またしても摘まれた“神話”の芽。

家電店で生まれて初めて買った短波ラジオで、「絵」のない世界で想像を膨らませながら、エルコンの激走に最後まで祈りを捧げつづけたのは17年前の話。
いつしか、「凱旋門賞」が地上波でリアルタイムに放映されるのも珍しいことではなくなり、今年からは遂に、馬券まで買えるようになった。

そんなタイミングで、旬のダービー馬マカヒキが華麗な勝利を飾っていたら、実に素晴らしい“神話”になっていたことだろう。

だが、結局、終わってみれば、神話になろうとしてなれなかった過去の馬々*1と同じく、いやそれ以上に、厳しい現実が突き付けられることになってしまった。

いくら斤量に恵まれているとはいえ、日本の3歳馬を成長途上の秋シーズンに欧州に運び、慣れない環境で戦わせる、というのは、自分はやっぱり無理があると思っていて、3歳時に国内で足場を固めてG1タイトルを2つ、3つ獲ってから海を渡る、ということでも遅くないんじゃないかな、と考えていたし、国内でマカヒキの馬券が売れれば売れるほど、しめしめ・・・という思うところはあった。

だが、好スタートを切って絶好の位置に付けていたように見えながら、最後の直線で全くいいところなく失速したマカヒキの姿を見てしまうと、正直、日本馬が照準を合わせるべきレースはここではないんじゃないか、とすら言いたくなる。

マカヒキだけでなく、キングジョージとドバイでのタイトルを引っ下げて日本でも人気になっていたポストポンドや、過去の実績からすると最有力に推しても良いくらいだったレフトハンドやシルバーウェーヴ、といったフランス勢までもがコテンパンにやられてしまったこと、そしてその代わりに、優勝したファウンドを筆頭に、アイルランド・オブライエン厩舎所属&ガリレオ産駒の3頭が上位を独占したことなどを考えると、今年の競馬場がロンシャンではなくシャンティだったことも影響しているのかもしれないが*2、いずれにしても今年に関しては、日本勢がサプライズを起こせる余地はほとんどなかったような気がする。

照準を合わせるべきレースを少し見直して、古馬になってから春のドバイや夏のキングジョージあたりを積極的に狙っていく。その上で、実績を残せた馬をそのまま欧州に滞在させて、“駄賃”で凱旋門賞まで挑戦させるくらいの方が、日本馬の評価も存在感も高まるし、応援するファンを失望させずに済むのでは?と思うのは自分だけだろうか。


今年に関しては、「マカヒキが負けたこと」に対する失望よりも、昼間のスプリンターズSで断トツ人気のビッグアーサーが吹っ飛んで大損害を被り、さらに夜の凱旋門賞で堅く買ったつもりが全くの当て外れで、わが国における“海外競馬”の情報の偏り*3を改めて実感させられたファンの失望の方が大きいかもしれないけれど・・・。

優駿 2016年 10 月号 [雑誌]

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*1:エルコンドルパサーオルフェーヴルは、勝てなくても一種の神話を作ったからこの系譜に連ねるのは妥当ではないと思うが、日本中の期待を背負わされた挙句、レースに敗れてかつ失格、という憂き目にあったディープインパクトや、“父の雪辱を”“被災地の思いを”といったフレーズとともに海を渡って散ったキズナなどは、まさに“神話になれなかった組”で、マカヒキもその辺を血と共に忠実に受け継いで同じ系譜を辿ることになってしまった。

*2:勝ちタイムもこれまでのレースに比べるとべらぼうに速い2分23秒台である。

*3:出だしっからこれだと、今後の海外競馬の馬券の売り上げに影響するんじゃないか、ということを気にせずにはいられない。そして、少なくとも「優駿」レベルの情報で海外馬券に手を出すのはやめよう、と、自分は固く心に誓ったのであった。

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