作戦だったことは一応理解できるし、結果的に「マカヒキを勝たせなかった」という点では目標を達成できているとも言えるのかもしれないが、前週のルメール騎手に続き、M・デムーロ騎手も、「外国人騎手といえども大舞台で常に理想の騎乗ができるわけではない」という当たり前の現実を思い知らせてくれる形となった。

*5:データ的にはあまり良い実績が残っていない。

*6:弥生賞まで無敗の3連勝を記録し、堂々の1番人気に祭り上げられていたが、6着惨敗。

*7:ダービーでは3着、今年の京都記念でも低人気を覆して優勝、と復活を遂げている。

*8:ちなみに、週刊競馬ブックは、今回のレースでも冷静にデータを読み解き、ディーマジェスティを本命に推していた。見事というほかない。

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