今年から海外競馬の馬券が日本国内で買えるようになり、地上波でも海外競馬の中継が見られる幸せな世の中になりつつある。
凱旋門賞以降、せっかく応援馬券が買えるのに肝心の日本馬の結果が伴わないレースが多かったのが玉に傷だったのだが、今年の香港G1シリーズは、今味わえる幸福を存分に感じられる貴重な機会となった。
日本馬が大挙5頭も出走し、1〜4番人気を占めたメインの香港カップでモーリスが圧巻の走りを見せて有終の美を飾ったのはまぁ予想どおり、というところだったのだが*1、それ以上に驚かされたのは、芝2400mの香港ヴァーズで、前走天皇賞14着、日本でも超一流の戦績を残しているとは言えないサトノクラウンが、あのハイランドリール(凱旋門賞2着、BCターフ優勝)を打ち破った、ということ。
2000m、2400mという、どこの国に行っても看板となりうる舞台で本馬の層の厚さを見せられた、ということは、今後にとっては極めて大きいし、今回王者に輝いたのが、Silver Hawkの流れを引く父系(父・スクリーンヒーロー)に母父・カーネギー、母はかつての名門メジロ牧場の系譜に連なる、という不思議な混在血統の馬だったり、日本になじみの薄いアイルランド血統を色濃く反映した馬だったりしたことは、ともすればサンデー系飽和状態で頭打ちのようにも思えた日本の馬産界に、新たな可能性を示してくれたとも言える。
思えば、その前の阪神JFで、順当過ぎる先行抜け出しで圧勝したソウルスターリング*2も、父はFrankelで、母はMonsunの血が流れるフランス馬(その後日本に持ち込み)と、血統的なバックグラウンドは日本国内では異色の部類に属する馬だった。
ここ数年、サンデーサイレンス−ディープインパクトの血統ばかりが猛威を奮う一方で、世界の中でのポジションは足踏みしていたような感覚もあった日本の競走馬たちが、異なる血の注入によって再びレベルを底上げしつつあるのは、非常に心強い材料だと思う。
日本と世界の距離がより縮まった、と断言するのは、まだ少し早いかもしれないが、できることから、モーリス、エイシンヒカリの引退後も、世界のレーティング争いで上位をキープし続けられるような馬が次々と出てきてくれることを、今は心の底から願っている。