12月24日〜29日のメモ

夏場くらいから勢いよく始めたものの、何となく尻切れトンボ的に止まってしまっている「備忘メモ」シリーズ。
とはいえ、ネタを溜めたまま新しい年に突入するのは心苦しいので、少し遡りつつ書き残しておくことにする*1

21世紀の電通事件、遂にここまで。

昨年亡くなった社員が労災認定を受けた、というニュースをきっかけに、今年最後の3カ月、話題に上らない日がなかった「21世紀の電通事件」。
そして、年の瀬も押し迫った29日になって、とうとうこの種の事案としては極めて異例の展開であることを象徴するような記事が躍ることになってしまった。

電通の石井直社長(65)は28日、都内で開いた記者会見で2017年1月で辞任する意向を表明した。同社の女性新入社員、高橋まつりさん(当時24)が過労自殺した問題で厚生労働省東京労働局が同日、労働基準法違反容疑で上司と電通書類送検したことを受けて責任を取る。石井社長は記者会見の冒頭で「高橋さんのご冥福を祈るとともに、ご遺族をはじめ、社会のみなさまにおわびを申し上げる」と謝罪した。そのうえで「全ての責任を取り、来年1月の取締役会をもって社長執行役員を辞任したい」と話した。取締役に関しては3月の株主総会まで続ける。後任の社長については「まだ白紙」とした。東京労働局の書類送検容疑は、高橋さんともう1人の男性社員に15年10〜12月、労使協定の上限を超える違法な残業をさせた疑い。東京労働局は28日の会見で「全容はまだ解明されていない」と説明。電通本社の上層部や3支社の幹部らの立件を視野に年明け以降も捜査を続ける。早ければ今年度内に書類送検する方針だ。」(日本経済新聞2016年12月29日付朝刊・第1面、強調筆者)

見出しになっているのは「社長辞任」の方だが、法務関係者としては、むしろ、(前日から話題になっていた)電通ほどの大会社で「上司が労働基準法違反容疑で書類送検された」ことのインパクトの方が遥かに大きい。

本件で、「残業指示」がどのレベルの強度で行われていたのか、三六協定上限との関係で残業時間がどのような過程を経て過少に申告されたのか、といった点の事実関係がもう少し明らかにならないと、軽々しく論じることはできないのだが、身につまされる思いをしている管理職社員は多いはず。

もっとも、個人的には、このニュースが炎上し始めて以来、「労働時間が長かったことだけの問題ではないだろう」とずっと思い続けているし、「三六協定上限超過」という点だけがフォーカスされる形で「事件」化されることは、働く者の環境改善に何ら寄与するところはないと思っているのだが、この辺が労働局、そして、労働行政の限界なのかもしれない。

迷走する労働政策〜 政府、正社員の副業後押し?/違法残業、社名公表厳しく

電通の一件もあって、注目度が一気に上がっている感がある労働政策だが、政府サイドでも“具体的施策”をいろいろと打ち出してきている。

12月26日付で厚生労働省が公表した「「過労死等ゼロ」緊急対策」*2などは、まさに機を見るに敏、といった感じで、具体的なターゲットの設定の仕方等*3に疑問の余地はあるものの、方向性としては昨今の潮流に反するものではない。

だが、12月26日付の日経紙朝刊に掲載された「正社員の副業 後押し」というのはどうなのか。

具体的な中身としては、現在厚生労働省が公表しているモデル就業規則第11条第6号(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000118959.pdf参照)を書き換える、ということのようで、そのこと自体は別に悪い話ではないのだが、元々「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」というのは、二重就業禁止の規定で、一般的な「副業」をすべからく禁止するものではない、というのが正しい読み方であるはず。

したがって、上記のような規定が就業規則に入っていようがいまいが、休みの時間を使って、フリーランスで物書きだとかWebサイトの製作だとか、地域の半分ボランティア的や農作業といった仕事をやっている人は今でもたくさんいるし、それが殊更に問題視されるようなこともなかったはずだ*4

政府が目指しているのが、そんな“小遣い稼ぎ”ではない本格的な「副業」を全ての労働者にやらせる、ということなのだとすれば、なるほどそれは高い志だ(苦笑)、ということになるが、本業ですら十分なパフォーマンスを発揮できずに四苦八苦している人が多い中で、「副業」まで手を出して力を発揮できる人間がどれだけいるのか、という素朴な疑問はあるし、そもそも「長時間労働是正」という話とどう両立させるつもりなのか、ということも全く理解できない。

「賃金水準の押し上げ」という話なら、労働者に「副業」という負担を負わせるのではなく、個々の企業の自助努力と労働市場の流動化を促進させる方向に舵を切るべきだし、「人手不足の解消」という話なら、IT化・自動化の促進でカバーするのが本来の形。
そして、「労働者の意識向上や、やり甲斐」などというものを掲げるのであれば、正直言ってそれは余計なお世話、だと思うのだが・・・。

まとめサイト問題

一部のネットベンチャー企業の今後のビジネスモデルに大きな影響を与えるかもしれない、と言われている「キュレーションサイト」問題。
日経新聞が「まとめサイト 不信の連鎖」というタイトルで27日から連載を始めているのだが、読み物としてはそこそこ面白いものの、何となく掘り下げ不足感は否めない。

「キュレーションサイト」の作り方の問題を指摘するためには、既存のメディアとの比較でどうなのか、という点をビシッと検証しないといけないはずなのだが、「インターネットの情報なんて所詮そんなもの」「何となくうさん臭いと思っていた」という表面的なイメージをベースに記事が構成されているから*5、問題意識が十分に伝わってこないのである。

個人的には、第三者委員会の報告書で、その辺についてどこまで突っ込んだ指摘がなされるのか、ということに期待してみたいと思っている。

法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムの審査結果発表。

昨年、初めて「補助金ゼロ」が出た、ということで話題となった「法科大学院への補助金配分」問題。
今年も9月の時点では、最低ランク(ゼロ)が7校、という状況になっていたのだが、その他のプログラム等を加味した最終結果が、文部科学省から公表された。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houka/1380774.htm

「各校が取り組む特色あるプログラムを評価した結果、10校が前年度から増額、31校が減額となり、このうち北海学園、明治、南山、近畿の4大学は補助金がゼロとなった。」(日本経済新聞2016年12月27日付朝刊・第34面)

昨年トップだった早稲田が145%→140%、東京も135%→125%となる一方で、慶応、京都などはアップ。
配分率100%を超えた学校は10校、補助金ゼロも4校*6、と昨年から変わっておらず、内訳で若干入れ替わりがあった程度なので、構造的には大きな変化なし、ということになるのだろう。

なお、文部科学省のHPに掲載されている各法科大学院の取組みとそれに対する評価を、どう読み解けばよいのか、という悩みは依然として残るものの*7、北海道で行われている知的財産分野の「サマーセミナー」が、「卓越した優れた取組」ベスト6に挙げられていることは実にまっとうで素晴らしいことだと思うだけに、他の法科大学院でも、これを見習ってスクールの「オープン化」の取組みを加速してほしいものだ、と心から思う。

将棋連盟調査委、コンピュータソフト不正使用疑惑に「証拠なし」

10月頃に突如として吹き出し三浦弘行九段による「対局中にコンピューターソフトを不正使用した」疑惑。
竜王戦の対戦相手は差し替えられた上に、一時は、現役棋士からも「クロ」を裏付けるような発言が出て、「疑惑」では済まない話なのだろうなぁ、と勝手に思っていたのだが、12月27日に第三者調査委員会が公表した報告書において、

「不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない」(日本経済新聞2016年12月27日付朝刊・第35面)

と認定されてしまう、という衝撃の結果に。

記事によれば、「将棋連盟が下した12月末までの出場停止処分は「非常事態でやむを得なかった」」としたものの、「ソフトの指し手との一致率」については、「計測のたびにばらつきがあり「不正を認定する根拠に用いることは著しく困難」、スマートフォンを解析しても「不正行為の痕跡は確認されなかった」(以上、前掲日経朝刊)と、完全にシロ一色。

そして、調査委員会の但木敬一委員長が「全体のために不利益を被った三浦九段を正当に遇し、一刻も早く将棋界を正常化するよう要望する」というコメントを出し、将棋連盟の謝罪を伝える翌日の記事に合わせて、木目田裕弁護士が

将棋連盟が科した出場停止処分は拙速な対応だったと言わざるをえない。」
「連名は第三者による調査結果がまとまるのを待って判断すべきだった。早急に三浦九段の名誉を回復する必要がある。連盟は損害賠償の責任を問われても仕方ないだろう。
日本経済新聞2016年12月28日付朝刊・第38面、強調筆者)

というコメントを載せるなど、一気に形勢が逆転してしまった感がある。

将棋連盟のホームページには、谷川浩司会長の会見要旨(http://www.shogi.or.jp/news/2016/12/post_1492.html)が掲載されているのみで、肝心の報告書全文が掲載されていないので何ともいえないところはあるのだが、どんなに風評が立とうと(週刊誌に報道されようが、インターネットで炎上しようが)「疑わしきは罰せず」という大原則を最後まで忘れるべきではない、ということを改めて思い知らされるトピックだな、とつくづく感じさせられた次第である。

「24時間営業」をめぐる論争

最近、電通の一件等もあって、とうとう「24時間営業」にまで矛先が向きつつあるようになっているのだが、そんな中、日経紙の日曜討論面で、「24時間営業取りやめ」を決めたロイヤルHDの黒須康宏社長と、吉野家HDの河村泰貴社長へのインタビューが掲載されていたのが、なかなか興味深かった*8

ランチ、ディナー用途がメインのファミレスと、小腹満たし需要も取り込める牛丼チェーンとでは、同じ外食でも置かれている立ち位置が全く違うから、この対比は本来ミスキャスティングだと自分は思うのだが、「24時間営業をしないこと」に対する前向き感が全開な黒須社長と、後ろ髪を引かれつつ24時間体制を維持することの厳しさを切々と語る河村社長のトーンの違いは、この業界にさほど馴染みのない読者にも伝わるだろうから、まぁよかったのかな、と。

個人的には、「高齢者は深夜帯に活動しない」という前提自体、今後は大きく変わってくると思っているし、「24時間営業の店がある」ということは社会の進歩の象徴だということを、世界中歩き回る中で痛切に感じているところもあるので、“24時間働かせるのはかわいそう”的な感情論でモノを言っている人々*9には、あえて、日本が世界の潮流から置いていかれるような選択をする意味についてもう一度考えてほしい、と思うところではあるのだけれど。

SMAP紅白出場辞退、そしてスマスマ最終回

めまぐるしくワイドショーの主役が入れ替わる今年一年の展開の中で、一年の最初から最後まで主役の座を下りなかったのが「SMAP」だったと自分は思っている*10

元々グループとしての消費期限はとっくに切れていたわけだし、1月の屈辱会見のままフェードアウトしてしまうことの空しさを考えれば、スッパリと「解散」という選択をしたことは自分は素晴らしいことだったと思っているのだが、年末になって「紅白歌合戦に出る、出ない」というところで騒動になったことにはうんざりさせられた。

そもそも、いつもなら、単なる“憶測”に過ぎない、「誰が辞退で、誰が不選出なのか」という話題が、堂々と表沙汰になって語られてしまうこと自体が今年はおかしかったし、一ヶ月引っ張った挙句、「そこまでネタにするなら当日サプライズで出てくるのか?」という意地悪な期待をあっさり裏切る、事務所側の空気読まないリアクションにもガッカリさせられたわけで・・・。

個人的には「SMAP×SMAP」という番組は、学生時代は前のドラマとのセットで、社会人になってからは憂鬱な月曜日を乗り切った開放感で*11、見ていることが多かったし、20年も続いているとなると、個々のメンバーに対する好き嫌いを離れて、「番組がなくなる」という事実に何となく寂しさを感じたこともあったのだけど、年末のゴタゴタで、何が何でも最終回を、という気分がすっかり失せてしまったのは言うまでもあるまい。

おそらく、今年の間は美談と惜別の声があちこちにあふれるのだろうけど、そういうのがすっかり冷めてしまった後に、この先誰がどうテレビの中で生き残っていくのか、というシビアな現実が待っている。そして、一年後、二年後、さらにその先、1月の屈辱会見や8月の内幕暴露報道の際には思いつきもしなかったような展開になっていたら、その時初めて、「(人生の面白さを教えてくれて)ありがとう」という言葉を、心の中で彼らに捧げることになるんじゃないか、と思っている。

*1:あくまで、自分の備忘用のメモ、でもあるので、バックデイトについてはご容赦を。

*2:http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000147158.pdf

*3:日経紙の記事等にもあるとおり、今回、インパクトがありそうなものは「企業名公表制度の要件を月80時間超の長時間労働がある場合に拡大」という“時間数”のネタくらいしかなく、より重要なメンタルヘルス対策については、実効性に疑いを持たせるような中身になってしまっている。

*4:逆にその程度の「副業」に対して、就業規則を根拠に懲戒処分を課すようなことをすれば、それこそ裁判所で取り消されるのがオチである。

*5:それでも、他のテレビメディア等の分析に比べるとよほどマシなのだが。

*6:金沢、桐蔭横浜、青山学院については、プログラム評価で若干の加算が付いた結果「ゼロ」は脱出した。ただ、この3校は昨年60%台の支給率だったため、苦しいことに変わりはないだろうし、明治は60%→0%で、最後まで序列が変わらなかった。

*7:http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houka/__icsFiles/afieldfile/2016/12/26/1380774_01.pdf参照。

*8:日本経済新聞2016年12月25日付朝刊・第9面。

*9:こういう連中に限って、深夜帯に仕事をするような経験を実はしたことがない、ということも多かったりする。自分の経験から言えば、「昼間休めるのであれば」深夜帯の仕事が殊更体にダメージを与える、ということはないと思っているし、そこで働く人かどうかにかかわらず「活動時間帯が日中帯に制限される」ことで、かえって苦しい思いをする人も世の中には多くいることに、もっと目を向けるべきではないかと思わずにはいられない。

*10:ゲスやら清原やで、忘れそうになった頃に、新しいネタが出てきて吹く、という展開になったこともあるが。

*11:月曜日は仕事がたまっておらず、飲み会が入ることも比較的少ない、ということで、他の曜日に比べると早い時間から家に戻っていることが多かったこともある。