五輪まっただ中に発売されたNumberの908・909・910合併号。
ライター陣が五輪取材に追われている中での発行だけに、「甲子園最強打者伝説」という特集見出しを見ても、最初はいつもの定番企画&五輪増刊号までの“穴埋め”かな、というくらいの感想だった。
だが、いざ読んでみたら、想像以上の渾身の企画ぶりに驚かされる。
Number(ナンバー)908・909・910号 甲子園最強打者伝説。 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/08/10
- メディア: 雑誌
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特に、清原和博選手が甲子園で打った13本のホームランを「打たれた投手」の側の視点で描いた「13本のホームラン物語」*1は、北海道の砂川から、高知・宇部まで、全国津々浦々に散らばる“元球児”の声を集めた取材力にまず圧倒。
また、横浜商業の三浦将明投手から、宇部商の田上昌徳投手、古谷友宏投手まで、描かれている8つの高校の“元球児”達のエピソードが実にそれぞれで、事実は小説よりも奇なり、を地で行くような“あの時の勝負”をめぐる葛藤やその後の人生の波乱万丈さからは、いろいろと考えさせられるところも多い*2。
この後には、同じ鈴木忠平氏が、立浪和義、片岡篤史というPL学園の後輩達のコメントを中心に構成した「最強打者の『背中』」という記事も掲載されており*3、実に17ページにわたって球児時代の清原和博氏を本人以外の証言で描いた記事が続く。
もちろん、「甲子園最強打者」というカテゴリーで括られている特集だから、星稜高校時代の松井秀喜選手の超高校級なエピソードや*4、今でもプロで活躍する大阪桐蔭勢のエピソード、さらには全国津々浦々の知る人ぞ知る元球児なども取り上げられているのだが、冒頭の2つのノンフィクションの存在感はやはり圧倒的で、表紙の写真と合わせて、今回の特集に込められたNumber編集部のメッセージを感じずにはいられない。
そして、80年代のPL学園の光と影に触れた後に、今年「最後の試合」を戦った12人を描いた記事*5を読むと、またいっそうじわっとくる。
「永久保存版」の名に恥じないこの特集号。夏の旅のお供にでも、ということで、お奨めしておきたい。