2016年9月2日のメモ

週の初めに、みんな台風に脅えていたことが嘘のような晴れ空の下で一週間を終えたが、天気図を見るとまた西の方に台風が・・・。
こんなサイクルを繰り返しながら、いつの間にか秋、そして冬に近づいていく、という年後半のサイクルがまた始まった。

W杯最終予選初戦での歴史的敗北

2018年ロシアW杯アジア最終予選、地元・埼玉スタジアム、という絶好の舞台で迎えた開幕戦でUAE相手に1-2、と日本代表は歴史的な敗北を喫した。

記事にもあるとおり、「W杯の最終予選の初戦を落として本大会まで行けた国」というのは、現行の予選方式となった最近の大会では皆無。
当然ながら日本代表も、フランス大会予選の頃から初戦はきっちり勝つか手堅く引き分けるか、という形を貫いてきたし、セントラル方式で行われたドーハの予選でも、所詮のサウジアラビア戦は引き分けで乗り切っている。

自分は試合の映像をほとんど見ていないので、“疑惑のカタール人主審”の笛がひどかった云々、という話にはコメントできないのだが、仮に主審の判定に問題があったとしても、25本のシュートを放って1点、2点しか取れなかった、という事実に変わりはないし、これまで散々課題として指摘されていた“球際の弱さ”“個の弱さ”が改善されていない、という事実にも変わりはないわけで、これからより笛が厳しくなりそうなアウェーでの戦いも続く中で、そんな些末な話で思考停止していたら、今年のうちにW杯への道が閉ざされてしまう・・・

五輪明け、“いつの間にか始まった”感覚で初戦を見ていたのはメディアとライトな視聴者の方だけで、フィールド上の代表選手も現場のスタッフも、一戦必勝の覚悟で試合には臨んでいたと思うのだけれど、同じ地元での初戦でも、97年ウズベキスタン戦のような高揚感とは程遠い今の状況を鑑みると、そろそろ落とし穴に嵌ってしまうかもしれないなぁ、と思わずにはいられない。

NTTドコモ対タタ・グループの戦い

6月にロンドンの国際仲裁廷でタタ側の義務違反と約1,172百万米ドルの損害賠償を命じる決定を勝ち取り*1、日本側にとってはハッピーエンドな結末となったかと思われたインド合弁問題だが、引き続き泥沼から抜け出せていない、ということが日経紙上で報じられている。

NTTドコモとインド財閥大手タタ・グループのインドでの合弁解消を巡る交渉が泥沼化している。(中略)6月には国際仲裁裁判所がタタに約1200億円の賠償金支払いを命じたが、タタは『当局の許可が無いと払えない』と及び腰だ。規制に翻弄される日印企業の迷走劇の行方は、印当局と外資との今後の関係を占うリトマス試験紙にもなりそうだ。」(日本経済新聞2016年9月1日付朝刊・第11面)

一般論としては、「新興国リスク」の一事例ということになるのだろうが、実務サイドの人間の視点で見ると、「撤退時に取得価格の50%(定額)で株式を売却できる」などというオプションを、合弁契約時に、そうでなくてもうるさいインド企業相手に良く押し込めたなぁ、というのが率直な感想になってくる*2

撤退時のリスクまで想定した合弁契約条項が見事にはまり、仲裁地を英国に設定したことも効を奏した結果となっている*3本件が「悪い例」として紹介されてしまうようだと、ドコモ関係者の方々にとっては気の毒な面もあるわけで、物事の切り口、というか、取り上げ方をもう少し考えた方が良いのではないかな、と思わせてくれるニュースでもある*4

東芝うつ病解雇事件・差戻し控訴審判決

うつ病による休職期間満了後に解雇されてから12年、長い長い戦いが続いてた東芝うつ病解雇事件が、最高裁での差戻し判決(最二小判平成26年3月24日)を経て、東京高裁で実質的な決着を見ることになった。

これだけ長期間になってくると、当事者の請求の内訳を整理するだけでもかなり大変になってくるのだが、原告ご本人のブログに掲載された判決主文と、前回の高裁判決(東京高判平成23年2月23日)を比較すると、月額賃金相当の賠償額が「26万9683円」から「47万3831円」に引き上げられるなど、最高裁判決の趣旨*5を踏まえた増額(というか、原告の請求に合わせた修正)がなされていることが分かるし、それ以外にも、年5分の遅延損害金が5年以上分加算される、といった効果はあるから、原告にとって圧勝に近い状況になっていることは間違いないように思われる。

あの平成26年最高裁判決が出たにもかかわらず、差戻し控訴審でなお争って、より自分たちの首を絞める判決をもらってしまった会社の姿勢には個人的には首を傾げたくなるところも多いし、ましてや、いろいろあって内情が晒されてしまった今、「そういう会社だから・・・」と後ろ指を差されるリスクもより増すような気がしてならないのだが、どこでどうボタンを掛け違えてしまったのか。

法の理屈以前の話として、いろいろと考えさせられるところは多い。

*1:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2016/06/24_00.html

*2:おそらく2009年の出資当時は、皆、右肩上がりの成長曲線の絵しか頭の中になく、まさか企業価値が50%以下に減少するなんてことは誰もが夢にも思わなかった、ということなのかもしれないが。

*3:もしインド国内の裁判所や仲裁廷が管轄として指定されていたら、わずか1年半という期間でドコモ有利な決定が得られたとは考えにくい。

*4:ちなみに、2014年の提携解消後もインド国内のスターバックスのフリーWi-Fiの画面には、「タタドコモ」というブランドが表示されていた。契約がどうなっているかは知る由もないが。

*5:「被上告人が安全配慮義務違反等に基づく損害賠償として上告人に対し賠償すべき額を定めるに当たっては,上告人が上記の情報を被上告人に申告しなかったことをもって,民法418条又は722条2項の規定による過失相殺をすることはできない」という考え方。

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