真っすぐに波乱を引き起こした名牝。

ここ数年、お約束のように荒れ続けているヴィクトリアマイル

昨年は最低人気の馬が飛び込んで3連単の配当がが2000万円超え*1
その前の年は、G1馬同士の組み合わせながら(ヴィルシーナメイショウマンボ)、いずれも人気がなかったために馬連の配当が8000円超え*2

春シーズンでたった一度の古馬牝馬G1で、一線級の牝馬が軒並み照準を合わせてくるにもかかわらず、距離は「マイル」というのがこのレースのミソで、いわゆるマイラー、スプリンター路線で活躍している馬たちと、日頃、中長距離路線を主戦場としている馬たち*3との力量比較が難しいゆえに、どうしても人気と現実のレース適性との間に乖離が生まれがちになる。

また、出走馬の中には、日頃、牡馬に交じってG1、重賞路線を歩んでいる馬も多いから、馬柱に記された近走の「順位」だけで優劣を決めるのも難しく、牝馬同士の戦いに戻った瞬間に実績馬が輝きを取り戻す、というパターンも決して少なくはない。

そして、それは今年も例外ではなかった。

人気で先頭を走っていたのは、オークス秋華賞の2冠を持ちながら、マイルでも【1200】という連対率100%を誇るミッキークイーン
そして、続いたのは、実績で頭一つ抜けたショウナンパンドラと、2年前の1番人気馬・スマートレイアー

スマートレイアーが人気になったのは、近走好調な上に、ここ数年、前に行った馬が残るという展開が続いていたことが大きかったのだろうが、同馬は不運にも、発走後レッドリヴェールカフェブリリアントとの激しい先頭争いに巻き込まれてしまう。

そうなると、後に残るのは「差し」脚質の1,2番人気の馬たちで、1000m通過が57秒前半というハイペース、しかも、開催週を重ねて差し・追い込みが決まりやすくなってきた府中の長い直線、とくれば、そのまま実績のある2頭で決着・・・ということになっても不思議ではないところで、実際、この2頭は上がり3ハロン33秒台の脚を使って上位に食い込んでいる*4

だが、この2頭のさらに上を行ったのが、戸崎圭太騎手が操るストレイトガールで、7番人気の低評価ながら、最後の直線では、魔法でもかけられたように馬群から一頭だけ抜け出し、ぽっかりと空いたインコースを圧倒的な強さで駆け抜けて、2着を2馬身差以上引き離す圧勝劇を演じてしまったのである。

昨年、この馬がヴィクトリアマイルスプリンターズSで33秒台の鬼脚を繰り出して、堂々のG1・2勝の実績を挙げたことは一応覚えていたし、新聞の馬柱にもその戦績はちゃんと残っていたのに、「7歳」という年齢と前哨戦の惨敗に目が行って馬券に食指が伸びなかったのは痛恨というしかないのだが、掲示板に上がった「1分31秒5」というコースレコードに迫るタイムと、あの勝ちっぷりを見たら少々の悔しさは吹き飛んでしまったし、これまで何度も味わった「この馬がいたか・・・」という感覚を性懲りもなく味わえたのも、またオツなものではあった。

個人的には、「無冠の最強牝馬」として2年越しで応援しているルージュバックが、得意だったはずの東京コースでの切れ味勝負に敗れ、掲示板に食い込むのが精一杯だった、という現実にちょっとしたショックを受けているところだし、このレースの直後に行われた新潟の最終レース(飛竜特別)で、パドックでピンと来た*5ピュアリーソリッドが藤田菜七子騎手に初の特別戦勝利をプレゼントしたにもかかわらず、自分の懐には何の見返りもなかったこと*6など、今年の春シーズンを象徴するようなあと一歩の足りなさはこの日も変わらなかったのだが、それでも、名牝列伝の一コマを一人の観衆として見届けられたことを感謝するのみである。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150517/1431882474

*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20140518/1400436264

*3:今年で言えば、ジャパンカップウィナーのショウナンパンドラなどがまさにこの典型で、後述するルージュバック桜花賞以来のマイル挑戦だった。

*4:その意味で、例年に比べると今年はまだ“順当”な決着に近かったと言える。

*5:前走で20キロ減っていた馬体重がかなり戻っていたことに加え、周回中の気合乗りもかなり良かった。

*6:せめて記念馬券程度の複勝でも買っておれば…と思わずにはいられなかった。

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